第96話 城外で夢の話

 10万人以上にちかい、食糧配給にここ数日、攻撃どころではなかった。 

 予想を越えた城外からの脱出。

 その者達含め、食べ物を心配しなくてならない。


 数日たって、ソルミ都市から大量の食糧・医療班、住民を運ぶ馬車などが到着した。


 ソルミへ移動するにも、体力を回復させる必要があった。


 城外より後方に10万人以上の大人数がいる。 


 帝都の職人達が、ルッカ兵の護衛付きで、

 簡易トイレに利用できそうな資材等を城内から運んで設営した。

 また、簡易建物も数軒建てた。

 井戸も2カ所できた。

 あゆみは、風呂の設営を言いだした。

 城内から、どこかの民家から持ってきた風呂を設営させた。

 一回りの入浴はできないだろうが、ある程度健康を取り戻せると。


 大勢の群衆を見るのは、想像以上の人数に、驚きを隠しきれない。


 元執行官アドエらが改めて、ルッカ軍に感謝した。


 ルッカ兵にも食事ができるようになり、

 やっとルッカ方面からも食糧運送隊が到着した。



 あゆみは都市の話をしてみるかと考えた。

 戦後、ユンドの疲弊した復活の起爆剤にしたい。

 覇権より利益の安定した財政を。

 そうすれば、覇権思想が生まれないのでは。

 ほどほどの軍事力は必要だが、

 過剰過ぎるのは、問題だ。

 道を大幅に広げ、交易の実現すれば、繁栄する拠点の都市を。




 あゆみはソルミ都市の元執行官ラルツ=アドエらに

 帝都の建設に従事していた職人ら、

 帝都の商人ら、

 住民の代表的になっている者らを

 集めたさせた。



 まず、あゆみは職人達に、筒状の図を示した。

「これは、筒状を繋ぐように細工をした陶器だ。

 それを連結して、排水として川から水を引き、この中を通して、どこかの池に流す物だ。

 こういうのは造れるか?」


「なんとか出来そうです」

 職人の1人が言った。


「直線で筒状の連結と、

 横からその筒に繋げる。出っ張りで別の筒を繋げるのも、どうか?」


「確かに、手の込んだ筒ですね」


「ザエン様、これはなんなのでしょうか?」

 アドエ元執行官は聞いた。


「これは、お前達がトイレで用を足した後の、流れていく仕組みの筒だ。


「はぁ・・・。これがその筒ですか?」


「トイレを何カ所か設置し、その下に筒状の排水溝として埋める。

 川から水を引いて、その筒に流すのだ」


 みんなはあっけに取られた。


「汚物をあちこちあると、大変不衛生だ。

 それで、共同トイレと考えた。

 理想は1軒に1つはトイレがほしい。

 現実では難しい。

 そういう技術もほしい1つだ」


「ザエン様、この筒状のトイレを何処に?」



「お主達の、新しい都市を建設しては?」


「いまの都市では駄目なのですか?」



「目の前の道を荷馬車4台分の幅の道路を造ってほしいのだ」


「どうして、ですか?」


「この地域が発展するに、決まっているだろう」


「はぁ・・・・」


「戦争が終われば、国内の流通を敏速にできる。

 また、国同士の交易になる。

 そのため、細い道では、荷馬車の往復もできない。

 だから、大きな道、基幹道路を延ばして、国内の流通の流れ、国同士の交易ができる仕組みを作りたいと考えている」

 


 集まった者達は狐につままれた感じがした。

 ユンド帝国の滅亡の危機で、将来をみすいた発想。

 思いつきにくい。

 まして、敵国からの提案。

 すでに帝都は荒廃して、将来の見込みはない。

 それより、新しい都市か、

 でもその財力はない。

 ユンド人に負担させるのだろう。


「これは、お主達が、これから生きていく第1歩だと思ってもらいたい」


「はぁ?」


「ユンド国には賠償責任を負わせなくならない。

 一方で、ユンドの再建もある。

 ユンドの伝統とか以前の問題だ。

 ユンド滅亡後、お前達が二度と戦争しないよう、各国と友好にできるよう、覇権主義の思想を無くしたい。

 そのために、豊かな都市、

 交易で発展する都市。

 みんなが平等に暮らせる世の中をしてほしくないか?

