第1話 【ここはどこ?私は誰?】

「さて、ではまず王宮の案内からと行こうか。」


スノーテは自ら王宮を案内してくれるらしい。

ここにいる(元)地球人は30名。

30人を引き連れてスノーテは広い城内を案内していく。


「ここは中央食堂。ここで働く者や、あなた達が食事をする場所だ。」


「ここは兵舎棟。我が国を護る兵士達が訓練や寝泊まりをする場所だ。あなた達の中で兵士に志願する者達は、ここで訓練や強さの確認をすることになるだろう。」


「ここは研究棟。我が国の基盤となる場所だ。国の中でも優秀な者達が集まっている。研究者や技術者に志願する者はここで働くことになるだろう。」


「ここは生産棟。研究棟で開発されたものを実際に生産する場所で、影で我が国に大きな貢献をしてくれている。生産系の職に志願する者達はここで働くことになるだろう。」


「ここは・・・」


そうして王宮の案内をされていった。建物が何棟もあるその内部は案内されるだけで、召喚されたときには朝だったはずだったのに夕方になってしまうほどだった。

娯楽施設や温泉、入れなかったが宝物庫なんてものもあった。


最後に案内されたのはずらりと部屋が並んだ場所だった。


「ここが宿舎だ。あなた達が寝泊まりする場所だ。」

「これより部屋割りを行う。二人一部屋だ。」

「それぞれこの紙に名前を書いてくれ。魔法でランダムに部屋に張り付ける。」

「男性は向かって右側、女性は左側だ。」


それぞれ皆名前を書いた。

この部屋割りはこれからの生活に重要なものとなるだろう。

まだ何も分からない世界で『情報』は一番大切だ。

『情報』が大切ということは、それを共有する『友人』が大切であるということだ。

さあ運命の部屋決めは・・・!



(部屋に入ってみたが、まだ誰もいないな・・・)


部屋にはベッドが二つ、机と椅子が一つずつ。それぞれの横に棚があって、左右対称となっている。


(まあ来るまで待っておくか。)


そんなことを思って外を眺めると、丁度ドアがある方から音がした。

咄嗟にそちらの方を振り向くと北川君が居た。


「お、クレ君か。今日からよろしく。」


よっしゃあ!当たりだ!SSランクだ!

こんな時に北川君ほど頼れる人は居ない!


「北川君よろしく!いやー北川君が同部屋なんて頼もしいよ!」

「そういえば北川君はどこに志願するの?」


「志願・・・ああ、仕事のことか。」

「知っての通り僕はスポーツとかはできないからね。研究棟で研究者に志願するつもりさ。」


「まあそりゃそうか」


「それに僕の選んだスキルは『名案』は多分研究とか発明とかに役に立つと思うんだ。」

「クレ君はどうするんだい?」


「俺は・・・兵士に志願しようと思う。」


「大丈夫かい?兵士なんて危なそうじゃないか?」


「俺の選んだスキルは『健康』兵士にとって健康は大事だろ?」

「あ、俺はこのスキルはハズレじゃないって信じてるぜ。確かに名前は弱そうだけど。」


「いや、良いスキルだと思うよ。健康っていうのは大事だからね。」

「どんな強い兵士でも、いざっていう時に体調不良で動けなかったら意味ないからね。」


やはり北川君は良い奴だ。優しいし、頭も良い。容姿もなかなか。

これは惚れるね。いや、俺はその気はないけどね?


そうして北川君と少し話をしてから寝た。




「今日から、あなた達には適正審査を受けてもらう。」

「昨日案内した仕事場の中から自分のスキルに合うと思う職を選んで向かってくれ。」


「適正審査って言うのは何ですか?」


北川君はすぐ質問する。

知的好奇心の塊みたいな奴だ。

すぐに説明があることは分かっているとは思うのだが。


「うん。その職業ごとに違うけど、まったくスキルに関連していない職は厳しいだろう。」

「もしスキルの効果が自分でも理解していない状態で、仮に兵士にでもなったら大惨事になってしまうだろう。」

「あなた達は我らの希望・・・いわば救世主なんだ。そんなことで失うわけにはいかない。」


「救世主?なかなか良い響きしてるな!俺はそういうの結構燃えるぜ?」


千橋は救世主という言葉に反応してはしゃいでいる。

きっと俺と同じ兵士に志願するであろう奴だからな。強そうな味方は心強いところだ。


「ではそれぞれ向かってくれ。分からないことがあったら私に聞いてくれ。」


何人か分からないところがあったらしくスノーテに質問しているが、俺は特に分からないことはない。兵士に志願してスキルで弱く見られるけど実は強い!っていう展開があると信じているからな。

さあて、俺は兵舎棟に向かうとするか。



兵舎棟に向かう際に周りを見ると、同じ方向へ進んでいる人は俺含めて4人居た。

まず千橋。まあ妥当だな。俺もそう予想してたし。

そして伊地イジ 嶺亜レイア。彼は千橋とは真逆のタイプのスポーツ万能系の奴だ。

千橋が力とフィジカルで戦うタイプなら、伊地はスピードとセンスで戦うスラッとしたタイプだ。

次に家奥イエオク 奈津恵ナツエ。彼女はそれなりに運動はできるとは思うが・・・正直兵士なんてやるガラではない気がする。だからこそ憧れてそういう兵士に向いたスキルを取ったのかな?


とかなんとかやっている内に兵舎棟に着いた。

剣や鎧がぶつかる音が聞こえる。

それにこれは・・・なんだ?爆発音?

この世界でもダイナマイトみたいな兵器が生まれているのか?


「兵士に志願する者はこの4人か?」


目の前に現れたのはいかにも屈強そうな重装備のおっさん。

アーマーおっさん、略してアマオとでも呼んでやろう。


「おそらくそうですね。えっとあなたは?」


嶺亜が先陣を切った。俺があだ名を考えている内に行動するなんて、やるなコイツ。


「私はアンサダ重歩兵第二連隊の副連隊長のリガンだ。」

「そして・・・おーい!」


アマオは後ろにいる一人の青年を呼んだ。

そうするとその青年はこっちに走ってきた。

ローブを着ている・・・ということは魔法使いか?


「はーい、ってえーっと?ああそうか君達が噂の召喚者か。」


いつのまにか噂になっていた。それに召喚者だなんて何の捻りもない名称付けられてるし。

まあ悪い気はしないが。


「俺はアンサダ魔法兵第一連隊の連隊長のソーサーだ。よろしくな。」


何?つまりこの同年代くらいのソーサーってやつの方が階級上なのか?

てか魔法連隊って・・・

そうか、そりゃそうだな。魔法がある世界ならそれを戦争に利用しないわけないだろう。魔法使いの兵士もいるか。

なるほど。話が繋がった。だから爆発音みたいな音がしていたのか。


「これから私たち二人が適正審査を監督する。」


「と、言ってもそうそう落とす気はないけどねー」


てか連隊という概念は同じなのに階級は名乗らないんだな。

階級がはっきり無いのか、それとも名乗ってないだけか。

まあどちらにせよ二人とも偉い人なのだろう。数百から数千くらいの兵士の上に立ってるわけだからな。


そうして俺たちは兵士の適正試験を受けることになったのであった。

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病は帰から ラス @las_

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