第3部 都内スタジアム制圧任務

第26話 今日もトレーニング

 汗が滴り落ちる。

 腕立て伏せ、腹筋、スクワット、ランニング……それから近接格闘の訓練。

 どんな緊張状態でも、冷静な判断力と体の反射神経を駆使して相手を抑えつける。

 もう頭に酸素がいかない状態なのに……いきなり小林さんがナイフで切りかかってきた。


「あっ」


 顎すれすれ……。


「あれ、ブリッツさん、あと5ミリ動いたら切れますよ。すぐに手首を捻って、相手の急所を叩いて、奪わないといけません」


 ナイフを自在に操り、指先でくるくる回してグリップが手元に収まる。

 いつもふらついた様子の小林さんは、近接格闘術となると訳が違う。

 膝に手をついて、呼吸を整えた。

 振り返ると、バテた顔したナハトとシャッテンもいる。


「APRと戦うのはもちろん命がけです。ですが、ロボットだけが相手じゃありません、緊迫した状況でも常に冷静を保ち、動きを体に叩き込みましょう」


 薄っすらと隈がある目元で優しく微笑む。


「は、はぃ」

「はい」

「はい……」


 ナハトの結んだ髪が乱れている。

 シャッテンの綺麗な黒髪も跳ねまくる。

 私も、きっとくしゃくしゃだ。

 あと、体中痛い。


「さて、次はミーティングです。10分後、1階ミーティングルームに集まってください」


 小林さんはいつもの、少しふらついた感じでトレーニングルームから出ていった。


「はぁーはぁ、さすがに、やばかった、小林さんってなにもの?」


 元々引き締まっているうえに、更に割れた腹筋が丸見えになるほど捲ったシャツの裾で汗を拭く。


「ふ、ふぅ……ふー、オペレーター兼警備員ではありません? それよりナハト、お腹が丸出しです。シャツで拭くなんてはしたない」


 まぁ、うん、それはそう。

 ナハトは目を丸くして、すぐへの字に口を曲げた。


「どうせ洗濯するんだし問題ないじゃん。タオル使わなくていいし便利じゃない?」

「下品だと言ってるんです!」

「下品ぃ?」

「えぇ下品で、ダサいです」

「だっ」


 なんだかなぁ――。




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