第37話
第4章 百鬼昼行燈
(7)
「俺が感じた違和感というのは、こちらが勝ち馬をそのままで守護しようと放った祈りに対して、ヤツはそれを阻止するための邪悪な想念を送って来た……ていう単純なことならば、勝ち馬が落馬したり斜行したりするてのは行き過ぎだと思うんだ。祈りを弱体化させたのなら、勝利予定馬はただ失速するだけという、そんな結果になるはずだ。こちらの攻撃を受けながら、何故か、さらに余計なことまで仕上げてしまっている。つまりヤツは、こちらの攻撃を受け止めてぶち壊すだけではなく、逆に利用してさらには鏡のように反射させて、裏表逆になるように反転させた上で馬と騎手にぶつけているってことなんだ」
「……なるほどね。わたしもあいつの心を読んでみたけど、考えていることは闇に包まれた煙幕に包まれたかのようでつかみどころがなかったのよ。ただ感じたのは、ヒッテラーよりもはるかに邪悪なたくらみが視えたの。なにかまだ見せていない闇がありそうよ」
サエコは漠然とあの小説家のヤバさを感じていた。
「それでまず大事なことはあいつの化けの皮を剥がすことだよ。そのためには、まともにヤツの攻撃を受けちゃダメなんだ。受けると見せて、右から左に受け流すんだよ。名付けて『ムーデイ勝山作戦』だ!」
「ムーデイ勝山作戦?」
「ムーデイ勝山作戦?」
「ムーデイ勝山作戦?」
「ああ~~もういいから、そんなことで、さあ阪神大賞典だ」
「ヨシ、ここはケンタロウの言葉を信じてぶちかましてみようぜ!」
「そうですわね」
「決まった。ムーデイ勝山作戦で勝つよ!!」
「おお~~!!」
「とてつもなく痛いものたちよ。いったい何を騒いでおる。もう尻尾を巻いて走り去った方がいいのじゃないのかね? 昨日の様に」
「うるせ~~くそジジイ。だまって見てろ」
「それでケンタロウは視えたの? 勝ち馬が」
「ああ、ばっちり視えたぞ。その馬は」
「その馬は……」
「ワープスピードだ!!」
「ああ、先月ダイヤモンドステークスで惜しくも2位だった馬よね。これは買いだわ」サエコは買い出しの指令を出した。
「待て、ところで損失額が50万に減額されても、的中率は50%なのか?」ユウジが口を挟む。
「うーーん。それはまだよくわからん」
「じゃあ50%がこれからは40%とか、下手したら30%てこともあり得るのか?」
「イヤたぶん、50%よりかは上向きのハズ」
「揉めても仕方がないわ。時間がないから、はよ買え~~~」サエコは愛用している可愛らしい魔法の杖でユウジの尻を叩いた。
「ほほう。ワープスピードか。うむ悪くはない選択だなあ。だが、そいつはどうだろうかなあ~フフフ」狂骨はふてぶてしい笑みを浮かべた。
「やって見なきゃわからないですわ!」レイも黙ってはいられなかった。
馬券は無事に締め切り間際に買うこに成功した。ワープスピードの単勝200万勝負だ。絶対に負けられない戦いだ。
ファンファーレが鳴り響いた後、ゲート入りはスムーズに進んだ。
さあスタートだ。JRAでも数少ない、3000メートルの長丁場、阪神大賞典G2のスタートだ。
先ずハナを切ったのは小沢ジョッキーの乗る4番ジャンカズマ、13番人気の馬だ。そのまま先頭に立ち、中間地点1500メートルでも先頭に立っていた。
「さあ、ユウジ、お前のエネルギッシュな技を見せ付けてくれ!!」ケンタロウが声を掛けた。
「おおう!任せとき!! ジャンカズマ~~止まれ止まれ止まれ止まれ~~」オーソドックスでありながらも強力な技を見せつけた。
「フフフ。なんだそれは? 子供だましか」
狂骨はユウジに技を繰り出した。
いよいよ、アカケン社と狂骨小説家との仁義なき戦いが始まった。
続く
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