第2部 東セキュリティ本社突入任務
第13話 新たな訓練
本日は曇り。
湾岸エリア、ガードテクノロジー本社の屋上から見た都内は相変わらず残骸都市だ。
救急車みたいに改造した軽トラックがサイレンを鳴らして走り回る。
今もあちこちで黒煙が舞い上がっている。
「もうなんかニオイ慣れちゃったな」
「私も」
「そうですね、慣れたくありませんが仕方ありません」
私が真ん中。
私の左にはナハト、髪を片側に結んだヘアスタイルと、私たちより背が高くて手足も長い運動神経抜群の子。
私の右にはシャッテン、綺麗な黒いロングヘアと凛とした佇まい、だけど誰よりも努力家で負けず嫌い、ギターと歌がとっても上手な子。
「ちゃーんと助かったんだよね?」
「多分……」
保健室のベッドで苦しんでいた人も、助けてもらったかな。
「分からない以上信じましょう。私たちの任務はAPRをひとつ残らず潰す、です」
「そうだけどさぁ、やっぱ気になるじゃん、生存者と直接会えなかったから無事だったかどうかだけでも知りたいし」
「うん、気になるけど、できること、しよう。私たちは殲滅チームなんだ」
2人とも正しいんだ、きっと。
「えぇブリッツもそっちの味方ぁ?」
「ううん、私も知りたい。でも、永嶋司令から連絡がない以上信じるしかない。気持ちはナハトと一緒だよ、信じて、ほしいかも」
「うーん、そう言われてもなぁ」
柵に肘をついて頬杖つくナハトは悪戯っぽい表情を浮かべる。
「ブリッツを悩ませないでください。もうすぐ休息が終わります、行きますよ」
「ごめんごめん。次なんだっけ?」
「えーと、確か体力トレーニング」
取り留めのない話をして地下トレーニングルームに向かう。
先頭を切るナハトと、後ろを静かに歩くシャッテンに挟まれる。
「だいぶ頑丈になってきたんじゃない?」
袖を捲って力こぶ。
ナハトの自信に溢れた横顔が眩しくて、自分の貧相な腕を見た。
「元々アナタは筋肉があるからわかりません。少なくともブリッツは体力がついてきたと思います」
「そう、かな」
「やっぱさ、競うって大事なんだ……はぁ」
「ナハト?」
ため息をついたナハトは背中を縮めてしまう。
「気にしなくていいですよブリッツ、すぐに戻ります。なにせ今から体力トレーニングですから」
「う、うん」
地下のトレーニングルームに入ると、永嶋司令が待っていた。
調査隊の城戸さんもいる。筋骨隆々で、厳つい顔のおじさん。
「そんじゃあ、報告書はまたゆっくり見てくれ。じゃあな、ガキ共、もっともっと成果を見せてくれよ」
歯を見せてニヤリと笑う城戸さんに、ナハトとシャッテンは黙って睨み返す。
「全く……集合しろ!」
永嶋司令の合図に、駆け足で並んだ。
「APRの調査が進んだようだ。詳細はトレーニング終了後、ミーティングルームで説明する。今は目の前のことに集中するんだ、いいな?」
「了解!」
揃えた返事に、永嶋司令は力強く頷いてくれた。
帽子の奥で光る真っ直ぐ見つめる目力は、日に日に増しているみたい。
「今回は体幹と、格闘も行う」
「格闘ってAPRにですか?」
「ロボット以外にも、東セキュリティ会社の人間が襲い掛かってくるかもしれない、とはいえ無用な殺害は控えたい。貴重な情報も得られるだろう、必ず捕らえてくれ」
格闘……難しそう、できるかどうか不安だけど、進むしかない。
「暴走起こした要因なら徹底的に潰すだけです。どんな訓練でもやってみませます」
「いい心がけだ。ガードテクノロジーが取り入れているのは白兵戦が主だ。相手が襲ってきた時、手元にペンがあるならペンで刺せ、ナイフを向けられたらナイフを奪え、ルール無用の護身術といったところか」
「ルール無用かぁ」
ナハトはなんだか難しそうに唸ってる。
とにかく、やらなきゃね……――。
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