第95話 ユンド帝都包囲 4
兵站からの食糧供給を、首を長くして待っていた。
帝都民の食糧事情は思った以上に悲惨だった。
ほとんど帝都に逃げ込んだ難民への食糧支援もなし、住居の手配もなし、
路上暮らしをさせられたとか。
帝都民も、段々食糧事情が悪化すると、緊迫感が生まれた。
大勢の兵士達が荷台で商人の備蓄倉庫を荒らし強奪していく事態があちこちで見られたとか。
兵士らの籠城に備えて、民から奪えるモノは奪えというらしい。
一般住民への食べ物の食を絶たれてしまったらしい。
ルッカ軍の帝都への攻撃。
最初は腐乱し出した胴体の投下があった。
あちこちで悲鳴が聞こえ、損害は住民地区らしい。
被害は微々たるモノで、一時精神がヤンだ程度だった。
ルッカ軍の攻撃一波の後、
夜に紛れて、ミシェ国へ目指す帝都民が城門から大勢が脱出した。
成功したかと思った。
城門から離れた先で、全員が殺されたらしい。
今度は胴体以外に頭部が貴族地区、軍部地域の居住区画に落ちてきて、大騒ぎになった。
城門の1カ所がルッカ軍に壊された。
野蛮人のルッカ兵が襲ってくるのかと恐怖した。
そのうち、軍官地域や貴族地域に突撃隊が乱入し、何軒か皆殺しにされた。
軍官地域でも沢山の武官が命を失った。
道路上に多数の遺体が放置された状態があちこちで見られた。
炸裂爆弾も行政区画・中央区画へと建物を破壊され始めた。
いよいよ本隊の突撃が開始されるのかと心配でいた。
ソルミ都市の執行官と名乗る者が城内に入ってきた。
裏切り者かと、住民らは取り囲んだらしい。
帝都とともに継承した技術を失いたくなので、城外に出てほしいと言ったらしい。
じゃ、一般住民はどうでもいいのかと。
いまは、少しでもユンド人を残したい、精一杯の譲歩を願って実現させたのだと。
なんだ、手先か。
でも住民らは、反抗すらしなかったようだ。
餓えの一歩手前らしい。
生きる望みのない者達ばかりなのだ。
帝都が滅亡すれば、その道連れでしかない存在価値のない者達だ。
そいつらは、住民地区、商人地区、職人地区を回っていったらしい。
どこまで、こいつらを信用するかだが、時間制限がかかっているのか、
必死の形相で道を駆け走った。
中には殴られた者もいたらしい。
知らない者が、お前達は貴重な人材だから、城外へ出ろといっても、詐欺まがりではないのか。
信用する方が馬鹿だ。
ソルミの執行官らの説得で、5千人近くが、城外へ出る準備をし出した。
着の身着のままの者はその場で待機。
タンカーで運ばれる者。
荷台に乗せられた者達。
荷馬車で来た者と、
よくもあいつらに,騙されるな。
殺されにいくとも知らずだ。
まあ、自業自得だ。
執行官らが先頭に、城外へ出た。
出て行く民の顔、もう死顔している。
行くのも地獄、引くのも地獄か。
殺されていくのかと、楽しみに見ていた。
しかし、そうではなかった。
はやく、殺せ!
