③
*****
しばらくお互いを抱きしめ合っていた私達は、やがて
初めて彼と並んで腰を落ち着けたことに、少しの感動を覚える。
「婚約もまだなのに、身体に触れてすまなかった。不誠実な
「抱きついたのは、私からですよ?」
「あぁ、そうか。そうだった……かな」
顔を真っ赤にしながら、シライヤは
女性慣れしていないその姿に、やっぱり可愛らしさを感じてしまう。
大きな身体で、大人びた美しい顔をしているのに、こんなに可愛らしくもあるなんて、私をどこまで夢中にさせる気なのだろう。
「ご両親は、婚約を反対するのでは……」
「いいえ。父も母も、私がブルック公爵令息へ
「そうか……。ご両親が」
「少し気が早くはありますが、シライヤ様とお呼びしても?」
「もちろんだ。では俺も、シンシア
「シンシアと呼んでください」
「ならば俺のことも、シライヤと」
「はい、シライヤ。これから末永く、よろしくお願いします」
「シンシア。俺の方こそ、末永くよろしく頼む」
お互いの呼び方を変えて、湖のきらめきを二人で楽しんだ後、馬をゆっくり歩かせてルドラン子爵家へ向かう。
この林を抜けて湖へ向かう時、私達は友人だったのに、今は
二度程シライヤを
求められる感覚を知って、これが両想いなのだと初めての恋人から受ける愛情を知り、木々の間から漏れる光がやたらと眩しく感じた。
帰った屋敷では、シライヤに告白をして
「すぐに公爵家へ婚約を
「本当に良かったわ。婚約
母の言葉に、シライヤは困り果てたように顔を
「重ね重ね情けないところをお見せいたしますが、俺に
悲しげに言うシライヤを勇気づけたくて、彼の手を握った。
「いいのです、シライヤ。
「しかし……」
「こちらがシライヤを
「シンシア……。ありがとう」
ぎゅうと手を握り返されて、
「衣装のことは、娘の言う通りでいいとして、ダンスはどうなのかしら? 婚約関係になれば、二人で
「いえ……、それもお恥ずかしながら。習ったことがありません」
「まあまあ! そうなのね! では私が教えるわ! 私も未来の
母は
「まだいられるのでしょう? さあ、ホールへ行きましょう! さあさあ!」
今から始めるのですか? と尋ねる
ここでもシライヤは教わったことを全て吸収し、今日初めて踊ったとは思えない程
教え
となった。
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