第98話 ルッカ領へ 1

 ユンド国を崩壊させ、ユンドの復興に向けていくが、いまは一度ルッカ領に戻って、広大なユンド復興支援に向かう。


 ルッカ領から長く延びた兵站4カ所を伝わって、ルッカ軍はそれぞれルッカ領へ帰還を始めた。


 滅亡させたユンド国、その帝都アルソミアから、


 クルル第1大隊は破壊尽くした第4の都市マカドール方面の兵站を辿る。


 ヨシア第2大隊は第2の都市アルドアを陥落させた方面の兵站を辿る。

 

 ロルナ第3大隊は陥落させたクレアムス方面の兵站を。


 アマゾネス隊は第3の都市ソルミからアルモッチ、グルフィとルッカ領ノエノ地区を目指す。

 

 あゆみは百人部隊で荷馬車、改良型弓座、改良型投石機を備えて、ハルローゼン国方面の城門、城壁を破壊した都市エルミエとグビーノを目指す。

 ソルレマ、ユフトテの基幹道路の状況を視察。

 ルッカ領へ戻ることにした。


 ソルレマの後方にあるという温泉も確認したい。

 まだ、あゆみはユンドで埋蔵している鉱石についても、金山2カ所のみ。

 銀鉱山とか鉄鉱山はどの辺あるのかも知らない。


 そして、ユンド復興の1つに、農具がある。

 まだ鍬も木製、鉄製の鎌も存在しない。

 ユンド国内の鉄鉱山から鉄製農具の生産で普及させ、農産物を増産させたいと。

 土地改良もさせたいと。

 ユンド国の作物も果実も布。紙とか未知数。

 ユンド国地域にそれぞれ特産品があるのかも不明と。

 復興になる起爆剤がない。


 あゆみらは4日目に、都市防衛力を削いだエルミエに着いた。

 チェンアルク国と隣接するラカンラ都市を目指したエルミエ民が、都市が廃墟され、多数の死者を出していることを知り、エルミエに戻った者達。

 

 エルミエ民はあゆみらを見ても、殺される覚悟ができていたようだ。

 すでにユンド国が滅亡したことも知っていたようだ。

 荒廃した崩れた城門の前に、エルミエ民の代表と思わしき者が白旗を立てて、座っていた。


「お前達は、これからこの地域の復興する者達だ」


「もう、すでに餓死者が出ているので、死を待つ者達ばかりです」


「戦争は終わった。お前達が先頭に立って、まず耕地を耕すのでは?」


「はぁ、国が滅びて、生きる気力もなくなりました。

 どうぞ、中の者を含め、殺して下さい」


「分かった。

 その者達を外に出せるか?」


「それは無理です。

 餓死寸前です。

 中に入って、動けない者達を好きなだけ殺して下さい。」


「殺しに行く人数は、どれくらいだ?」


「8千人ぐらいいます」


 あゆみは兵士2人に、ソルレマの元執行官ロアド=ルシムに大至急、エルミエの食糧支援の救援を手配するように口頭で走らせる。



 あゆみは白旗を立てた者と一緒に、エルミエ都市に入った。

 路上に寝転ぶ者、家の寝床に寝ている者と敵軍を見ても、恐怖心すら消している。


 あゆみは城内で炊き出しの指示でおかゆの準備をさせる。

 井戸のある広場付近に設置させる。


 匂いを嗅いだ民が何処からか、現れ出た。

 1人1人にゆっくり啜るように指示を出し、

 そして、1人1人に出てこられない者がいるかと聞く。

 寝たまま餓死をこれ以上出したくない。

 

