第94話 ユンド帝都包囲 3

 早朝からアマゾネス隊の陣営に、

 ソルミ都市の元執行官ラルツ=アドエらが尋ねてきていた。

 用向きだと、ユンド復興に、人材を救いたいと願い出てきた。

 アドエらは道路の拡張工事、建物の建築技術、装飾技術など職人を失いたくないと。

 今後、ユンドの地の復興を、どうか人材を継承させる為に、生かして欲しいと。

 虫のいい話と一喝するも。

 指導者にお役に立つ人材ですと訴える。

 どうか、指導者にお伝え願いたいと。


 まだ攻撃をしていないが、

 モエカ隊長はアドエだけを連れて、あゆみの陣営に向かった。



 アドエは初めてみる投石機や大型弓座などを見て、驚いた。

 現実に存在する大きな飛び道具に感嘆した。


 ルッカ兵の顔も、ユンド兵と違って、士気の高さ、緊張感が伝わる。


 モエカ隊長はあゆみに面会を求めた。


「隊長、どうした?」


「はい、実は・・・・・」



「構わん。申せ、モエカ」


「この者は、ソルミの元執行官アドエですが、

 どうしても、帝都民からユンド復興の人材の命乞いにきました」


「ほぅ、生かすのに必要な人材か?」


「道路拡張工事、建築技術、装飾職人など、失いたくない人材だと申しています」


「なるほど、お主が元執行官か」


「初めて、お目通り・・・・」


「そんな堅苦しい挨拶は無用だ。

 用件を申せ」


「ユンドの復興に是非、人材の残してほしいのです。

 決してユンドではなく、ルッカ領にも有益な人材です。

 金硬貨のお役にも立てます。

 金山もユフトテと同量の金が産出しますので、お役にたてます。

 是非、人材の命を助けてほしいのです」


「ソルレマの元執行官ルシムを知っているか?」


「はい、帝都に滞在時には会うようにしていました」


「成る程。それで、どう帝都の人材を城外に出す?」


「出来れば、攻撃前に、私どもが、帝都に入って、できる限りの人材を集めるようにします。

 どうか、その間、攻撃を中止して頂ければ、本当に助かります」


「分かった。

 モエカ隊長も直々のことだろう。

 1時間で、集められるか?」


「できるだけ時間内で、集めたいです。

 本当に、感謝しかありません」


「礼を申すなら、

 アマゾネス隊に礼を言うんだな」

 あゆみは嬉しそうに、モエカを見る。


「ザエン様、本当に、感謝します。

 復興の人材、その命を活用させて頂きます」


「猶予は1時間。

 出てくるまで、周辺を厳重に戦闘準備をせよ」

 あゆみは、ここにいる者達に伝える。



「隊長、本当にありがとうございます。

 ザエン様にもお会いもでき、

 本当に、嬉しいです」

 元執行官ミルエは泣いた。


 

 アマゾネス隊の陣中に戻り、

 元執行官ラルツ=アドエら15人は、急いで、城内へ入った。



 あゆみも高い技術力を持った職人らを失うのはと考えていた。

 城壁の岩を、道路の素材に活用したいし、広大なユンドの管理をどうするかと。

 信頼できる人材がほしいのだ。

 ユンド人から兵士を募ることは最初からないが、職人はほしい。

 ソルミ金山も手に入って、益々硬貨の量産が軌道に乗る。

 アマゾネス隊の攻略中でも、復興の人材を見極めていたとに、感心する。

 そうすると、

 アマゾネス隊がルッカ領ノエノからシュレカ国境・ベロニア国境の領域管轄とか。

 どうかなとあゆみは考える。


 いまあゆみが一番望むのは、湯に浸かりたいのだ。

 城内に入ったら、どこかの邸宅で湯殿で浸かるかとも考える。



 あゆみはあれこれ考えている間。

 

