第4話 ターゲットとの接触

 二人は台所のゴミ箱にストッキングを捨てる。

 案の定、貴志は二階にある部屋へと退避して行った。

 その様子を、柚葉と明子は確認した。

「予定通りね」

 と柚葉。

「これで、どっちが貴志の好みか白黒つくわね」

 と明子は、勝利を確信していた。

 柚葉も表情こそ余裕を見せているが、内心では緊張で汗だくであった。

 そして、二人は静かにリビングへと落ち着くことにした。丁度、映画があるので音量を大きめにして見ることにしたが、内容など入って来ていない。

 今、二人が気にしているのは、ゴミ箱に捨てたストッキングの行方である。

 二階へ上がった貴志は、一時間経ってもまだ部屋から出て来なかった。

 普通なら、気になってしまい様子を見に行く所だが、今そのタイミングで見に行けば計画が台無しになってしまう。

 二人は同時に時計へ視線を向ける。

 未だに動きがないことに、二人は次第に焦りを感じ始める。

 すると、階段から貴志が降りて来る音を聞いた。

((来た!))

 二人は互いに目配せをする。

 無言で意思疎通をすると、それぞれがスマホの画面を見るフリをしてインカメラにし、鏡代わりにして自分たちの背後を確認する。

 リビングの向かい側は台所だ。

 この位置からだと台所までが視界に入る。

 冷蔵庫を開ける音がする。貴志は飲み物を取りに来たようだった。

((早くゴミ箱を見て!))

 二人は内心祈る。

 それが通じたのか、貴志はゴミ箱に近づく。

 そして、ゴミ箱の蓋を開けた。

 音がした。

 角度的に位置が悪すぎて何をしたのか分からないが、ゴミ箱の中に手を入れたようだった。

 二人は、同時に歓喜した。

((ターゲットとの接触を確認!))

 二人の思いはひとつになる。

 貴志は、それから二階へと上がって行った。

 すると、二人は先を争うように台所へと移動する。

「ちょっと、お母さん。邪魔しないでよ)

「あら。柚葉こそ邪魔よ」

 二人は、互いを押し退けながらゴミ箱に近づくと蓋を開けた。

 そして中身を見ると、二人同時に絶叫した。

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