2話 悪役令息シライヤ
①
さて、次に
婚約の解消をしてしまった私は、
文官や
エディがやらかした日、いい気味だとでもいうように笑っていた者達まで、手の平を返したように私を
「候補が多すぎて
そんな言葉を
令息達による連日のアピールに疲れ果て、ここに
次の婚約も失敗とならない
こうなると解っていれば、候補になりそうな令息達の性格や、生活態度を注意深く見ておいたのだが、何せいきなり決まった婚約解消だ。
「候補達のキャラクター設定でも見られたらいいのに」
残念ながら、私が知っているキャラクター設定は、
座れる場所もない校舎裏を、ただ歩きながら考えに
もう少し遠くから気づいていれば、来た道を
男子生徒は、校舎裏にいくつかある裏口の階段に座り込んでいた。こんなところに一人でいるなんて、
彼の
ついジロジロと見てしまって、彼に見覚えがあることに気がついた。
この男子生徒は……、いや、このキャラクターは! 王太子ルートに出てくる、
王太子ルートはゲームのメインルートだけあって
ヒロインに一方的な片想いをして、王太子との仲を
ヒロインが王太子の攻略を失敗すると、彼に連れ去られ冷たい海に共に
名前は確か。
「シライヤ・ブルック公爵令息」
しまった。声に出てしまった。連日の疲れのせいだ。不覚。
名を呼ばれた彼は、
前髪がキラキラと
「……シンシア・ルドラン
少し
下位令嬢にいきなりフルネームを呼ばれたのだから、
「
我ながらいい言い訳だ。とっさに思いついたにしては、上出来だろう。
「……そうか。
一方的に
連日のように令息達にアピールされる身となってしまった今、このあっさり感に好感を持ってしまう。
そういえば、王太子ルートを思い返してみれば、先に彼へ
思わせぶりにシライヤへ甘い言葉をかけて、
ゲームの進行の為とはいえヒロインも、なかなかにいい性格をしていたのだと、今なら解る。
そもそも、シライヤというキャラクターは設定が
公爵令息でありながら、彼を敬うような人間はここにはいない。それどころか、
産んだ母親もシライヤを置いて消えてしまった為に、彼へ親愛を向ける人間は一人もおらず、生まれてからずっと孤独だった。
家族愛に
その事実に絶望を感じていた時に現れたのが、ヒロインという訳だ。
学園の勉強についていけないヒロインが、シライヤの助けを借りると成績が良くなるというお助けキャラでもある。
王太子
毎日シライヤと図書室で勉強イベントをこなしていれば、孤独な彼がヒロインに
人生で初めて現れた、孤独を
他の者達のように、望まれぬ子と馬鹿にすることもなく、一心に
それは、
あれ……もしかして彼、ちょっといいのでは?
エディは下から数えた方が早いくらいの成績だったが、シライヤは常に成績トップ。
エディは努力を知らない人間だったが、シライヤは
エディは
シライヤに婚約者はいないし、継ぐ
ヤンデレキャラになってしまうのは、ヒロインの行動に大半の原因があった。利用するだけ利用しておいて、突然ポイ捨てという扱いだったのだから。
彼の心のケアを行いながら最後まで大切に扱えば、彼は妻を一途に愛し共に高め合いながら支えてくれる、理想的な夫になってくれるだろう。
何より、ヒロインとのハッピーエンドルートがないキャラというのが最高だ。
しかし推測ばかり並べ立てても、エディの時のように相手を見誤ってしまうかもしれない。とりあえずもう少し何か話をして、彼の人間性を確かめなければ。
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