心の整理
「決めた。私は涼の彼女として咲希に逢いに行く」
一点の曇りもない笑顔で、咲希に彼女として逢いに行くと言い放った凛音。
俺は耳を疑った。
満面の笑みでそう告げた凛音の考えが理解できなかったからだ。
今まで幼馴染として過ごしてきた咲希に彼女として逢いに行くということは、相当な勇気がいる行為だ。
「凛音、これは俺が起こした問題だ。凛音にまで迷惑をかけたくない。だから」
「いや違うの!」
すると彼女は
「私はレンタル彼女。レンタル彼女を始めた理由は・・・今はまだ言えないけど、この仕事を頑張るって決めたのは私自身。だから精一杯、最後まで頑張らせて!」
そう訴える凛音は俺の知っている凛音から幾つも成長していた。
昔から名前の通り、凛としている女子だったが、少し飽きっぽい性格だった。途中で投げやりになってしまう部分は俺と似ていたのだが、咲希の必死に頑張る姿を見て、俺たちは毎回やる気を出していた。
そんな凛音がこんなにも過酷な状況にも拘らず、仕事を成し遂げようとする姿勢に感動した。
勿論、こんなことで一喜一憂している暇など無いのだが、俺の両隣にいた2人はいつしか俺よりも上のステージに進んでいたことに、少しだけ寂しさを感じた。
それと同時に、俺は彼女の意思も尊重してあげるべきなのかもしれないとも思った。
俺がやろうとしている行為は最低だ。
幼馴染を勝手に彼女ということにして、もう1人の幼馴染に逢いに行く。
これがどれだけ俺たち3人の関係を変えるかも分からないし、もう二度と咲希に口を利いてもらえなくなるかもしれない。
でも凛音は逢いに行くと決めたのだ。
何故レンタル彼女をやっているのか、俺には知る由もないがきっと彼女が何かを目指しているのだろう。
その夢を達成するために凛音がやり遂げようと努力しているのなら、俺はそれを留めてはいけない。
はぁ、俺もとことんクズだな。
凛音が頑張ると言っていることに乗っかって、咲希に逢いに行くなんて。
しかも俺がついた1つの嘘が原因で。
「ごめん、凛音。本当に申し訳ないけど、一緒に咲希と逢ってほしい」
すると、凛音もレンタル彼女としてスイッチが入ったのか、
「うん。わかったよ、涼くん!」
と満面の笑みで俺に返事をしてくれた。
凛音もきちんと仕事モードに切り替えてくれたが、俺の心は一点の曇もない...という訳ではない。
この選択を後悔しないといいのだが・・・
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