②
息を飲み込む音が静かに
「はっ! エディに続いて、今度はこいつを選ぶってのかよ! 傷物令嬢が男の
「どうして、貴様ごときが、彼女を悪く言う」
ゆらりと大きな身体が動き、ピエールに
シライヤの
「ひっ……」
銀色の
「彼女の良さが解らないなら、貴様こそ黙っていろ。これ以上彼女を
「な、何、お前に、何ができるって……っ」
「愛されて育ったお前は、さぞ捨てられない物が多いんだろうな。なんでも捨てられる俺とは違うのだろう」
「どういう……」
シライヤから逃げたいのか、ピエールは少しずつ後退するが、
「暗い海に引きずり込んで、共に
「ひいいいっ……!」
全身を
メインルートの悪役キャラに
「ルドラン子爵令嬢。あんな男の言うことなど、気にすることはない」
「大丈夫ですよ。気にしてなんていません。それよりも、私を
そうであって欲しい。
「けれど……。捨てないでください」
「え……?」
「捨てないで、そばにいてください。生きていて欲しいのです」
「……
シライヤの
「しかし、俺との仲を勘違いしていたようだが本当に良かったのか? ロワイ伯爵令息が、どんな風に言い触らすか。婚約者を探している大事な時期だというのに、俺のことが
「あっ、いえ、あの」
勘違い……。シライヤはそう取ってしまうのか。だけど勘違いではないと言って、引かれてしまったら立ち直れそうにない。
「な、仲のいい友人なのですから、どうかそのように思わないでください。これからも、変わらずに接してくださいね」
「そう言ってくれるなら、俺の方からも
安堵したように言うシライヤの視線が私へ
「私もです。休日の間、ブルック公爵令息に会えないのが
「それは……、俺もだ。休日が過ぎるのが
「ブルック公爵令息……」
シライヤの赤い頰を見ながら、私の頰も熱くなる。また私達は、二人で顔を赤くしているのだろう。むず
「嬉しいです。では、次の休日、我が家へいらっしゃいませんか? 両親に、親しい友人として
「ご両親に? いや、それは。俺の評判を、ご両親も聞いていることだろう。俺のような者を友人と紹介すれば、貴女がお
「そんなことはありません!
「ルドラン子爵夫妻が、そう言ってくれたのか?」
ハッと
「……間に合うか? 今日から
口の中でボソボソと言った声は聞き取りづらく、「ブルック公爵令息?」と名を呼ぶと、彼は「いや、なんでもない」と返して続けた。
「必ず行く。友人の家に招待されるなんて、初めてだ。楽しみだよ」
「良かった。週末は、楽しみましょうね」
私も本当に楽しみだ。
大好きな人達が集まるその日が、待ち遠しくて仕方ない。
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