第103話 ソルラン国王都

 ソルラン国王のメンツが失墜した。

 王都の国際会議が中止になった。

 国王の威厳が失って、国王の間でも、列席者がドンドン減っていく。


 「王様、大変です!」

 一方的にドアを開けた。

 王に伺いを立てて、王の間へ拝謁する形式を取る者はいない。

 国王側近の執務室員の1人、ラルエだ。


「なんだ!。馬鹿でかい声を荒げて!」


「王様も、腰を抜かす話ですぞ」

 王の前に出ても膝を折らないで、立ったまま。


 「お前、臣下の礼が出来ていないぞ!」

 王様との一対一の問答。


「じゃ、いいや。帰るかな?」


「はよ。申せ?」


「そんなに、知りたいかい」


「ああ、腰を抜かす話なのだな」

 王は前のめりになった。


「じゃ、教えてやる。

 ルッカ軍がユンド国帝都まで進軍して、ユンドを滅亡させた。

 どうじゃ、驚いただろう」


「嘘をつけ。蛮族の寄せ集めがユンドを滅ぼせる筈無い。

 お前は、やはり馬鹿だな。馬鹿・・・・!」


「殿下、本当ですぞ」

 列席の1人が言う。


「先日、王都で商人達の噂になっていました。

 なんでもルッカ町で戦勝祝賀会があって、大変だったとか」


「蛮族風情が、何をたわけたことを言ってる」


「ほら、王様。

 知らないのは王様1人じゃ」

 ラルエ執務室員は嬉しそう。


 王様は気分がすぐれぬと退座した。




 暫くして、ラルエが王の間に、いきなり戸を開いて入ってきた。

「お前、礼儀がなってないぞ!」


「凶報が入ってきたので、来てやったんだ。

 王様の威信も落ちたな?」


「朗報ではないのか。凶報とはなんだ?」


「クレミン子爵様がクレミン領から追放されたと王都に引っ越してきました」


「何を馬鹿なことを」


「領主様の下臣から執務室に報告がありました。

 なんとかしてほしいと。

 王様どうします?。

 王領から分けてあげます?」


「ふざけんな!