 城外へ、さっきの元執行官らを先頭に、住民達が出てきた。

 みんな、恐怖の顔、痩せこけ、怪我人も多い。

 荷台に乗せられた者。

 担架で運ばれた者。

 みなが、絶望と恐怖で震えている者も多い。

 およそ6千人だろうか。

 荷馬車でくる者もいる。


 明らかに職人には見えない者も多い。


 モエカ隊長が聞くと。

 この者達は、まっとうな商いをしている信用できる者達だという。

 将来、この地にも流通経済を浸透する時、商いの連中が活動し、地域の発展に欠かせない人材だという。

 決して奴隷に加担した者達ではないと断言した。



 

 城外から一定の距離を取って、後方にその集団ができた。

 着の身着のままの姿。

 幾ばくかの家財を持ち込んだ者。

 これから殺戮されるのかという不安顔。


 あゆみも来ていた。

 外の隊長格も集まった。



 元ソルミ執行官ラルツ=アドエら

 帝都の職人の一部。 

 商人らしい一部。

 行政官らしい一部。

らはあゆみ達の前に膝をついた。


「本当に、命をお救い、ありがとうございます」

 代表してアドエが述べる。


「本来なら、ソルラン人を奴隷狩りで繁栄した帝都。

 その恩恵を受けた者達を生かすつもりはなかった。

 だが、ユンドの復興に必要な人材。

 確かに、広大なユンドに不足している人材は必要だ。

 ただし、二度と、奴隷狩り三昧させないため、お前達には、従属契約をする。

 それを拒む者は、城門へ向かえ。

 帝都と共に、命を全うするのも、お主達の自由だ」


 城内へ戻る者はいなかった。

 あゆみは、集団に従属契約を結んだ。

 上空に、大きな円状が浮かび、消滅して、完了した。



 あゆみは、この集団に、食事を振る舞うことにした。

 帝都で殺人遊戯を実行し、一方で食事を振る舞ういう矛盾。



 毒入りの食事かと、集団は思ったろう。

 最初にアドエらがありがたそうに、与えられた食事を食した。

 それで、安心して、一同飢えた体に温かさを与えた。



 あゆみは、今日の攻撃を中止させた。


 クルル第1隊長はソルミ元執行官アドエに、

 どうして、第4の都市マカドールは玉砕の道を歩んだか聞いた。


 アドエは、執行官が奴隷狩りの片棒を担いでいたこと。

 軍部との深い繋がりがりがあって、

 徹底抗戦を都市防衛にさせたので、都市民らは反抗できず、本当に残念な結末になったと嘆いた。



 あゆみは商人の一団に、金硬貨を見せた。

 商人らは不思議そうに、その硬貨というモノを眺めていた。


「ザエン様。もしや硬貨というモノですか?」

 アドエの顔が興奮気味。


「ああ、その金硬貨だ」

 あゆみは硬貨を渡してみた。

 アドエは表裏に模様が綺麗なのに、興味をだした。


「この硬貨と同等の硬貨を作成できると存じます。

 素晴らしい硬貨です!」


「これは、何に?」 

 1人の商人がアドエに聞いた。


「この硬貨は、ザエン様がソルラン国で使用している。

 砂金に変わる物々交換の現物だ。

 この硬貨で、同等な商品と交換する硬貨。

 本当に、実物を見られて、本当に嬉しいです」


 あゆみは嬉しそう、これほど硬貨の価値を評価した人物は初めてだった。





 城内遠方より、この情景を見ていた者達が、城外にナダレをうって出てきた。


 あゆみは攻撃をさせなかった。


 さすがに飢えに耐えている帝都民は殺せないと。



 アドエらは先に出てきた職人や商人達らと一線を引かせた。



「お前達は、降伏するのか?」

 アマゾネス隊のモエカ隊長が響く声で言う。


「生き地獄は辛いです。

 どうか、お助けを、

 ここ、数日間、水も何も食べていません。

 殺されるにしても、それからにして頂けないでしょうか」

 代表した者が膝を折って、懇願する。



 確かに、見る者ほとんどが、ここ数日間近くは食についていないのだろう。

 そう、あゆみは違和感があった。

 城内で殺戮をしても、あっけない最後。

 無力にちかい抵抗のなさ。

 餓えの一歩手前だったのか?


