第24話

「異能馬券師ケンタロウ!」 24


第3章 進撃の虚人たち


(4) 


 翌日、レイは10名もの忍びの者に監視されて身動きも取れないでいた。

実家の大札東照金毘羅神宮というのは、ここH道S市という大都市の中にあっても、極めて大規模な神社である。全国的にも有名なパワースポットがあるとのうわさが絶えず、日本全国から多くの参拝者がやってくるのだった。

そんな神社のたった一人の跡取り娘であるレイには、いつの日かこの神社を引き継がなければならないという宿命があった。しかし、レイはその点に関しては無責任であり、極めて奔放な性格だった。自分が後を継がない限りは、誰かに売ってしまうかつぶれてしまうのも致し方ないという考えだったのだ。そのため、名ばかりの神社仏閣専門短大を出た後、さっさと家を出て自活の道を歩んでいた。

いきなり拉致されるのも無理はないのかも知れなかった。

レイの父親、鍵谷礼太郎(=パパりん)はもともとはこんな古臭い神社なんか取り壊してしまえという破滅的な考えの持ち主だった。しかし、祖父の礼造によって洗脳されてしまったのだ。その時にも活躍したのが鍵谷家自警団である忍びの者たちであった。東照コンピ指数伊賀の者たちだ。

レイに対しても、お風呂やトイレにまでもくのいち忍者が付きまとう始末だった。

忍びという字は難しい。心に刃を乗せると書く。忍びの家の者たちには、たとえどんなに嫌悪を覚えようとも、必ず忍という字が付きまとうのだ。

 レイはどうやってこの不当に自由を奪われたこの環境を打破するべきか、考えあぐねていたが、絶対に無理なことだとはこれっぽっちも思っていなかった。

「パパりん。あなたの思い通りにはさせませんわよ、覚悟なさいね……ふふふ」


 明るく健全な未来作りの会事務所では早出をし、昨日の反省と今日の作戦会議が行われていた。

「悔しいのう~あの貧乏神みたいの。あいつのせいで、ちっくしょう~~」ユウジは吐き捨てるように言う。

「もっとボコボコにしとくべきだったかな」ケンタロウも許せなかった。

「まあまあ、押さえて。大丈夫よ、あんなの……どうってことないから」

「レイちゃんは? あれから何も連絡ないの?」

「うーん。今日はまだ無理っぽい」

「それじゃあどうやって戦うの?」

「あの男、ヒッテラーには致命的な弱点があるわ。大丈夫、今日はそれを突ついて逆に、ヤツの力を利用してやるのよ」

「え、そんなうまい方法が?」

「いい、そのためには……」

ヒソヒソと3人は人目をはばかるたくらみを話し合った。

「なるほど~それならばっちりですね~」ケンタロウとユウジは納得の表情をして見せた。

「さあ~て、それじゃあ戦場へと赴くわよ。皆の者、覚悟はOK?」

「オッケイ!!」

 3人は出かける支度をした。だが使える弾薬、つまり現ナマは昨日の敗北のため残り少ない。今日もし、あの東寺男に負けるようなことがあればまたしても長期の肉体労働が待ち受けることになるだろう。

3人にとってはまさしく背水の陣であった。


「レイ様。おトイレの窓から逃げようなどと、子供だましの行動はおやめくださいまし!」

「はッ。しまったわ」

 レイはトイレの窓から顔を出した途端に年バイのくのいち忍者に首根っこを掴まれた。

「おほほほ。レイ様の年少よりの癖はすべてお見通しでございますわ」

「え? その声はなつかしい……ばあやのおミツね。なんでそのような格好でわたしの邪魔をなさるの?」

「あいや……それは……大旦那様、パパりん様のご要望で……」

「ふざけないでよ光代! あなたはわたしのしもべだっのじゃありませんの? そんな小賢しい真似すると、ただじゃ置きませんわよ!!」

「ひひいい。お許しを。レイお嬢様ぁ~~」くのいちの光代はひれ伏した。

「ヨシ。ならばわたしの命令をお聞きなさい。いいわね!!」

「は、ははあ~。では、なんなりとお申し付けを。忍者の棟梁は私めでございますので、いかようにも……」

「そうかそうか。ならば沙汰があるまで待機せよ!」

「ははあ~」忍者たちはレイにひれ伏すのだった。


  続く

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