 馬鹿か!」


 王の威厳が失墜してから、言葉が乱暴になっている。

 王妃は第2王子を失ってから、討伐隊8千は全滅と。

 王様との亀裂ができてしまい、実家クロエール国へ帰ってしまった。

 国際会議が中止になったことで、王の娘3人も母の後を追うようにクロエール国へ行ってしまった。

 いまは第1皇太子のみが王都にいる。


「王様、大変です」

 執務室員の別の男が入ってきた。


「なんだ、騒々しいぞ。

 馬鹿か!」


「あれ、王様の失墜がまた増えました」

 男は嬉しそうだ。


「何がだ?」


「ゴゾ子爵領とエラミ男爵領の領主様が、ルッカ軍に下りました」


「誠か?」

 列席の1人が言う。


「はい、確かな情報です」


「このままだと、ルラン男爵領やスクル男爵領もルッカ領へ編入さそれうだな」


「王様、どうしやす。

 手をこまねいているつもりですか」

 執務室員の男は聞く。


「もし、ルラン領がルッカ領に組み入れられたら、ソルラン国の直轄領もそのまま、ルッカ領に編入されそうですぞ」


「どこだ、さっきからルッカ領とか、ワシは領名を認めないぞ!」



「ただ、不思議なのは、どうしてガルミ伯爵領はルッカ領に組み入れないのか?」


 国王の前で,列席の者と執務員の2人で会話して、国王をそっちのけでいる。


「そうそう、オエゾ元大佐がいま、王都の滞在とか、ガルミ伯爵と密談しているという噂が出てますが?。

 王様、知っていましたか?」

 執務室員の男が、王様に話を振った。


「それが、どうしたというのだ」


「王様は読みが浅いな」


「なにが言いたいのだ。この馬鹿男!」


「勿論、ルッカ領へ編成してほしいに決まっているではないでしょうか」


「大佐を辞職し、おめおめを領地に引っ込んだ、引き籠もり男だ。

 たいした問題ではない」


「違いますよ。王様の避難先の件ですよ」


「何を、大馬鹿なことを言う」


「いまなら、王妃が滞在しているクロエール国には行けます。

 アゲルゾ国にもなんとか逃げられます」


「どうして、国からでないといけないのだ」


「決まっているでしょう。

 ルッカ軍団が王都へ進軍するからでしょう。

 その前にトンズラが一番賢明な判断です」


「なにを、言っている。ワシはソルラン国王だぞ!」


「ルッカ軍はユンド国を滅ぼした軍団。

 王都など、簡単に落ちしますよ」


「なにを、王都はワシもモノだ!」


「王様、現状認識してませんね。

 いま王都では流通は砂金ではなく、ルッカ硬貨で商品取引がされています。

 市場も王都ではなく、ミシア領のユエル町で商いが行われて、各地の領からの農作物・工芸品などもユエルに集まっています。

 王都を見ましたが、実際王様の目でご覧下さい。

 衰退している王都を」


「王都が衰退しているだと、嘘もほどほどだぞ!」


「王様、彼の言う通り、王都は衰退し、活気がありません」

 列記の者が述べる。

 もはや、列席の臣下も国王を殿下の名称を徐々に言わなくなった。


「ルッカ軍によって、領から追放された元領主の生活も困窮が実態です。

 王様はこの下臣の生活を補償させないと、なりません」


「なに!。領地を守れないで、おめおめ王都に来た達者を、どうして養う必要ある?」


「王様。領主には領民を守り、領主を王が守るのが当然ですが」

 執務室員は食い下がらない。


「ああ、頭は痛くなった」

 王は退座してしまった。




 王都のオエゾ伯爵宅に、ガルミ伯爵が滞在していた。

 ガルミ伯爵は王都に邸宅を構えていないのだ。


「オエゾ殿、王都に宿泊させて頂き感謝しかありません」


「いいえ、構いませんよ」


「でもオエゾ殿、領地にいることが多くなったと伺いましたが?」


「その件は、王都にガルミ伯爵が来たら、連絡するように言い聞かせたからだ」


「それでは、オエゾ殿、本題を?」


「ルッカ領のザエン殿とは、どういう人物ですか?」


「ルッカ軍の総大将ですが、私の目で、どれほどの腕前かは知りません。

 達人だと言われています。

 広大なルッカ領を支配しても、生活は質素そのもので、温泉を楽しんでいます。

 本心でお話をすることが寛容と存じます」


 当時、あゆみらルッカ軍はガルミ領の金山を自分ら領土に組み入れると殴り込んできた。

 ガルミ伯爵らは金山坑道周辺を柵や囲いで防御体勢を整え、ルッカ軍に対峙をしていた。

 ルッカ軍は金山の鉱夫らに、伝い通りに荷馬車も引き連れて登場した。

 ガルミ伯爵は金山を奪われる気などなく、応戦したが、全く兵士の士気の高さに領兵は矢で傷つき、防御塀も破壊された。

 金山を奪われ、金山の峰奥の山々、金山周辺の農耕地を一方的で奪われた。

 その代わりに、王都軍討伐隊8千をゾエド領でルッカ軍に殲滅され、殿下のシエル第2王子が戦死、同乗していた宮廷女官2人の1人ガルミ伯爵カルコフ令嬢も、その後終息が途絶えた。すでに殺されたとばかりと。

 ルッカ軍から令嬢と下女2人の解放と申し出て、領界で引き渡された。 

 それから、金山の奥の山に、使い道のない地面の温度の高い場所に、施設を建設をし始め、一方で、山並み地域をルッカ領に繰り入れられた農作物が、いままどより多くの収穫を増産させていた。

 どうしてなのかと、疑問が生じた。

 その内、使い道のない地面の熱い場所に、施設が完成して、ルッカ軍の総大将らは頻繁に出入りしている。

 金山の鉱夫もルッカ領に組み入れた耕民も出入りしている。

 カルコフ令嬢はルッカ町で世話になったレクレンにお礼したく、会いに行った。

 その時の娘のレクレンの浴衣という薄い服を纏い、娘は驚いた。

 この施設が温泉と言って、美肌にも、疲労回復にもよいと、

 どうして周辺の作物とガルミ領の時と、違うのか聞いた。

 レクレン殿から年貢はゼロと、土壌改良して、耕民が作物の生産の喜びを感じている。

 入浴して、初めてカルコフらは温泉入浴の気持ちよさ、浴衣の着心地に興奮気味だった。

 その縁で、あゆみとも伯爵とも接近できるきっかけになった。



「そのザエン殿がユンド国を滅ぼしたとは、到底想像もつかないのだ」


「でもザエン殿の軍事力は、周辺国にも脅威で、対抗しようもないと存じます」


「ザエン殿の軍団はどうなのだ?」


「私の知っている範囲ですが、ルッカ軍には4軍団が存在します。

 4軍隊とも実戦済みですので、相当強いかと存じます」


「いまは、ユンド国を制圧して、休息でもしているのか?」


「次の標的はチェンアルク国へ向かいますが、その前に、ソルラン国の制圧があるかと考えます」


「本当に、情けないのう。

 ソルラン国軍があっても、ユンド軍とまとにも戦えず、ザエン殿に、ノエノ領地も回復させたとか、軍人だった、私自身恥ずかしい限りだ」


「オエゾ殿。ソルラン国は軍隊を持つのに、反対する国是です。

 ユンド軍を防ぐような、対策をしてきませんでした。

 口で騒いでも、相応の力を持たぬ、戯言です。

 それをザエン殿は、見事にユンド軍を何回も撃退してきました。

 ソルラン国をまとめて、チェンアルク国と対峙するのです。

 チェンアルクへソルラン人が多数奴隷で連れて行かれきました者達を取り返す目標があると思います。

 大変、高い崇高な偉業です」


「本当だ、ガルミ殿の言う通りだ。

 会議は踊るで全く進展しない現状。

 そこでだ。伯爵殿に頼みがある?」


「元軍人の1人として、チェンアルクへの討伐隊に参軍したい。

 また、オエゾ領もルッカ領へ組み入れても構わないと伝えて欲しいと」


「ルッカ領では、領民の年貢はゼロのままです。

 ザエン様も軍人経験のオエゾ殿が入れば、喜びます。

 必ず、早急お伝いします」


 どうもオエゾ領内でもルッカ硬貨が出回っているらしい。


 





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