第5話 新入部員歓迎会

「今日は新入部員歓迎会をします」

部員が集まると岸本部長はそう言った。

「イエーイ」

部長がそう言って盛り上げようとしたので僕たちも

「い、いえーい」

と言った。

「じゃあまずは自己紹介をします。私の名前は岸本です。よろしく」

「みんなも順番に自己紹介をしていって」

と部長入ったが誰も自己紹介をしようとしなかったので、僕が先に自己紹介をしようと思って

「僕は西本です。よろしくお願いします。」

と言った。

続いて佐藤さん、林田、森崎さんが自己紹介をし、新入部員の子の番になった。

「私の名前は泉です。好きな漫画のジャンルは恋愛ものです。これからよろしくお願いします」

この子の名前は泉なんだと僕は初めて知った。

「じゃあ、新入部員入部を記念してカラオケに行こう!」

と部長が言った。

えらく急だなと僕は思った。

「最近欲しいものを買うためにお金をためてるんですけど」

と僕は言った。僕はお金をためていると言ったが、正しくは好きな漫画を買いすぎて僕にはお金がない。ここでカラオケに行ってしまうとしばらくかなり財政難に苦しみながら生活していかなければならない。

「今回は久しぶりに新入部員が入ったことの記念として私が全額おごります。」

と部長は言った。

良かった.。これで僕だけカラオケに行けないという悲劇は防げそうだ。

「ありがとうございます」

僕たちは部長にお礼を言った。

「私と森崎と林田はここで泉にこの部の活動について教えるから山本と佐藤は先にカラオケに行っといて。カラオケが混んでたらいけないから。」

「わかりました」

と僕は言った。

「この部の活動の説明はあとにして私達も早くカラオケにいきましょうよ。私カラオケ大好きなんです。」

と泉は目を輝かせながら言ったが、

「すぐに済むから先に部の説明をさせて。しかも山本と佐藤の2人で先にカラオケに行ってもらうことが重要なんだから。」

と部長が言ったので泉は不満そうに

「わかりました」

と言った。

僕はなんで僕と佐藤さんの2人でカラオケに行くことが重要なんだろうと思ったが、わざわざ質問することでもないと思ったので、何も言わず部室を出発した。


カラオケにつくと意外と空いていたのでみんなをまとうと思ったが、佐藤さんが

「先に部屋に入っといてもんじゃない?」

と言ったので僕たちは部屋に入った。

「みんなが来る前になにか1曲歌っとこうよ」

と佐藤さんが言った。

「『恋が終わった』はどう?」

「失恋ソングはあんまり好きじゃないかなぁ」

「じゃあ『僕と君は好き同士』どう」

「僕と君は好き同士」は「僕の恋は両思い」のアニメのなかで主人公とヒロインがカラオケで歌うデュエット曲だ。

「うーん。別の曲にしない?」

恥ずかしくてそんな曲歌えないだろと心のなかでそう叫びながら僕はそう言った。

「べつにいいじゃん」

そう言って佐藤さんは曲を始めてしまった。

仕方ないので僕も一緒に歌い始めた。


歌い始めて曲の終盤に差し掛かったとき漫画研究会のみんなが到着した。

すると

「ふーん。だから部長は2人で先にカラオケに行ってもらうことが重要だって言ったんだ。」

と泉が微笑みながら小声で言った。


そして曲が終わった。

「まるでカップルが歌ってるみたいでとても微笑ましかったです。」

と泉がからかったので

「誰がカップルだ」

と僕は反論した。

本当は反論したくなかったけど本当に付き合っていなかったので反論するしかなかった。


「とりあえずなにか頼みましょうよ」

と泉が言った。

「おっきいサイズのポテトでいい?」

と僕が言うと泉が

「ラーメンとチャーハンも頼んでいいですかと」

と言った。

「まだお昼ごはん食べてないの?」

「いいえ。食べました。でも、まだまだ食べたくて。」

「そ、そうなんだ。じゃあそれも頼もうか」

泉ってすごい大食いなんだなと僕は思った。


林田と森崎さんが楽しそうに歌っていると泉が小声で

「林田先輩と森崎先輩って付き合ってるんですか?」

と聞いてきた。

「そうだよ」

と僕が言うと、泉は

「すでに付き合ってるカップルが1組と両片思いの人たちが一組か。これは見守りたくなっちゃうな」

とつぶやいた。

両片思いじゃなくて片思いだと突っ込みたくなったが、そんなことを言ってしまうとみんなに僕が佐藤さんのことを好きなことがバレてしまうのでぐっとこらえた。

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