第99話 ルッカ領へ 2
あゆみはグビーノへ目指す。
グビーノに着く間、あゆみはソルレマ元執行官のロアド=ルシムに、ユンドの復興について、話した。
改めてルッカ軍はユンドを支配する気がないこと。
できれば自力で復興を
ユンドの人材を拡充したいこと。
地域を管理する人材がほしいと。
都市の治安を守る警備隊の組織も。
耕作地の拡大に、鉄製の鍬や鋤などを普及させたいと。
ユンドで金硬貨や銀硬貨の普及を考えていること。
貨幣がルッカ硬貨で統一すると、ユンド人はルッカに支配されたと勘違いすること。
商業活動を活発するには、統一した貨幣が必要になると。
どの国に行っても同じ硬貨が使えれば、より流通が加速することも話す。
ルッカとカムール国との交易でルッカ硬貨が流通する兆しがあることを話す。
ユンド独自の硬貨でなく、統一した硬貨を鋳造したいことを改めて述べる。
ルシムはルッカ硬貨には抵抗があっても、普及してしまえば、徐々に使用するのではと、まだ納得にはいっていないように、あゆみは思えた。
あゆみは何処の国に行っても、同じ統一通貨なら、こんな便利はないと考えている。
長い間、物々交換は砂金か銀粒という、慣れ親しんだ者に取って、詐欺曲がりにも思えてしまう。
統一通貨以前の、金貨、銀貨の価値を見出せない習慣に馴染むのに、あゆみが考えているほど、単純な長い慣習、流通革命に近いようだ。
あゆみはユフトテ金山の砂金をルッカへ送り、その砂金でルッカ金貨を鋳造し、ユフトテの職人らが見本となるルッカ金貨を摸倣できるか確認するといいと話す。
いまはルッカ町へ装飾品などの品質・精度・芸塾性・嗜好品になるか、情報の行き交いをしている。
他国へ売れる商品開発を試行錯誤している。
でも、あゆみはユフトテ金山の職人に、ルッカ金貨と同等の品質を確認してもらいという意向がある。
だから、ユフトテ金山から砂金を送り、その砂金分でルッカ金貨を渡すと話す。
職人が同品質を鋳造、模様が同等か職人に見極めさせればいいと言う。
ユフトテの職人が納得したら、金山から砂金をルッカへ送り、ルッカ硬貨の流通に使用すればよいと話す。
ルッカ金貨は隣国ハルローゼン国との交易を繋げる鍵になる可能性があると話す。
ルシム元執行官にはまだピントこないらしい。
実感がないのだ。
物々交換で砂金・銀粒に替わる金貨とか銀貨には、馴染まないと疑問があるらしい。
あゆみの指示で、ルッカ町へ砂金を別に送ることを承諾する。
あゆみは命令できる立場にあるが、できるだけユンド人の自主性を尊重している。
3日後に、防衛機能を破壊させたグビーノに着いた。
あゆみらに都市の城門、城壁を破壊されて、最初に兵士らが逃げ出したとか。
次に執行官や貴族、奴隷狩りに加担した者達らが急いで帝都へ向かったと。
残された民は帝都を目指した。
しかし、ルッカ軍の最終目的地が帝都アルソミアだと理解すると、途中で引き返した。
中にはチェンアルク国と接するラカンラへ目指した民も多くいたが、廃墟された都市を目の当たりにして、行き場のない民は、グビーノへ戻ったと。
エルミエ都市へ向かった民も、グビーノ都市と同様な光景を見て、戻ったと。
エルミエ都市と同様、都市そのものは破壊されていないが、いつルッカ軍に虐殺しに来るかと不安の日々を過ごしていた。
聞き伝いにユンド帝都が陥落して、国が滅亡したことを知り、グビーノ民は恐怖に怯えた。
民を守る兵士もなく。
一部の民はソルレマに向かった。
都市に入れず、テント生活を強いられ、やむなく、グビーノへ戻ったと。
行く当てのないグビーノ民。
そこへ遂に、ルッカ軍の姿を目の当たりにして、民は死ぬ覚悟を決めたらしい。
