CHOPI

 窓の外を見ると、部屋から漏れ出た明かりをキラキラと反射させた、白い点々がチラチラと舞っているのが見えた。……通りでいつもより空気が肌に刺さるように感じたわけだ、なんて一人納得する。そう言えばやけに世界の音が静かな気がした。全てあの白に、吸い込まれているんだ。


 少し部屋の温度を上げたくて、一度座っていたベッドから立ち上がって移動し、机の上に置いていたエアコンのリモコンに手を伸ばした。ピッ、ピピッ。ボタンを押して設定温度を少し上げ、ちょっと悩んで風量も上げた。電気代が上がるのは覚悟の上。まぁ、半分やけくそになっているところもあるんだけど。


 リモコンを机の上に戻して、ベットの上に座り直した。窓の外が気になって、もう一度視線を窓の方に戻す。昼間、換気した後カーテンを閉め忘れていた。ま、そのおかげで雪に気が付いたわけなんだけど。


 チラチラと舞い続ける雪。確かこの辺でもつもる予報が出ていたはずだ。地元に比べたら全然なんてことないつもり方だけど、こっちの人は雪に慣れていないから、少しつもるだけでてんやわんやみたいだ。きっと明日とか交通系も厳しいだろうな……なんて思って、小さくため息をついた。


 ――これくらいの寒さ、幼い頃の記憶に比べたら、比じゃないんだけどな


 思い切り息を吸ってみる。温められたこの部屋では、鼻が痛くなることも無かった。今の部屋はエアコンがあるから部屋全体があったかくて、それはそれで良いけど。小さい頃、実家で使っていた石油ストーブは、部屋全体があったまることは無かったっけ。だから必死に石油ストーブの前を陣取って暖をとっていた。呼吸の度、鼻から入ってくる石油ストーブ独特の匂いが、私は嫌いじゃなかった。


 寝る前、ストーブを切って離れると、途端に部屋の中の空気が一気に肌を刺してくる。我慢して布団に潜るとみっちりと重たい布団が無駄な空気を外へと押しだす。出している顔だけがキンキンに冷えた空気に包まれ、冷たい空気の匂いがした。


 朝、眩しさに目を開けると、外ではもうすでに起き出している大人たちがみんなで雪かきをしていた。自分も手伝うのが当たり前だったから、慌てて起き出して外に出ると、雪の日独特の匂いがした。


 頭の中に思い出される、あの頃感じていた「冬の匂い」。こっちに来てからはあまりそれを感じなくなった。土地柄のせいか、あるいは他に何か原因があるのか。


 思い出される匂いを感じられないことに寂しさを感じた、冬のとある夜の話。

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