 継承した権力ではなく、ただの一般人達が、暮らせる社会を。

 理想に近いが、みんなが豊かになる生活ができると思うが」

 


 あゆみは次に都市図を描いてみせた。

 これがお主達の、新しい都市図だ。

 ただの道を横荷馬車4台分の幅の道路建設する。

 その周辺に、都市を造るのだ。

 基幹道路が完成すると、他国、国内との流通がより進歩する。

 その為の第一歩だ。

 大動脈の基幹道路の沿線上が、発展する都市ができる。


 そのために、都市は下水問題の解決が必要だ。

 川から流れを筒に流す、そこに汚物を流れる。

 どこか1カ所に汚物の池とかに流す。

 汚物が、農作物の肥やしに利用できるので、有効活用だ。

 下水道、上下水道ができるば、理想だが、

 せめて、下水だけでも、伝染病から衛生な都市をと考える。


「基幹道路を建設するのですか?」


「いま、現にユンド人達がハルローゼン国からルッカに繋げる基幹道路を建設している。

 それが終えれば、カムール国とシュレカ国との基幹道路を進める」


「そんな大規模な道路を・・・・」

 商人の1人が驚く。


「だから、いままの都市では、防御によいかもしれないが、都市の発展には阻害する」


「だから、こんな大人数の新しい都市を建設を提案しているのだ」



「はあ」


「基幹道路に新たな都市を建築してほしいのだ。

 どうじゃ、無理か」


「これほど、大規模な道路建設となると・・・・」


「労働力は、向こうの大勢いるではないか。

 作業した者に、食事や衣類が用意される。

 住まいは、当分我慢だな。

 食糧はソルミ都市とか周辺から提供できないか。

 勿論、耕作面機も拡大してほしい。

 利益は耕作者だけではなく、平等に配分してほしいが」



「都市ソルミから離れた基幹道路脇に都市を建設しては?」



「ザエン様、そうですね。

 現実的だと、食糧支援。衣服の提供。住居の仮住まいの提供が出来そうです」


「そうか、お主達の発展の場所だ」



「ユフトテが近ければ、人材を派遣させられるが、遠いからな・・・」


「その者達はいかほどで?」


「ユンド人1万人で作業を実施している」

 あゆみは嬉しそうに話す。


「へぇ。そんなに大人数ですか」


「どのようの仕組みですか」


「作業服を着させている。

 その者達に食糧・衣服を提供、

 作業につかない者にも食糧支援をしている」


「そんなに恩恵があるのですね」


「国家間の道路建設が始まると、ユフトテから離れるので、組み立て式の作業員の住居の考案をルッカへ依頼している。

 実現すれば、移動式建設作業員の住まいと、道路が捗る」


 もうあゆみの発想についてける者はいない。

 ただ呆然としていた。


 でも実際の都市建設の基盤は理解されたので、あゆみは満足した。




 あゆみは、貴族地区へ出向いているが、どうも豪邸風の住居は空き家が多い。

 それでいて、下級貴族の住居か?

 そいつらは、世を忍んでいるようにひっそり息を殺しているようだ。


 どうも弱い者イジメで惨殺している。

 なんとも余韻の悪いここ数日感じていた。

 このままこいつら、皆殺しで血吹雪を楽しむか。

 一方的な殺戮が、どうもここのところ、違和感が湧いている。

 こいつらを殺さず、活かす方法はあるのか。

 貴族の価値はあるのか。

 せいぜい社交儀礼時の貴族風か?


 しかし、下級貴族なら、プライドもそれほど高い意識はないのでは?

 もし、有能な人材が、復興時の人材を考えると、

 あゆみにはどうみても無理だ。

 広大なユンドの大地を、どうする。

 やはり人材は必要だ。

 

 食糧増産の推進

 新たな都市移住で、破壊された旧都市からの移住。

 街道整備と都市開発、いまは食べる食糧確保が優先だが。

 将来の展望も必要だ。



 あゆみは

 ソルミ都市のアルドラ元執行官らに、

 下級貴族らを惨殺せず、身柄を拘束したら、その者達を運ぶ、最低限の家財道具を乗せてる荷馬車を確保できるか聞いた。

 アルドラら達は、1人でも命が助かれば、喜んで荷馬車を、グルフィやアルモッチからも協力を願いますと述べた。


 10万人以上の移動。

 新たに貴族地区から、文官地区からの身柄拘束で、どれぐらいになるか推定できないが、復興のため、殺さず活かす方向ができた。


 




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る