第14話
「異能馬券師ケンタロウ!」 14
第2章 初めての一歩
(4)
どでかい岩の前で4人は協議を始めた……というより不貞腐れていた。
「とんでもない難題をふっかけてきたな~あの婆さん」
「うーん。普通に無理だよ。もう帰ろうよ」
「押しても引いてもびくともしませんわよ」
「あ、レイちゃん、気を付けて!」
「無理しちゃダメ」
「いや待て待て、せっかくここまで来たんだ。できる限りやってみよう。何か良い方法が……は、これはっ?」
「え! 社長、何かよい方法が?」
「……カラスのフンか」
最終課題が提示されたからといって、毎日の過酷な修行がなくなった訳ではない。岩に挑む時間は夕方のごくわずかだ。びくともしない岩の時間が終わるとその日の修練は終わった。帰り支度をして4人はアカケンカーに乗り込んだ。外はすっかり日が落ちて真っ暗だ。
「俺たちこんなことして、何かが変わるのかな」ケンタロウがクルマの中でつぶやいた。
「そんなことはないぞ。俺は逃げ馬だけじゃなく先行馬にも仕掛けることが出来るようになったぞ。成功率は3分の1くらいだけど」
「それって役に立つのか」
「危ない!」祈りのポーズを決めていたレイが突然叫び出した。
「ほら!! 今、道路を横切ろうとした黒猫をさけることが出来たわ。能力は確実に強まってる」
「ほんとかよ? でもまあ全く無意味でもないのかなあ」
「本人の気持ち次第だよ。無駄だと思えば無駄。これは凄いと自己暗示に掛けるのも一つの方法だ。何ごとも大切なのは集中力だから」
サエコはいつにもまして冷静だった。
「そうなんでしょうけどねえ……」
それ以上は皆口を閉じ、押し黙ってしまった。
サエコとレイをそれぞれ送り届けてユウジとケンタロウだけになった車の中でユウジは言った。
「うちに入ったこと、後悔してるのか?」
ケンタロウは黙ったままだ。
「持ちはわかるよ。俺たちが今やってることって、アホみたいだし馬鹿げてる。どう考えても普通じゃない……でも、だからこそ、遣り甲斐があるんじゃないのかなあ……」
ケンタロウは黙っている。
「こんなこと今しかできないし……例え無駄に終わろうとも、それはそれで、グううっ」
ケンタロウはいきなりユウジの首を絞めた。
「な、やめ……うぐぐ」
苦し紛れにユウジがハンドルを切ると、クルマはくるくると回転して対向車にぶつかりそうになりながら、どうにか路肩に着地した。
「ばっきゃろ~何しやがるんだ! はあっはあっはあっもう少しで死ぬとこだったぞ」
「うん。ついてる。まだまだ大丈夫だ。やっていけるな」
「え……おまえって、馬鹿なのか?」
「アヤだよ、ただの」
「あの岩に頭ぶつけて一回死ね!」
ユウジはアクセルをべた踏みして急発進させた。
部屋に戻るとケンタロウは競馬のレースビデオを繰り返し観た。そして時間を図った。
1分45秒前に勝ち馬の結果がわかるようになっていた。
しかし、その正解率は7割程度だった。
続く
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