幼馴染の関係
「お、お前。まさか...小瀬川 泉じゃないよな?」
サイトに載っていた小瀬川 泉と全くの同一人物なのだ。
いつもと全く違うアイシャドウ、名前の通り凛とした雰囲気があったはずの凛音ではなく、数ヶ月逢っていない間に、ショートボブのスポーティーな雰囲気に変わってしまっていた。
「なんでその名前を...」
唖然とした様子でこちらを見つめる、小瀬川 泉・・・ではなく凛音。
だが俺の方が驚いていると思う。レンタル彼女という仕事は全く関わりのない男と手を繋いだり、楽しくもないデートで「楽しい!」と言ったりと非常に辛い仕事だと思う。
勿論、凛音が夜の仕事をしていた時には喪失感で何も出来なくなるだろうが、レンタル彼女として俺の知らない男と手を繋いでいる姿を想像したら心苦しい。
大学に入ってから咲希と話す機会が多くなり、凛音と二人で話したのは数ヶ月ぶりだ。そうとは言えども、高校生活を一緒に過ごした凛音が、こういった職業に就いている理由が知りたかった。
「同姓同名の人かなと思っていて、わざわざ会社の社長さんに免許書を見せてもらうよう頼まなかったけど…」
「凛音、なんでレンタル彼女してるの?」
正直に言うと、レンタル彼女という仕事に対して世間からの評価はあまり良いものではない。パパ活や風俗などとは違うが、お金の対価として愛を渡す仕事というのは、どうしても世間から白い目を向けられる。
しかも凛音の家庭は、お金に困っている訳でもないし、どうしてレンタル彼女をしているのか理由が知りたかった。
「それは・・・」
どこか悩むような仕草をみせる凛音。
手を顎にあて首を傾げる様子すら、凛としている。
何かを躊躇しているのか、それとも理由が見つからないのか俺には分からないが、凛音は長い間黙り込んでいた。
「大丈夫、お金とかそういうのには困ってないから」
と少しぎこちない笑顔で俺を見つめてきた。
腑に落ちないが、きっと凛音にも触れられたくない部分があるのだろう。長い間凛音と一緒に過ごしてきた俺はそう感じ取った。
「ところでさ、涼!メッセージ読んだけど、」
やばい、そうだった。
俺は凛音のことを心配し、色々と妄想していたが、現実がどれだけ悲惨なのかを忘れていた。
「このメッセージって本当・・・?」
俺と小瀬川 泉さんとのメッセージ履歴が写ったスマホを見せつけてくる小瀬川 凛音。改めて、同一人物だったのかと驚いたが、それ以上に恥ずかしいという思いが強かった。
幼馴染に彼女がいると嘘をつく。
嘘がバレないように、レンタル彼女を借りる。
そのレンタル彼女はもう1人の幼馴染。
これだけでも相当な出来事だが、それ以上に1番恐怖を感じているのは、
「幼馴染が涼の彼女として、もう1人の幼馴染に逢いに行かないといけないってこと?」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます