第102話 ルッカ領境
あゆみは兵士の休息をさせつつ、ユンド復興支援についても考えていた。
ユンドでも農耕具はほとんど全て、木製。
ソルレマのロアド=ルシム行政官の管轄区の鉄鉱山から農具、木材加工用ノコギリ、斧などの生産を急がせているが、まだルッカ領ユンド自治区周辺にも普及がしていない。
ハルローゼンへの基幹道路の宿屋などの建設を急がせたい。
ユフトテのコルカ=ミエル行政官にも伝えているが、まだ実現できていない。
あゆみは、水車をユフトテ都市への第1号として、搬送を急がせている。
ヨシア第2隊長に設置に向かわせる予定だ。
その準備もさせている。
ユンドへの食糧。衣類なども輸送し続けている。
アマゾネス隊と同行して、ユンドのソルミ都市まで視察も考えている。
ルッカ領3カ所に囲まれたクレミン領で、ルッカ領へ移住を希望する耕民らを殺害する事件が起きた。
クレミン子爵が命令を出し、ルッカ領へ逃亡を謀ったカドで、耕民ら10人ほどが見せしめに公開処刑が実行された。
すでにルッカ領に3分の1を収奪されて、鬱憤が鬱積し、領地経営が行き詰まっていた。
そのうち、領内で、耕民らの一揆が起こった。
従属契約をしていない耕民達が領主に盾をついてしまった。
旧ゼルシア地区館にいたあゆみにも急報が届いて、ミシア地区と接するクレミン領を目指した。
クレミン領兵らに、押され気味の一揆らはルッカ領へ逃げ込んだ。
領兵は剣や槍や弓で、一揆の耕民らは木製の農具か棒きれだ。
クレミン領主は、元々はその地域はクレミン領なので、クレミン領兵を侵入させた。
少数のルッカ兵は、クレミン領兵をなんとか撃退はした。
子爵自らが抗議を言いだし、反逆領民を引き渡せとルッカ兵と揉めた。
あゆみらが到着した。
クレミン領主はそこそこに、逃亡領民を返せと言い放つ。
ルッカ領側に逃げてきた耕民らは痩せ過ぎしていた。
後方でルッカ兵に負傷した耕民の手当や軽い食事をさせている。
「すでに、我が領民になった者達だ」
「そんな,横暴が通るのか!」
「ああ、ワシが決めたことだ。
これ以上、我がルッカ領に入るな!。
殺すぞ!」
「ここは我が領地だ!」
「仕方がないな。
じゃ、このまま残りのクレミン領もルッカ領に組み入れるとするか」
「何を、貴様!」
「馬鹿者!。
この方を誰だと思っているんだ!。
ユンド国を滅亡させた。
ザエン様だぞ!」
「そんな筈ない。
ユンド国を倒せるモノか?」
あゆみ側にはルッカ兵30人程。
それに対してクレミン領兵は4百人程だ。
クレミン領主自身が強気だ。
いまにも討ち取ろうという気配だ。
クルル隊長が合図をすると、何処からか出てきたいのか、ルッカ軍3千程がクレミン子爵、領兵を囲んだ。
その有様を見てクレミン領兵は、その場で武器を捨てた。
「何をしている!。
奴らを成敗せよ!」
領主が叫んでも、領兵は腰を降ろしてしまった。
あゆみは、クレミン領主の首筋に剣を当てた。
「殺すのか?」
「ああ、お主に、選択をさせてやる。
この場で、領民の従属契約を解除するか、
殺して、従属契約を消滅させるかだ。
好きな方を選ばせてやる」
「このまま領地に居続ける選択はないのか?」
「お前は、領民を殺した、殺すか追放かだ。
領民あっての領主なのだ。
お前が領主になれたのは、ただ継承したに過ぎない」
領主は大きく両手を広げて、呪文を発し、従属契約を解除した。
「お前は、館に帰って、王都へ行くんだな。
また、領主に従って、領民を殺害した兵も追放だ」
「どうして、領主様に命令されたので、逆らえず殺しただけです」
「領民殺しがオメオメとクレミン領で生きていけると思ったら、大間違いだ。
決して、領民を殺したお前達を許さない。
さっさとクレミン領から出る支度をしろ。
さっさと失せろ!」
「ワシらは、このままで、いいのですが」
クレミン領兵の1人が聞いた。
「お前達は、領主の権力の傘でえばり腐った兵士どもだ。
兵士でいたいなら、クレミン領以外の場所で、ゼロから精神を徹底的にたたき直す!