 白旗を立てた者はラルソ=エムレという民の代表らしい。

 その男にもおかゆを啜るように、ゆっくり食べるように指示をだした。

「どうしてか?」


「急に、体の中にご馳走が入ると、胃が痛むのだ」


「どのくらい食べていない?」


「9日ぐらいです」


「どうして、耕作をしない?」


「耕作者も国が滅んで、気力をなくしました」


「お前達に体力を回復させることが先決だな。

 いま、早馬でソルレマに行かせた。

 そちらから食糧支援が届く筈だ。

 もう少しの辛抱だ」


「どうして、敵が・・・・?」


「さっき言ったように、戦争は終わった。

 これから、復興の始まりだ。

 ルッカ軍はお前達を支配しに来たのではない。

 お前達が同胞を奴隷狩りで沢山の者達を、異国へ売り、

 娘達を性奴隷にしたから反撃をしにきたまでだ」


「この都市にも軍部が娘を囲っていると、噂レベルでした。そんな畜生にも劣ることをしていたのですか・・・・」


 エルミエの広場に人だかりになって、おかゆを啜っている。


「これから、お前達には、復興の手出すをしてもらう。

 この周辺の開墾を増やし、自給自足できるまで収穫をあげてもらいたい。

 この国は滅んでも、お前達がいる以上。

 お前達が豊かになれば、いいだけの話だ。

 遠方にソルレマ都市がある。

 そこと道が拡充すれば、それだけ支援物資も、届きやすくなる。

 お前達の生活に貢献できる筈だ」


「あなた様はいったい?」


「ルッカ軍の一兵卒だ」


「誠ですか?」


「お前達が、豊かに暮らすことがルッカの望む所だ」


 おかゆを啜って、元気になった者達に、床で寝ている者、弱り切っている者達に、おかゆを食べさせてやるように指示を出した。


 ラルソ=エムレは涙ぐみながら、あゆみに感謝をした。


 鉄鉱山の場所は知らないか聞いた。

 グビーノとハルローゼン国の山々にあると。


 鉄鉱山で武器を作るのですかと。

 そこで農具を作らせると。

 エムレは驚いた。

 鉄で農具を?

 棒の先に鉄製の農具を付ける。

 木製の農具では生産性が低いと。



 あゆみは民におかゆが行き渡ったので、城外にでた。

 本当は、そのままグビーノ方面に進みたかったが、状況が変わった。

 ソルレマからの食糧支援が来るまで、いることにした。





 3日後に、ソルレマから食糧支援の荷馬車隊が到着した。

 

「ザエン様、本当にありがとうございます。

 同胞を同胞を救って下さり感謝しかありません」

 ルシム元執行官らはあゆみ前で跪き、涙なから礼を述べた。


「ルッカへの帰路の途中で、立ち寄ったのだ。

 余りにも絶望した民を見てしまい。

 本当に、国が滅ぶという衝撃が大きかったようだ。

 しかし、我らは、お主達を支配する気は更々ない。

 お前達のこれからの国造りで、みんなが豊かなになることが、

 ルッカの願いだ」


「本当に、感謝します」


「エルミエの民に食糧支援後、色々ユンドについて聞きたい」


 ルシム元執行官らはエルミエ城内へ食糧を運んだ。


 ハルローゼン国境側にある鉄鉱山について

 鉄製の農具を生産させて、ユンドに普及させること。

 ユンドの作物について、

 ユンドの果実について、

 布、紙、陶器の現状について、

 ソルレマからエルミエまでの道路拡張について、




 ルシム元執行官は都市の支配体制から話した。

 都市の執行官と同等な武官、貴族がいて、都市市民を絶対支配をしていたという。

 その支配体制が崩れたので、民の行き場が失ったようだ。


 ユフトテ都市は例外中の例外で、ほとんど支配体制が確立していたという。


 エルミエ都市の代表がラルソ=エムレになったようで、支配体制から抜け出た都市になったという。


 この地域の作物は、主食が麦栽培、野菜、イモ類とか、

 果実もそれなりの果実があるという。

 ルッカ領と余り変わらないような果実らしい。

 陶器も、それぞれ都市周辺で陶芸釜があると。

 紙も森林地域に生産拠点があると。

 布も帝都だった周辺で盛んだったと。

 家畜も牛やニワトリの飼育場が存在していると。


 銀山はマカドール、アルドア付近にあるとか。

 チェンアルク国境にもう1つ銀山があると。


 鉄鉱山はハルローゼン国境側のグビーノ側にあると。

 都市マルドール前方に鉄鉱山があることを知った。


 温泉はソルレマ金山の後方に湯が湧き出る場所があると。 


 

