④
*****
「お父様、お母様。お呼びですか?」
「おお、来たか。紅茶を用意してあるから、飲みなさい」
「
私と同じく、赤い髪と赤い瞳を持つ両親。我がルドランの一族には、赤い色を持つ人間が多く生まれる。両親は
先日はエディの件で心労をかけたはずだが、
シライヤにも、こんなに優しい両親がいたら、きっと自信に
「ありがとうございます」
言いながら二人の目の前に位置するソファへ
低めのテーブルには、香りのいい紅茶と小さなお
ルドラン子爵領で大きな収益を上げているものは、炭酸ガス温泉と
なんだろう。今日の紅茶は特別な物だったのだろうか。
「こほん。何か話すことがあるんじゃないか?」と父。
「最近のシンシアは、学園に行くのがとても楽しそうね」と母。
そうか、バレている訳だ。愛する両親は、愛する私をよく見ている。
カップを静かに置いて、熱くなる頰を少し恥ずかしく思いながら、とりとめもない想いをどう表現したらいいのだろうと、悩みながら言葉を紡いだ。
「気になっている人がいます。学園の生徒で、最近毎日話をしていて。彼と会うと、楽しいような、悲しいような、時が止まって欲しいような、もっと
視界に映った二人は、お
両親のことだから、そんな
想像よりもずっと静かな反応に、どういう意図があるのか
「あぁ、良かった。心配していたよ、シンシア」
「えぇ、本当に。心配でしたよ、シンシア」
「
「また愛せる人が見つかって良かった」
「
震える息を胸
次期子爵として、私は強くあらねばならない。婚約者に大切にして貰えなかった程度のことで、へこたれてはならない。だから弱音は吐けなかった。誰かに
だけど両親は、見ていてくれたのだ。心配していてくれたのだ。
「ありがとうございます……」
きっと弱音を吐いても良かったのだ。少なくとも、両親の前では。二人は、必ず私を受け入れてくれるのだから。
簡単なことなのに、なぜかいつも私には難しい。
大好きな家族。ここに、彼もいてくれたら。
「確かに、一時は愛のない結婚を
一度深呼吸をして、改めて口を開く。
「彼の名は、シライヤ・ブルック。ブルック公爵家の三男様です」
受け入れてくれる両親だとしても、この名を伝えるには、少し勇気がいる。貴族社会では、
「ふむ。一度目の婚約の時、彼の打診書があったのを思い出したよ。学園入学前は、公爵
「なんたってトップを取るというのは、簡単なことではないわ。それに加えて、シンシアをときめかせる男の子なのだもの。きっと
母も穏やかに
「想いを伝えた訳ではありません。ブルック公爵令息が、私をどう思っているかはまだ解らないのです」
「そうか。だが、彼が
「上手くいくといいわね、シンシア」
「はい、お父様、お母様」
上手くいくといい。シライヤに愛情深い家族を作ってあげたい。
そして、彼が隣にいてくれたら、私はもっと強くなれる。
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