お前らにその覚悟があるか?」
あゆみのニタリ顔で、領兵は鳥肌が立った。
ルッカ兵にクレミン領兵の武器類、鎧も没収させる。
領主以外の馬も没収した。
「クルル隊長。これからクレミン領に進軍し、領民にルッカ領になったこと言い伝えよ。
クレミン領主は王都へ追放になったことも伝えよ。
また、領主の親族らが居続けるか追放か、居続ける者は、貴族の特権意識を捨てて、領民と対等になれと、できぬなら出て行けと、その場で選択させよ。
領民には年貢は当分ないことを伝えよ。
ミシア地区より食糧・衣服の支援があることも伝えよ」
あゆみはクレミン領から逃げてきた耕民に会った。
あゆみが向かってくると、皆両膝をついた。
「もう少し、速く来られたら、耕民が死なずにすんだ。
本当に,残念だ。
これから、お主達に、生きていてよかったと思わせるように、豊かな暮らしになってもらうぞ」
「本当にですか」
一揆の代表の者は涙を流しながら述べた。
「ミシアのゴエム行政官に、即クレミン領民の食糧、衣服の支援を、鉄器の農具を手配するように伝えよ」
兵士は乗馬で走った。
「まず、お主達の痩せすぎた体に、肉をつけさせてもらうか」
あゆみは一揆を指導した代表から、話を聞いた。
年貢は8割が領主。
農具は木製。
耕作地が豊かでも、食べていけなかったと。
夕方頃、ゴエム行政官らが大規模な荷馬車と共に、食糧・衣服などを運んできた。
「ザエン様、遅くなって、申し訳ありません」
膝をついて述べる。
「いいや。助かる。急がして、感謝するぞ。
この者が、クレミン領で一揆を率いたサエル殿という者だ。
クルル隊長もすでにクレミン領、すでにクレミン地区を巡回している。
サエル殿が道案するので、食糧配給や衣服の手配を頼む」
あゆみはそのままルッカ領クレミン地区境のルッカ領ノエノ地区を目指した。
ノエノ地区に入ると、アマゾネス隊の隊長らが出迎えた。
久しぶりに再会を果たせた。
旧ノエノ領館で、アマゾネス隊一部とも会えた。
ノエノ地区で収穫された食糧等をユンドへ搬送しているので、隊員達が向かっていると。
モエカ隊長から隊員が増えてきたことを聞かされた。
あゆみは嬉しそうだ。
アルネ砦を修復して、隊員の寄宿舎にもなっていると。
あゆみはアマゾネス隊にも褒賞を考えていたが、今回クレミン領に急行したので、用意はなかった。
金貨かそれとももっと別のモノとかも考える。
ノエノ地区全般もアマゾネス隊が管轄している。
そのままでよいと考えている。
ホルダ地区もアマゾネス隊に任せてもよいかとも考える。
あゆみの滞在の知らせを受けたゴゾ領主があゆみに面会を希望しに来た。
応接室であゆみらは待っていると、ゴゾ子爵らが入ってきた。
そして、あゆみの前に跪いて、どうかゴゾ領をルッカ領に組み入れてほしいと願った。
あゆみはモエカ隊長から話を聞いていた。
「できれば、ガルミ領方式で、ゴゾ領で貴族を生きながれえたいのです」
領主は懇願する。
領民の生活向上させるかを問う。
領民の年貢はゼロにしますと。
領民を豊かにさせたいので、手ほどきをお願いしたいと。
貴族は名目上で、強い権限が持たせぬがどうかと。
家名を継承させて頂けるのなら、問題ありませんと。
この地より行く当てがないので、十分だという。
ゴゾ領にもルッカ硬貨が出回っているので、是非、ゴゾ地区発展をさせるため、ルッカ領に組み入れてほしいと懇願する。
あゆみは休憩そこそこに、ゴゾ子爵と共に、ゴゾ領へ向かうことにした。
モエカ隊長百名が付き従った。
確かにゴゾ領民は外の領民と比べて、痩せこけてはいなかった。
領民の表情も明るい。
耕作も豊かで、領民にも恩恵を受けている。
年貢は領主が5割と言っていた。
ゴゾ領館は質素だった。
貴族としての,最低限の威厳を秘めている程度に思えた。
この日、ゴゾ領はルッカ領ゴゾ地区が誕生した。
より領民の生活向上を言い渡し、
ゴゾ領主がゴゾ行政官に任命された。
これから旧領館は行政府として活用。
ゴゾ地区の民の行政を行う場所。
ゴゾ行政官の下に元下働きの者を仕え、その者達に識字率を上げさせ、簡単な計算をできるようにさせよと。
民の目線にたてる警護兵を採用せよと。
こちらにも金属製の農耕具や森林伐採の器具も徐々に配布することも話す。
改めてゴゾ行政官には、いずれ今の館は行政府になるので、別の住居に移動することを勧める。
旧館の下男下女に文字や計算を教え、民にも識字率をあげさせる努力をすると述べる。
これからは貴族も民も同じ目線で、暮らすことはよいと。
下男や下女には行政府となった事務官となって、地域の民目線で進めてほしいと述べる。
これからこの場所が、ゴゾ地区行政府の中心になると。
暫くして、ゴゾ地区の隣のエラミ領も、あゆみに貴族を残したまま、ルッカ領に組み入れてほしいとエラミ男爵が懇願しにゴゾ領館を来訪した。
エラミ領は年貢6割が領主なので、領民の年貢は5割以下を話す。
ルッカ領はまだ年貢はゼロだと話す。
エラミ領主らは驚いた。
あゆみの意向に沿うように努力すると話す。
貴族の身分意識を重視せず、領民と接すること。
領民の生活向上しているか、見聞すると。
その時、貴族出身に行政官を任命するかを決めると話す。
エラミ領監視にアマゾネス隊に任せることにした。
あゆみはソルラン国の2分の1、半分をルッカ領になったようだ。
ガルミ領はそのままでと考える。
ユンドに奪われたノエノ地区もノエノ地区に加えられた。
長年のノエノ地区が元の領地に編入された。
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