私は夏が嫌い

チン・コロッテ@少しの間潜ります

第1話


 私は夏が嫌いで、冬が好き。


 私は昼が嫌いで、夜が好き。


 私は晴れが嫌いで、雨が好き。



 でも、そんなことを言ったら嫌われる。


 だから私はいつも、夏を好きだといい、夜を怖がり、晴れた日に良い天気と言った。

 だから、今日も周りに合わせて嘘をついた。



「佐伯、今の嘘だろ!」


 二時間目の昼休み。中学校の教室で、彼は男子グループと談笑していた癖に、突然少し離れた私たち女子グループの会話に笑いながら割り込んできた。私はドキリとして、口をぎゅっと結んだ後ですぐに作り笑いを浮かべて、冗談めかして彼に答えた。



「はぁ?なんなの、急に。そんなわけないでしょ」

「へっ?まじ?」

「てか、こっちに入ってくんなし!お呼びじゃないんですけど」

「そうだー。お呼びじゃないんだよ!健太」


 彼は頭を掻いて、「あれーっ?」という顔をしながら男子グループの会話に戻った。


 それからしばらく私の胸は他人にも聞こえてしまうのではないかと思うほど高鳴った。

 そのあとの友達の話は全く耳に入ってこなくて、ただひたすらこの胸の高鳴りがバレないようにと会話に喰らいつくのに必死だったことを覚えている。




 その感情をどう呼ぶべきか。

 それは、そのときも、今でさえ分からない。なぜなら彼はブサイクで、恋とは思えなかったから。



 だけど、なぜだかその日の事をよく思い出してしまう。


 うだるような暑さの夕暮れ時の住宅街の坂道で、前後にチャイルドシートを取り付けた自転車を、汗だくになりながら必死に漕いでいるとき。私はどうしてかその事を思い出したしまうのだ。



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