第4話 クラブ紹介会

今日はクラブ紹介会前日

今日までにできることはすべてやった。もう明日の本番を乗り切るだけだ。

そんなことを考えていると岸本部長が

「じゃあ今日は早めに終わって一緒に神社に行こう」

と言った。

そうだ、あともう一つできることがあった。神頼みだ。

林田が

「もうこの部活は神頼みしなければいけないほどピンチっていうことですね」

というと岸本部長が

「悲しいこと言わないの。さあ早く出て。もう出発するよ。」

と部屋の電気を消しながらみんなを急かした。


校則で寄り道は認められていないので学校から少し離れた神社に向かった。


神社はあまり立派なわけではなくこじんまりとしていて落ち着いた感じだ。

「私は部の繁栄をお祈りするけどみんなは自分の好きなことをお祈りするといいよ」

と言った。

「えーと、手を合わせてお祈りするんだっけ。」

と林田が言った。

すると森崎さんが

「それはお寺だよ。神社は二礼二拍手一礼だって」

と言った。

僕は

「それやったら一番恥ずかしいやつじゃん」

と笑った。


僕たちはお祈りをした。

僕は「佐藤さんに告白できますように」とお祈りした。

お祈りが終わると佐藤さんが

「涼くんは何をお祈りしたの?」

と聞かれた。

しかし、さすがに本当のことを言う訳にはいかないので、僕は

「じゃあ佐藤さんは何をお祈りしたの?」

と質問で返した。

すると佐藤さんは

「ないしょ。でも多分涼くんと同じことだよ。」

「多分違うと思うよ」

と僕は言ったがまさか佐藤さんが僕に告白できますようになんてお祈りしているわけがないと僕は思った。


そしてついにクラブ紹介会の日がやってきた。

クラブ紹介会は体育館の舞台の上で各クラブが発表をしていくという形式だ。

演劇部は劇を披露したり、室内楽部が演奏したり各クラブがそれぞれの特徴を活かして自分たちのクラブに新入生を勧誘していた。

「次は漫画研究会の皆さんです。」

と司会者が言ったのが聞こえた。

「がんばるぞー!」

僕たちは円陣を組んで気合を入れて舞台に向かった。

他のクラブは部員の人数が多いので代表者だけが舞台に上がったが、漫画研究会は部員が5人なので全員で舞台に上がった。

「これから漫画研究会の発表を始めます」

と岸本部長が言って僕たちの発表が始まった。

「まず漫画研究会の活動内容について説明させていただきます。漫画研究会では部員たちで漫画や絵を書いたり、この学校の文化祭『近学祭』で自分たちで書いたオリジナルの作品の販売などをしています。」

ここで話す人が林田に変わる。

「漫画研究会は違う学年の人でも親しく話すことができてとてもアットホームな雰囲気です。」

次は僕の番だ。

「また、漫画研究会は自分の好きな漫画を気軽に部員のみんなにおすすめできる『好きを爆発させることができる空間』になっています。」

ここからは佐藤さんが発表する番だ。

「今日は皆さんに漫画研究会について知ってもらえるように各部員が描いた絵をお見せしたいと思います。」

佐藤さんはプロジェクターで僕たちが描いた絵を見せていった。

僕は漫画研究会の中で一番絵が下手なので少し恥ずかしい。

「漫画研究会ではさっきお見せしたような絵を描いたりしています。絵が下手でも漫画研究会に入りたいという人ももちろん大歓迎です。もし絵に自信がなかったら、私達がうまく描かけるようになるように全力でサポートします。」

最後は森崎さんが発表する。

「少しでも漫画に興味があれば漫画研究会は皆さんを歓迎します。ぜひ漫画研究会に入ってください。」

「これで漫画研究会の発表を終わります。ありがとうございました。」

発表が終わり僕たちは舞台を降りた。

岸本部長が

「発表緊張したね。緊張で手が震えてマイクを落とすかと思ったよ」

と言った。

「あとは誰か入部希望の人が来てくれたらいいですけど…」

と僕が言うと岸本部長は

「不安になるようなことを言わないでよ」

と笑った。


そうこうしているうちに部室についた。

この学校では入部希望の人が直接部室に来るというシステムになっている。

部室の中で僕たちは椅子に座って入部希望の人が来るのを待っている。

誰も何も話さず部屋の中がシーンとしている。

すると突然部室の扉が開いた。

その瞬間全員扉の方を向いた。

そこには中学1年生と思われる人が立っていた。と思うとすぐに扉が閉じてしまった。

僕たちはすぐに扉の外を確認しに行った。

するとそこには入部希望と思われる人がいた。

部長がその人に

「入部希望の子?」

と聞くとその人は

「はい。漫画研究会に入りたいです。」

と答えた。

「やった!!」

僕たちは歓声を上げた。

「さっきは突然扉を閉めてしまってすみません。扉を開けるとみなさんの獲物を狙うような視線を感じて…」

「全然君が謝るようなことじゃないよ。こっちこそそんな視線を向けてしまってごめんね」

と僕はその子に謝った。

「じゃあとりあえず今日から仮入部してみる?」

と岸本部長が聞くと

「いえ。私は小学校を卒業する前から中学に入ったら漫画研究会に入りたいと思っていたので、もう正式に入部したいです。」

とその子は言った。

「じゃあこの入部届に名前を書いて」

と部長は入部届を渡した。

するとすぐに入部届を書き終えてその子は

「書けました」

と部長に入部届を渡した。

「久しぶりに部員が入ってよかった。佐藤さんも願い事がかなって良かったね。」

と僕は佐藤さんに言った。

「本当に部員が入ってよかった。このままだと廃部にまっしぐらだったからね。でも私の願いはまだかなってないけど」

「(だって私の願いは涼くんにしか叶えられないからね)」

最後に佐藤さんがなにかぼそっと言ったけど僕には聞こえなかった。

「最後なんて言ったの?」

「ないしょだよ」

「教えてよ!」

「教えないよ〜」

僕は帰りながら何度も佐藤さんになんて言ったか聞いたが教えてくれなかった。

僕はその夜佐藤さんが何を言っていたのか気になってなかなか寝付けなかった。

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