殺される以外ない選択死。
やはり自ら死を行うのは、躊躇いがあったらしい。
小規模のルッカ軍から1人がグビーノへ乗馬で向かってきている。
民はその者はルッカ軍のまわし者と確信した。
その者の言い分を聞くことになった。
グビーノ民の代表は、乗馬で来る者を待った。
「私は、ソルレマの元執行官のロアド=ルシムと言います。
この都市の執行官とお話がしたい」
「執行官はこの都市にはおりません。
みんな帝都へ行ってしまって、ここにはただの民しかいません。
いま、一時的に私が代表の真似をしています」
グビーノとソルレマと都市同士の交流はない。
ソルレマ都市が奴隷狩りに反対したので、ユフトレ都市と同様に軍部の監視下で、接触をさせなかった。
だから、一部ソルレマへ避難した民が戻って来て、状況が少しだけ判った。
ルッカ軍に降伏したことを。
「すでに、ユンド帝国は滅亡した。
新しいユンドの復興で協力をしていきたい」
「やはり、お前はルッカ軍のまわし者か?」
「ルッカ軍に降伏したが、支配されていない。
信じられないだろうが、この先のエルミエ都市に食糧支援へ行き、こちらに来た。
決して、エルミエの民に復興の兆しが見えたので、こちらにルッカ軍と来たのだ。
ユンドの裏切り者ではない」
「何をルッカ軍と協力をしろと?」
「グビーノには食糧はあるのか?」
「耕作した者達は、耕作を放棄した。
食糧も底をついている状態だ」
「豊かなグビーノの土地を耕作しないのか?
ソルレマの土地は枯れて、イモ類が主食でしかなかった。
ここでは麦栽培があるではないか?」
「もう向こうのルッカ軍に殺されるしかないのだ」
「もう1つ聞きたい。
グビーノ鉄鉱山はどうなっている?」
「貴様、ルッカ軍に知らせるつもりか?」
「鉄鉱山で、生産してほしいのを造ってもらいたいだけだ」
「何を?」
「決まってだろう。ユンド人の復興になる道具だ。
木製の鍬や鋤を鉄製に替えて、ユンドに普及するのだ」
「鉄は剣や武器でしか使用できない。僅かに鍋とか最低限に限られて、
いまもそうだ。無理だ」
「どうしてだ?」
「鉄鉱山にはユンド兵が固めている。
死守するようだ。
最悪、鉱山の岩盤を破壊するようだ」
「ユンド復興の鍵をなくしたいのか」
「ああ、そう聞いている」
「どのくらい兵がいるんだ」
「貴様、ルッカ兵に教えるのか?
そんなこと教えるわけないだろう」
「よく食糧が続くな」
「周辺の民家から、当たり構わず、強奪したらしい」
「グビーノにはルッカ軍からの食糧支援は不要か?」
「軍門にくだれと?」
「すでに、滅亡している」
「本当に、お前と話しても、ラチがあかない。
外の者はいないのか?」
「・・・・・・」
「せっかくの、食糧支援を放棄するんだな」
ルシム元執行官は長々話したことを後悔した。
むこうにルッカ軍を待たせすぎた。
ルシムは乗馬で引き返した。
ルシムはあゆみの前にひざまずくして、状況を説明した。
あゆみらはソルレマ方向へ向かった。
先に鉄鉱山の兵士を落としたいとあゆみは考えた。
あゆみ1人でも、どの位の兵がいようが、気にしない。
ユンド兵を生かす必要がない。
あゆみは、鉱山があるという場所をだいたい確認をすると、数本の剣、弓具一式、普通の矢は多めに、1人で出撃した。
やはりあゆみの読みどおり、グビーノからの通報者らしき数人が、鉱山を目指して走っていた。
あゆみは弓でその者達を射って殺した。
鉱山を囲むように柵があり、門もある。
少々暗くなった頃合いを見て、あゆみは鉱山へ静かに進む。
ユンド兵どれくらいいても、全く気後れしない。
少しづつ削っていくのも、楽しみな狩りの醍醐味だ。