 あゆみは、エムレ代表に、この果実はなにかと聞いたら、この辺には生育がよいのか、よく実という。


 前世のあゆみは、これは葡萄モドキのモノではないかと、一粒食べてみたら、やはり葡萄の味がした。

 確か、葡萄でワインができるとか・・・・。

 もしかしたら、エルミエ都市の起爆剤になるのではと考える。


 あゆみはエルミエ都市のエムレ代表に、この果実を、地面に描いて、このような作付けはできないかと。

 どうして、ですかと。

 この都市の財政を潤す果実になると話す。

 でも、エムレ代表は半信半疑だ。


 そういえば、この世界、酒というのがあるそうだが、あゆみは飲まないので知らない。

 しかし、目の前の葡萄がワインになることは知っていた。


 あゆみは、地面に大きな桶を描いて、その中に葡萄の実を入れ、葡萄を潰して、潰した汁が出て、それが醗酵して、お酒になると話す。

 でも、エムレは半信半疑でいた。


 あゆみは、葡萄の粒を集めさせた。

 陶磁器の中に葡萄の粒を入れて、上から押して潰した。

 その汁だけを大きめの容器に蓋をした。


 あゆみは葡萄からワインができるのかその原理は解らなかったが、一夜暗い部屋にねかせてみることに。


 翌日、ソルレマの元執行官ルシムやガルル=ソナミと。

 エルミエのエムレ代表らを集まらせて、その葡萄の汁のコップの蓋を開けてみた。

 確かに、アルコールの匂いがした。

 ワインが出来ていた。

 集まった者達に少しづつ飲ませてみた。


 お酒だとみんなが歓喜をあげた。


 これが、お前達エルミエ都市再生の起爆剤になるお酒だと。

 ワインという銘柄のお酒だと。


 このワインを製造して、都市復活の資金源になると。

 そのために、エルミエ都市からソルレマ都市を繋げる基幹道路が完成すれば、隣国ハルローゼン国、ルッカ領、カルーム国と交易で活気ある都市になると話す。

 まだ御伽話に聞こえたらしい。


 そのためにも、ワインの品質の向上をしないといけないと。

 ねかせて、熟して、美味しいワインができると。

 まだこの味は、売る商品には、まだ足りないと。

 しかし、このワインで増産ができたら、ルッカ領でも売る商品になると話す。


 地面に、葡萄の汁から桶のようなモノに入れて,保管すると樽の図柄を描く。

 桶の製造を拡大したモノだと。


 あゆみはエルミエ都市の行政官にラルソ=エムレを任命した。

 エムレは慎みながら、拝命を受けた。

 エルミエ都市を司る人選には、民の目線で立って物事を考える者達を任命しろと。

 都市を警備する人選も、権力志向者ではなく、民の安全維持を心がける人選をせようと。



  あゆみはソルレマの元執行官ルシム、ガルル=ソナミに、

 これからグビーノ都市と鉄鉱山に向かうこと伝える。

 もしかしたら、そこにも食糧支援を要請するかもしれないと。


 ルシムは確かな情報ではないが、グビーノ鉄鉱山にユンド兵がいるらしいことを伝える。

 あゆみはもし鉄鉱山でワイン用葡萄樽に使う、鉄の輪ができれば、ワインをねかせることができると話す。


 そして、鉄鉱山で、鉄製の鍬、スコップ、ツルハシなどの製品ができれば、ユンドの復興になることも話す。


 ルシムは、エルミエ都市にガルル=ソナミを残し、同行できないだろうか懇願する。

 あゆみは、ルシムの同行してくれれば、グビーノ都市に住民がいたら、説得が出来そうで助かることを伝える。

 


 

 

   



 










 

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