第27話 新しい疑問と戸惑い
「よし、揃ったな。小林、城戸は?」
「東セキュリティから回収したデータの調査をしています」
「そうか。小林も席を外してくれていい」
「了解しました」
さっきの近接格闘での動きは一体なんだったんだろう……今の小林さんはふらふら。
私達も極めていけば、反射神経に叩き込めることができるのかな。
小林さんが部屋から出たのを確認したあと、永嶋司令は話を続ける。
「学園での任務に続き、東セキュリティ本社での任務でもよくやってくれた。我々のような経験者じゃない君達が短期間でできるなんて、正直、予想以上で驚いた。君達の覚悟を、舐めていた。すまない、そしてありがとう」
帽子を脱ぎ、硬い表情でぎこちない感じに笑う。
改めて鋭い目つきだ。
ナハトとシャッテンが私を、何あれ、といった感じに見る。
ちょっと、ううん、だいぶ困るよ……どう反応すれば正解か、分からない。
永嶋司令は、ごほん、と咳払い。
「東セキュリティ本社で入手したデータに、APRの販売履歴があった。ここから辿り、次の任務は都内スタジアムの制圧を行う」
都内のスタジアム、センター街スポーツ公園近くにある競技場だ。
「え」
隣から漏れた吐息。
左側にいるナハトは口を半開きに、どこか落ち着かない様子。
「ナハト……大丈夫か?」
「あ、いえ、大丈夫です! ちょっと知ってる場所だったんで、驚いちゃって、えーと、大丈夫です」
大丈夫、には見えない、途切れながらはにかんだ横顔。
「そうか。任務内容に戻る。引き続きコア回収もブリッツに任せる。スタジアム内にAPRが3台、それから、遺体をロボットが運んでいる、という情報が入った」
遺体を運ぶ、ロボット? なんだか、悪寒がするSF話。
「東セキュリティ本社にAPRはいたが、地下以外に遺体はなかった。所々血痕だらけだというのに、おかしなものだ。他の地区からも遺体が消えたという報告が上がった。APRが遺体をスタジアムに運ぶのか? 何のために? 君達にはAPR殲滅と真相を確認してほしい。報告が本当なら、調査隊を出動させる」
ミーティングが終わった。
鼻に指先を添えるナハトの横顔は変わらず、苦く見える。
「ナハト、医務室に来い」
永嶋司令は去り際に、手招いた。
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