第16話
「異能馬券師ケンタロウ!」 16
第2章 初めての一歩
(6)
ケンタロウは部屋の中でパソコンをいじり検索をしてみた。今更ながらあの岩のことを調べ始めたのだった。
今までまるで興味などなかった岩というものが、なかなか多くの種類があるということにまず驚いた。岩石なんてどれもこれも同じだ。種類なんてあるものか? そこをまず不思議に感じた。
そしてあの岩は火成岩の一種、アプライトという名前の岩だということが分かった。火成岩というのは簡単に言うと噴火した溶岩が流れ出て固まったものだ。地中で固まった堆積岩と違って、割合い脆い岩石らしい。そして表面には細かな亀裂が走っていることがある。確かにあの岩にはよく見ると亀裂がいくつか走っていて、どこかにするどい刃物でも突き立てれば、案外と脆いのかも知れない。だが素手と怨念のこもった外れ馬券とで、いったい何ができるというのだ……途方に暮れるしかなかった。
この課題に全く歯が立たないとしたら、いったいいつまで修行を続けるつもりなのだろう。達成出来ずに終えるなら、果たして修行全体の意味もなくすのではないか?
何のためにここまで頑張って来たのか、その意味が脆くも崩れ去る気がした。かといっていつまでも続けられるほど、会社の資金も続かないだろう……。
ケンタロウは考え抜いた。考えれば考えるほどドツボにはまる気がした。パソコンをいじっているうちに明日の天気の画面が目に入った。
ふと、閃いた。
(これなら……もしかしたら……)
そのあと、レース映像を観て寝ることにした。
予知能力は1分50秒にまで進化していた。正解率は65%だった。
その日は修行を初めてすでに40日が経過していた。
「社長~~いったいいつまで続けるんですか~」ユウジはとっくにしびれを切らしていた。
「うるさい! あの岩を割るまでだよ!」
「もう面倒だから、どっかで重機でも借りてきてズバッとやっちゃいましょうよ」
「それじゃあ修行になりませんわよ。でも……それもありかも」レイも弱気になっていた。
「あのう、ちょっと試したいことがあるんで。それで駄目なら」ケンタロウが意見すると、睨みつけるようにサエコが言った。
「それで駄目なら、覚悟しなさいよ!!」
「あ、えっと。わかりました」
岩はそびえたつように4人の前で鎮座していた。
「しかし、どう考えてもこんなモンを割るなんて。人間の領域じゃないのでは?」あくまで弱気なユウジだ。しかし、領域転回的なことは無理だ。
ケンタロウは岩の表面を舐めるように細かく見つめた。
「ケンタロウさん、何か秘策を練っていらっしゃるのね。すごいわ」無邪気なレイだった。
「ユウジ、外れ馬券を」
ユウジは50枚ほどの外れ馬券をケンタロウに渡した。それを岩の細かな亀裂に差し込んでいった。
「それは前にも試したことがあったんじゃないか?」サエコがいぶかしげに見つめた。
「うん。やった。でも3~4枚で諦めただろう。無意味だって。でもよーく見てみると、まだまだ差し込む領域はあるんだ。ほら、もうこんなに」
ばらばらに7枚ほどが亀裂に差し込まれた。
「え? なんだって」
そこからみんなが岩に取り付かれたかのように執念を見せた。必至に取り掛かると、50枚ほどの馬券が全てが亀裂に差し込まれた。
「へえ~意外に探せば亀裂があるものだな」ユウジは3か所くらいしか差し込んでいないくせに偉そうに言った。
「だけど、こっからどうするのか……が大事じゃないの?」サエコがケンタロウに言った。
「そうなんです。ここからが我々の真の力が試されるところです」
「もしかして、お祈りの出番かしら?」レイがワクワクしながら笑みを浮かべた。
「そうです。その通り。みんな、雨が降るように最大限の祈りを捧げましょう!!」
4人の真剣な祈りは天に届いたようだ。
やがてパラパラと冬のH道には季節外れの雨が降り出した。天気予報通りに……
続く
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