蛮族軍と距離を取って、対峙していた。
このまま惨殺されるのかと、期待した。
何をしている。
殺すのでは、
早く殺して、すっきりさせろ!。
でも違った。
何を血迷ったのか、
蛮族が食事の準備をし出した。
これには、心底驚いた。
知能の低い蛮族だから、行動と言動が逆さまなのか。
大量の鍋が並べられ、こっちにも美味しそうな匂いが。
あまり美味しそうな感じがしない匂いがしてきた。
その不味い匂いに釣られたか、
阿呆な帝都民らが、怒濤の勢いで城外へ出て行ってしまった。
盾になる住民らが飛び出てしまったのだ。
裏切り者めら。
ほぼ全員でたようだ。
こんなにも、ウジ虫がいたとは驚きの数だ。
これなら、そのまま蛮族を襲えば、幾ばくか帝都の役に立てるぞ。
しかし、なんだか、その者の代表らしきモノに、懇願している姿を見れた。
なにをやっている、殺されるため、城外にでたのに、命乞いか、呆れる愚民!。
城内のどこかから湧いて出たように城兵らが集まった。
よく怪我なく、生きていた者だ。
どうやら、城外に出た裏切り者らを矢で射らしい。
さぁ、さっさと1人でも多く殺せ!。
裏切り者など射って殺せ!。
そしたら、蛮族から大きな矢が飛んで、兵士を串刺しにした。
初めて見た、人間の串刺しを、本当に連なるものなのだな。
蛮族らは斬り込んで、城門付近で乱戦になった。
蛮族らしい、人殺しに慣れてるのか、次々に兵士が死んでいく。
1人、目立つ者がいる。
楽しんで殺しているようだ。
この世に、喜びながら人を殺していくものなのか。
目を擦って見たが、確かに、嬉しそうに楽しんでいるように見えた。
勇敢なユンド兵が戦死した。
敬意を示すべきだ。
蛮族兵らは、死体から衣服を剥ぎ、遺体を胴体だけに解体。
初めて人間を解体する者がいる存在を見た。
胴体と頭部を回収し、武器なども奪っていった。
その周到さ、作業が早い、手際がよすぎる。
日頃からなのか、手慣れている。
そうか、盗賊の集団か。
一般帝都民のほとんどが城外にでてしまった。
その後始末か、攻撃はなかった。
あいつらの食べ物はどうするのか。
飢えた、死ぬ以外役に立たない者達に、施しは無用だ。
さっさと殺してしまえ!。
蛮族らの食い扶持を、死ぬはずの帝都民に与えだと、信じられない。
そのおかげか、蛮族兵の乱入はなかった。
盾になる住民が逃亡したので、中央区画へ蛮族の突撃がありそうだ。
名だたる名門貴族らは早くから帝都を離れた。
チェンアルク国か
ミシェ国か
ベロニア国へ悠々に避暑へ行くような出で立ちでむかった。
行ったきり、戻ってこない。
華々しい貴族街が、一日一日、1時間1時間と過ぎると、立派な邸宅の人影が忽然消えた。
帝都アルソミアの人口20万程だったのが、その半分以下に、難民だけ溢れた不潔な住民地区になった。
推定だと浮浪者ら13万人以上らしい。
軍官らが厳しく禁止区域を設けて、汚らしい難民風情を見なくて済んでいた。
蛮族の食糧不足か、ここ数日、胴体や頭部の投下があったが、突撃がない。
蛮族も腹が減るのか。
蛮族は元々脳が小さいので、知恵がないのだろう。
自分らの食事まで、ウジ虫に食わせているのか。
皇帝はなにを、考えいているのか。
攻撃のチャンスではないか。
腹減り蛮族を殲滅する機会を逃すのか。
そんな中、ここ何軒か、惨殺が起きている。
どうも少数の者らしい。
この帝都に忍び込んで、殺人を犯す、やはり蛮族は凶暴で、常識の範囲外だ。
皇帝ゼルゾ=クレミアは皇妃や皇女も避難先チェンアルクへいってしまい、
1人部屋で黄昏れていた。
誰もいない部屋で、泣き崩れている。
決して表に出せない顔。
徐々に死という恐怖がいつ襲ってくるかという不安。
栄華を極めた軍団・繁栄の帝都と輝かしい痕跡を残せないでいる。
ユンド軍に対抗しうる軍団が存在するとは、信じられなかった。
圧倒的なユンド軍がイトも簡単に潰散された。
聞くところ、兵は多くないという。
ただし、城塞を破壊できる武器があると。
遠方より投石機といかいうので、投石するらしい。
それが現実、帝都に胴体とか頭部が落とされ、炸裂する爆弾とかで大音響になった。
これほどの威力ある兵器を所有する軍団に、立ち向かうスデはないのか。
帝都民を盾のという結果。
帝都民・難民らが城外で出て行ってしまった。
威厳を張っていた時、臣下が避難すべきという言葉を信じたら、他国へ生き延びられたかもしれない。
虚勢を張り過ぎた結果か。
皇宮の静寂が漂い、人の気配すらしない。
いまは我が身なのだろう。
帝都の盾になる筈の民も難民が帝都から出て、ここ数日、攻撃が止んでいる。
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