第22話 激突APR(シャッテン)

 高圧的な思考でもプログラムされているのでしょうか、ライフルを構える私をジッと睨んでいます。

 容赦なくこのまま撃ち込んでやりたいのですが、相手が相手です、爆発で木端微塵にされたくありません。


『gagaiiiiiiiiigigigigiigigi!!』


 不快な音を鳴らして、左腕、の二又に分かれたテーザーガンを振り上げる動作。

 最大限の危険予知能力が、直感的に働き、体は横へ飛び回避行動をとる。

 営業部署の壁をさらに破壊。

 回避行動をしたはずが、爆風に似た勢いで体が飛ばされてしまいます。

 全身を通路の壁に打ち付けられて、地上が逆になっています。

 なのに、こんな時でもどうしてか私は、ライフルを離さないなんて……ギターと同じで体の一部なのでしょう。たかが痛み、そんなもの、ありません!

 4本の脚が床を這い、距離が縮む。

 5万ボルトの電圧ではなく、狭い室内ならばと物理的に潰そうとするなんて、本当に警備ロボットなのか疑わしいもの。

 突く動作をして、テーザーガンごと真っ直ぐ向かってきます。

 体勢を戻しながらスライディングの如く回避。我ながら、完璧に思えました。

 壁に激突させた左腕。

 幾度と点滅した閃光の火花を散らし、壁に亀裂が走る。

 破片が横切り、頬が濡れて、涼しくなった気がします。

 グローブ越しに拭えば鮮血……次第に痺れる感覚が体を襲う。

 いいえ、痛くも痒くも、痺れもありません!

 

「おらっ! こっちだ、お嬢ちゃん!!」


 フック式のロープがAPRの単眼レンズに巻き付く。

 この底辺の声、調査隊で横柄な城戸さん。

 生きていたのですね……てっきり潰されて死んだのかと思いました。

 半分安心しましたが、残り半分は期待外れといったところでしょう。


『ggiigigigigig』


 城戸さんは巻き付けたロープをさらに引っ張り、丸太並みの太い筋肉を駆使して、単眼レンズを締め付けていきます。

 

『ggigigigigigigigigiigiigiiiiiiiigigii』 


 APRは不気味過ぎる不協和音を鳴らしています。

 もし感情があるのでしたら、怒り的な感情だと捉えることも可能でしょう。

 とにかく、今がチャンス。ライフルを構え、脚部に狙いをつけます。

 爆裂音とともに発砲、脚に命中。

 片側2本を沈め、見事に傾倒。


『gigigigigigiiiiiiigii』

「おらぁああああ!!」


 荒げた大声を出した城戸さんの腕力は、容赦なく単眼レンズを縛り潰します。

 重みで床に沈み、さらに身動きが取れなくなったAPR。


「よし……ふぅ、なんとか動きを封じたな」

「これぐらいなんともありません」

「おぉ、口うるせぇが動きは見事じゃねぇか。大口叩くだけじゃないってことは分かった。こりゃ優秀なわけだ」

「……は?」


 正直、褒められているのか分かりませんが、微妙な気持ちです。


「とにかく、シャッテン、お前の腕は相当だ。一時の狙撃手として使うには勿体ない逸材だな。俺はもっと優秀だけどな」


 一言余計なんですよ、もう。


「はぁ、生存者は無事なのですか?」


 周りを見ても、壁やら床やらを破壊されて瓦礫まみれ。

 姿が見当たりません。

 城戸さんは、肩をすくめて、溜息。


「瓦礫の下敷きになってる。悪いが、もう死んでるな」

「そんな……東セキュリティの企みを知っていたかもしれませんのに」

「いいや、こいつは持ってねぇよ。警備ロボの宣伝営業やってるだけの奴だ。もっと貴重な情報はな、地下にある。多分な」

「地下……そこに行くのは分かりましたが、ナハトとブリッツも私同様地下の存在を知りません。ここで待機した方が」

「永嶋が把握している。ほら、来い」


 また、横暴、職権乱用ではありませんか。

 永嶋司令も把握しているのなら、何故最初からA-eyeのマップ情報に入れないのでしょう……――。

 


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