1-5

おもてなしの準備が終わり、席に着いて少しすると両陛下が来られた。


「この度はわたくしの要望に答えて下さり感謝致します。どうぞごゆるりとなさって下さいませ」

「ああ」

「ええ」


お二人が席に着かれたのを見て話し始める。


「それで、話というのは?」

「わたくし、やってみたいことがございまして。その許可を頂きたいのです」

「やってみたいこと?」

「はい。その…わたくしが自由を愛しているのはご存知でしょう?失礼ながら後宮にいると自由ではなくなってしまいます」

「ええ、そうね」


もし両陛下に駄目だと言われたときはどうしようか。…頑張って説得するしかない。


「ですので、思いきって商売に挑戦してみたいのです!わたくしは刺繍が得意です。勿論、妃として仕事等がある時はそちらを疎かにするつもりはございません。まずは市井、次に後宮へと広めていきたいのです。ですので、商売をする許可と何度か後宮から出る許可を頂けないでしょうか?」


さて、詳細は話したが許可は得られるだろうか。


「ははは!面白い、いいぞ。我は許可しよう。芳蘭はどう思う?」

「ええ、わたくしも許可致しますわ。ふふっ、麗凛は何かすると思っていたけれど予想通りだったわ。さすが麗凛ね、面白いわ」

「ありがとうございます!」

「ああ。ただ、二つだけ条件がある。一つは麗凛が商売をしているとバレないようにすること。もう一つは後宮から出る時ようの許可証を用意するから、月に一度は我の所に直接更新しに来ることだ」


ちゃんとした許可証を貰えるようだ。それならこそこそと隠れて後宮から出なくても良くなる。


「分かりました。早速明日から動き始めても宜しいでしょうか?」

「ああ。後程許可証を届けさせよう」

「ありがとうございます。毎月、売り上げの三割は両陛下に献上致します」

「いいのか?では受け取ることにしよう。助かる」

「はい」


私の用件は終わったため、両陛下は帰られるのかと思ったが、立ち上がる気配がない。


「ねぇ麗凛?貴女、琉阿惇の皇后になるつもりはあるのかしら!正直に言って良いわよ、今は私的な場ですし何と言っても不敬にはしないわ」

「でしたら、正直に言いますと……皇后になるつもりは全くないです」


そう真顔で言うと、


「あははっ!やっぱり麗凛って面白いわ!でも、親の贔屓目もあるかもしれないけれど、琉阿惇は非の打ち所がないと思うわよ?」

「そうですねぇ。わたくしもそう思いますけれど…わたくし、恋ってしたことがないのですよね。それに、素敵な方だとは思いますが皇后になんてなったらますます自由がなくなってしまいますわ」


(私は自由第一!皇后になりたいだなんて、絶対に思わないわ)


「ですから、皇太子殿下に恋でもしない限り皇后の座は狙いません。ただ、残念ながらわたくしは殿下以上に素敵な男性を見たことがありませんので、恋してしまう可能性はありますねぇ」

「そうなのね!ええ、良いと思うわよ。建国からの法に則って妃になったのだし、嫌なら好きに過ごしなさいな。後宮を管理する皇后であるわたくしが許可するわよ?」

「ありがとうございます!皇后陛下にそう言って頂けるのなら安心ですね」

「それは良かったわ」

「芳蘭が気になっていたことも聞けたようだ。そろそろ宮殿に戻ろう」

「ええ」


立ち上がって礼をする。終始楽しそうにニコニコしていたから良かった。私は何故か両陛下にまで目をかけて頂いている。お二人とも素敵な方であるため、とても嬉しいが。


皇帝と皇后が麗凛を目にかけているのは、それぞれ麗凛の人柄が好きだからで、琉阿惇が麗凛を愛しているからというのもある。


麗凛の朗らかで優しい性格は、後宮にいる者にとって癒しだ。女の園なだけあって強かで腹黒い者も多くいる。

そう見えない、そう見せない、実際に普段は違う、と言うだけであって麗凛もそのような所はあるが。


珍しいことに、上級妃全員麗凛を慕っていて、多少違いはあれど皆他の妃達の癒しである。

癒し系の顔立ちや性格と言うわけではなく、麗凛と関わる内に自分達まで変わってしまった雰囲気が癒しになっている。

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後宮一の妃は自由を愛す 山咲莉亜 @Ria-Yamasaki

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