柵を警備している兵士から、少しづつ神隠しになったように、1人1人と消していった。
警備の交代で、引き継ぎの兵士がいないことに、早速兵士は奥に連絡に向かう。
またその1人を残して、交代警備兵が消えていく。
まるで、ここから逃亡を謀ったのかと思わせたい。
その表情も見たい。
中から50人ほどの兵士が出てきて、当たりを捜索し始めた。
暗くなってきているので、血の痕跡も松明を翳しても、確認は難しい。
今回、あゆみは兵士の心臓を刺したので、血吹雪を諦めた。
鉱山にどれほどの兵士が、鉱夫がいるか不明だが、剣を持ってる服装の人物を狙う。
あゆみは鉱山の中に潜入することも考えた。
さっき殺した者の中から兵士帽を被って、ユンド兵に紛れた。
隙を見て、鉱山入口の兵士を瞬殺で、死体を隠す。
鉱夫らは柵内で別の家で住んでいるらしい。
鉱山の中には兵士が数人程度だった。
その場で殺害した。
そして、後方から柵を警備している兵士を弓で射って殺した。
あゆみは鉱山の入口に、死体を積み重ねた。
人の体重がこんなにも軽かったかと思えるくらい重たさを感じない。
そう、あゆみは死体を積み重ねたら、どんな反応するか、その表情が見たいのだ。
ユンド兵が死体の山を乗り越えてまで、鉱山に入って岩盤を落とすとは考えないと。
兵士の親玉は、何処に?
あゆみは柵内から松明で、大きく円を描いた。
前方からルッカ軍が動き出した。
柵の周辺にも松明を点在させた。
「貴様!」
やっと、兵士をまとめる上官の登場だ。
7人ほどいる。
あゆみに斬り込んで来る者。
鉱山へ目指す者もと、
そこで、鉱山入口に死体の山で塞いだのを見て、驚愕する。
あっけなく7人はあゆみに殺害された。
ルッカ軍は到着して、鉱夫らを集めさせた。
鉱夫らはどういう状況なのか、全く事情がわからないでいるようだ。
さっきまでいたユンド兵がいないのだ。
松明に囲まれた鉱夫らは固まった。
ルッカ兵に殺されると。
鉱山入口にも松明をおいたあるので、兵士の死体山で鉱山が塞がれたのを見て青ざめたらしい。
あゆみは鉱夫らの恐怖の表情を見て、嬉しそうだ。
「ここもルッカ軍が制圧した。
そのまま、ここで殺されたいか?」
あゆみは沢山殺したので、大満足だ。
体は鈍っていたので、よい運動をしたと。
「ここの鉱山の責任者は誰だ」
「私はその責任者です」
「すでに、国が滅びたことは知っているか」
「はい、兵士が話していました」
「これから、お前達はどうするのだ。
兵士の為に剣や武器を造りたいのか?。
それともユンド復興になる物を生産するかだ」
「この国は滅びたので、目標がありません」
「グビーノ都市からの食糧等の支援があるのか?」
「ユンド兵から、お裾分け程度で、食糧を繋いでいました。
もう兵士が死んでしまったので、飢え死にしかありません」
「この者は、ソルレマ都市の元執行官だ。
この鉄鉱山を、この者におかせる」
「ザエン様、よろしいのですが?」
「ああ、これからユンドの国造りで、過去にとらわれない。
ルシム元執行官、改めてルシム行政官として、ソルレマ都市とこの地域一帯を行政をしてもらいたい。
どうじゃ、しがらみのない復興計画だ」
「本当に、私が、よろしいのですか?」
「ああ、適任だ」
ロアド=ルシム行政官が誕生した。
「そこの鉱夫達、ルシム行政官が鉱山の運営の責任者だ。
判ったか」
「私らは、これから何を生産するのですか?」
「この鉄鉱山から、農具の生産、木を切り出すノコギリとか森林伐採の工具とか。
それと日常生活の鉄製品も必要だ。
食糧支援は当分、ソルレマ都市から行う。
徐々に周辺に耕作が増えたら、自給自足を目指してほしい」
「なんだか、狐につままれたみたいだ」
