作戦会議は内緒にね
「デゴ、この件はまだ『リラサガ・ヘッドライン』に掲載禁止な!」
また何かイベントキーを踏んじゃったらしいことと、その内容を【美食倶楽部】メンバーにメッセージを入れた。すると、全員が全員、そちらの記者でも有るD51さんに釘を差した。……その心は?
「システィーナ様と、あのイケメン辺境伯様の縁談だろ? 結ばれるにしろ、壊れるにしろ楽しそうじゃん。こんなの誰かの攻略情報を読みながら、ネタバレを追うよりも、リアルタイムで楽しまなきゃだろ?」
わかる~。
特に女子は大好物。この所、年明けの忙しさで、集まりが悪かったけど、今日のミーティングには全員しっかり揃った。
どっちにしろ、あの辺境伯様の情報収集をするつもりでいたもん。それにこんな面白い状況が加わるなら、乗るっきゃ無いでしょ。
でも、私……何のキーを踏んじゃったんだろう?
「たぶん……システィーナ様にロブスラーくんのお肉を献上、じゃないかしら? カルディア男爵領のイベントをこなさないとできないことだし」
「さすがしーちゃん、鋭い。……そもそも、システィーナ様を餌付けしてるのって、ミナさんくらいだからなぁ」
うそっ? あんなに解りやすく、食い意地が張ってる娘なのに……。
ネタバレを追いかけてると、最初っから姫様と見ちゃうものね。キャンディで機嫌を取ったりしないか。
一般的な評価としては、『稚き中立派の庇護者』だもんね。『修道院育ちで、甘味や美味に貪欲な娘』と見るのは、私くらいかも知れない。
うん、そこに思い至らないのでは、このキーイベントは簡単に見つからないね。
「やっぱり、お見合いとかするんですか?」
JCたちがキャイキャイと、はしゃいでる。
ご期待に添えるかどうかは解らないけど、似たようなことはするよ?
趣味と実益を兼ねて、システィーナ様の後見人的立場にいるレスター子爵に相談してきたんだ。あの上品な叔父様、大好き。
「第三者の立場で、レスター子爵が舞踏会を開催して、そこにシスティーナ様と、シェフィールド辺境伯を招くことになったの」
キャーッという黄色い歓声が凄い。定番シチュだもんね。
年齢差はあっても、美男、美少女。踊る姿は絶対に絵になる。
でも、それだけじゃないんだよ?
「舞踏会日程より前に辺境伯にいらしていただいて、カードなどを楽しみつつ、会話を楽しむ機会を作ろうって計略も有るの」
「でも、あのイケメンは忙しそうだし……来るのかなあ?」
「そのあたりは……ヒナちゃんに頑張ってもらう」
「エッ、私ですかー?」
実は、ヒナちゃんの領地で見つかった特産品は、パステルパンダである。
ジャイアントパンダの黒い部分が、部分別のパステルカラーの可愛いやつ。左右の目の周りの色が違ったりと、面積含めて、同色個体がいないという噂。
いつものパターンで、システィーナ様に献上され、正月に主催した晩餐会の目玉として帝国内に初公開された。その愛らしさと、システィーナ様の蕩け方もあって、今や帝国の貴婦人やご令嬢はパステルパンダの虜です。
特産品の常として、他領では一年しか生きられないという設定もあり、本家ジャイアントパンダよろしく、完全レンタル制。しかも、余裕を見て十ヶ月後に、別の個体を再レンタルの必要があるという、完全保護体制だ。
今のところ、皇帝陛下と、システィーナ様、それと【美食倶楽部】メンバーのみが契約をしており、ヒナちゃんとの面識を求めて、各貴族が奔走しているそうな。
可愛いだけでなく、これを動物園を作って展示しておくと、領民の幸福度がダダ上がりするという実利も有る。税率を八割にしても暴動が起きないレベルで、幸福になる!
ちなみに、説明書きに【食用には向かない】の一語が有るのは、絶対にカヌレちゃんへの対策だと思う。怪獣まで、食用と見た彼女は「絶対に食べちゃ嫌ですよ!」と念を押されまくった上に、最後の提供となった。
仲間内きっての、牧場惑星なのに……。生き物の飼育のプロなのに……。
流行の先端にいてこその貴族だけに、イケメンさんもパステルパンダは欲しかろう。
何とかヒナ女男爵との縁を結ぼうとしているとの情報を、持ちかけられた当のレスター子爵から得ているのです。
今一番、持っていると相手にマウントを取れる流行アイテムだからね、パステルパンダ。
急進の、誰が後ろ盾になっているか解らないシェフィールド辺境伯には、特に必要なアイテムだろう。
ふと思い出したように、エグザムさんが首を傾げる。
「……ところで、ミナさんはカードゲームの心得は有るの?」
「七並べは得意だよ?」
「この場合は、七並べは遊ばないと思うんだが……」
……だよね。普通の七並べどころか、将棋の羽生九段とかの遊んでる『斜め七並べ』すら網羅してる私だけど、ポーカーとかババ抜きは、顔に出るから苦手。
ブリッジとか、ポーカーの系列は苦手だよ?
海外のカジノでも、ビンゴみたいな『キノ』とか、スロットマシーン専門で遊んでた。
チップを賭けたりするのは、向かないんだよ。
それに、こういう場でカードゲームは、男子の役割じゃないの?
「よし、頑張れ……エト」
圧倒的押しつけで、エトピリカさん決定。
あとはやりたがった、モモちゃんが参加することになった。
イケメンさんが誰をエスコートしてくるのかも気になるし、そこから見えてくるものも有るでしょう。……家族なら家族でいろいろ、ね。
「……ところで、その後のイケメンさん情報は何かあった?」
「いろいろ調べて見たのよ~。面白いのは、辺境伯の領地は、結構飛び地が多いの~」
「飛び地?」
「まとまって領地になってるだけでなく、離れた場所の一部が領地になってるのを飛び地っていうの~」
「要所要所を飛び地で抑えてる……とか、か?」
「正解~。誰が決めたんだろうね~?」
「ワールドデザイナーさん! ……っていう意味じゃないよね?」
「当たり前っしょ。この世界で、誰かの意思が働いていそうって事か」
誰の意思でしょうね?
そのあたり、触っちゃって良いのか、悪いものか……。
皇子たちの後援者が侯爵様であることを考えると、二の足を踏みたくなっちゃう。
「でも、逃がしてはくれないんですよねっ。システィーナ様にプロポーズしたり、向こうから絡んできますっ」
「ストーリーの格好のネタだからなぁ、ふたりとも」
「ストーリーはプレーヤーを悩ませるために有るものだしな。しゃーない、乗り切ろう」
「いきなり踏み潰されたりしませんよね?」
「大丈夫よ、ルカちゃん。それがストーリーである以上、潰されてもなんとかする手はあるはずだから」
「慰めになってませんよ……しーちゃん」
手探りでのストーリーは初体験のJCズは、ちょっと怖気がち。
まあ、楽しもうよ。どうせ今回はあのイケメンさんのプロローグ。後ろ盾が見えるかどうかは微妙なところじゃない? と、気楽に考えよう。
なんとか、なるなる。
あ、他所のクラブには「今、イケメンさんの情報を集めてるの!」って、答えておいて、ストーリーを進めているのは、内緒だよ?
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