第3話 コーヒー

コーヒーなんて美味くない。

そういう人生だ。しかし、それでもいいもんだ。命ってのは。ありがたいもんだ。

「【燕】。変な意味で捉えるなよ。誕生日おめでとさん。。オメーの好きなハンバーガー買ってきたんだけど食うか?照り焼きハンバーグにスモークチーズの挟んである洒落たトマト付きのだ。オレンジコーラもついてるぜ。」


事務所の裏側で子猫と戯れていた黒マスクをした青年に声かける。

こいつを見るたびにに不運と幸運を同時に肝臓に効く。心臓ならもう毛がついた厚顔だ、俺みたいな人間は、、、。こいつはそうなることないと思っていたんだけど。。

俺を一体なぜ見習うのか。俺なんて助けた命より殺した命の数の方が多い。


青年は「さんきゅ。っていうかここにくるってわかっていたってことは、、、誕生日忘れてくれてなかったんだ?」と重くも軽くもない口調でつぶやくように息を吐いた。


俺の買ってきたハンバーガーを黙々と食う姿はとても人を殺したことあるとは思えない、静かな青年だ。口数がハンバーガーのおかげでますます少なくなっていく。こういう時ならおとなしいのにな。女ってのはこういうのに、、、『ギャップ』に弱いのかね。


【燕】の誕生日。

【犯罪史】にとって一番最悪の日だ。

全国の防犯システムが作動しない日。

たった1日が大惨事になる。

人の心は弱い。

コイツが生きていけるのは、、、犯罪史の中か、社会的システムの中か。いまだに両方ともどっちつかずの、、、まるで捨てられた子犬だ。

普段はいつも憎まれ口叩くチカラがあるのに。今日は死人のようだ。不憫だった。いっそ殺せてしまえれば楽だろうに。俺はーー



いつか、コイツと笑ってコーヒーを美味しいと思って飲める日が来るまでここでの仕事は諦めない。

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