鉱夫の1人は言った。
「ルッカ軍に、殺される覚悟でいたか?」
「はい」
「これからは、兵士の為でなく、ユンド人に必要な商品の生産をせよ」
「ルッカ軍のためではないのですか?」
「ああ、お前達の軍隊が、ソルラン人を奴隷狩りをして、他国に売っていたのだ、
その成敗に、帝都まで乗り込んで、軍人達を成敗した。
我々にはルッカ領で、武器を製造しているから必要でない」
「グビーノ都市は・・・?」
ルシム行政官は聞く。
「暫く、傍観だな。そのうち、ソルレマ都市に、懇願しにくるだろう。
そしたら、手を差しのべれば、いいのではないか。
グビーノの人選を吟味せよ。
当分ルシム行政官が管轄して、その都市に復興に尽力できる人材を選び、
いないなら、そのままルシム行政官が管轄しても問題ないぞ」
「あの、このお方様は?」
鉱夫の1人がルシム行政官に聞く。
「ルッカ軍、総大将のザエン様だ」
「えっ!」
鉱夫達は驚いた。
エルミエ都市で使用する木の樽を囲う円形の鉄輪の生産も言い渡す。
後はルシム行政官に任せて、先を急いだ。
ハルローゼン国境側からソルレマ都市への基幹道路が徐々に完成に近づいていた。
ユフトテ都市まで道路が近づきつつあった。
ユフトテ都市もルッカ領へと基幹道路が完成間近だった。
肝心の温泉場所を確認せずにいたことを思い出したが、失敗。
ユフトテ都市で、コルカ=ミルエとラキノス=ラクゼが迎えた。
あゆみは基幹道路が綺麗に仕上がっていることを褒めた。
ルッカまで道路が完成したら、カルーム国からシュレカ国へ結び基幹道路の話を再度する。
その後は、ユンド国各地の道路整備を専門する一団になると話す。
すべてユンド復興を目指すと話す。
それからソルレマのコルカ=ミルエに都市と後方のグビーノ都市、鉄鉱山の一帯の行政官に任命したことも話す。
あゆみはユフトテ都市の代表コルカ=ミルエに、
ユフトテ都市と陥落したユフランティスを含めた一帯の行政官に任命した。
少し若いラキノス=ラクゼには基幹道路建設の責任者に任命した。
将来ユンドの建設事業の一角になることを話す。
2人は涙を流して、喜んだ。
コルカ=ミルエ行政官には、犯罪などを取り締まる警備隊の人選を任せると。
そして、ユフトテ都市を含め、警備隊の設置を話す。
そのために、軍馬も提供すると。
治安を守る役目で、権力を翳す者は除外で、人選を任すと。
これからはユンド人自身で、新しい地位や肩書きにとらわれない人材をと。
基幹道路建設の責任者ラキノス=ラクゼには、移動型住宅の話をする。
ソルラン国とユンド国の道境を荷馬車4台分の幅で、拡充してほしいと改めて伝える。
ユフトテ行政官になったミルエは、後方の周辺の開墾推進。
基幹道路に沿った宿の話をする。
ソルレマ都市と同様、道路が賑わうと、行き交う者達の宿が必要になると。
その宿を運営するノウハウを学んでほしいと話す。
ソルレマ都市のロアド=ルシム行政官が管轄する鉄鉱山からの鉄製農具の生産、森林を伐採するノコギリなどの木工具も届くことを話す。
イモ栽培、アワ、ヒエ以外に、試行錯誤して、農産物を生産してほしいと話す。
いま、ルッカで試作してもらっている水車という川の水をくむモノを、この川に設置するので、田畑に水が引けるので、農作物の試行錯誤を期待すると話す。
現物が出来たら、設置しに来ると話す。
そして、やっとあゆみらはルッカ領に到着した。
本当に長い帰路になってしまった。
早速、あゆみ隊は温泉施設に向かった。
兵士達の慰労も兼ねて、温泉で心身を洗い流したいと。
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