 だが中央地区には飢えたような者はいなかった気がする。

 そうすると、行政区域や軍官区域、貴族区域には住民らを立ち入らせず。

 帝都民と隔絶させたのか。

 食糧も自分ら区域で自由にとか。


「大将、これじゃ・・・・

 弱い相手に、攻撃は・・・

 余りにも・・・・・・」

 

「クルル隊長、分かったから」

 あゆみはクルルの肩を軽く叩く。


「これだけの大人数、どうしたものか、

 まず、飢えた者達に、食べさせて、殺すか、どうか決めないとな」


「えっ、大将・・・・」



 10万以上に近い帝都民や難民らか。



 城門から矢で射ようとする兵士らしき一団。


 あゆみはとっさに大型弓座の移動をかえて、その方向へ射った。


 あゆみの射った先には、兵士ら百人以上がいた。


 異変に気づいたルッカ兵は、その方向へ斬り込んだ。


 双方で激闘が開始。

 あゆみも参戦。

 どこにこれほどの兵を潜んでいたのか、感心する。


 帝都民らも、自分らを殺しにきたと気付いた。


 アマゾネス隊も参戦して、激闘は続く。

 

 あゆみは遠慮のいらない殺戮三昧を楽しむ。

 もちろん、アマゾネス隊への分も心得ている。

 できる限り半殺しにしてある。


 5千人ちかいユンド兵が、投石機の素材に活用される。

 戦利品も奪い、解体作業にルッカ兵はいそしむ。



 一方で膨大な食糧を供給しなくてならない。

 果たして10万人分の食事をさせらるのか、考える。

 

 ソルミ都市から、緊急に食糧準備をすると、都市へ急行した。

 アドエ元執行官は、この者達をソルミ都市へ一時避難させたいと申し出た。

 あゆみ自身も、その申し出をうれしく感じる。


 いまは、大勢の胃袋を満たす食事をさせないと。


 ルッカ兵含め、暫く食事制限をさせるほかない。

 でも兵士達は、この現状をみて、不満はなかった。

 そう、あゆみ自身も、兵士らと同等なので、自身も食事制限をした。

 もともと前世で、昼飯抜きもあった。


 攻撃どころでないので、攻撃中止して、ほっとした。


 でも貴重な素材が新たにできたので、胴体と頭部の投石機からの攻撃ができる。



 あゆみは帝都の人口は20万ほど、

 難民15万人ぐらいと、

 しかし、それほど帝都の人口は多くないのではないかと考える。

 一般帝都民を盾に引いていた。

 思った以上の人口増加でもなかったのか。

 すでに帝都から退避した人口が多かったのかと。


 ルッカ町に食糧要請の早馬を出させた。


 兵站部隊からの食糧らは、今日我慢すれば、なんとか凌げるか?。


 ルッカ兵の昼飯・夕飯なしになった。

 でも兵士達からは不満はなかった。


 一方でルッカ兵士らは、住民らへの食事の手伝いに駆り出された。


「大将、おもったほど、帝都は堅固でないのでは。

 まだ、どこかに兵士を隠しているかしりませんが、

 ほど、皇宮以外は詰んだのでは?」

 

「そうだな。明日は、中央地域を荒らし、宮廷の周辺を包囲出来るかも知れないな」


 あゆみは、おもった程、陥落はちかいのかなと考える。



 10万人以上の帝都民や難民?

 その中に、兵士らも紛れ込んでいるのでは?

 すべてが普通の民か?

 

 あゆみは群衆に従属契約を発動した。

 上空に、巨大な大円径が描かれ、消滅して、契約はなった。



「この者の中に、住民になりを潜んだ兵士ら軍人関係者らは出ろ!」


 本人の意識とに関わらず、あゆみの前に出さされる。

 自然に足が動くのだ。

 確かに前に出た者達は、痩せていない。

 腰に剣らしきのが見られる。

 行政官らしい者もいる。

 2千人ちかく前に出た。


「お前達は、ソルラン人を奴隷狩りにして、他国へ売った片棒を担いだ共犯者だ。

 一般人に、難民になりすまして、逃げおおせると思ったか?」


「兵士がすべて、奴隷狩りに関わった者ばかりではありません。

 街の治安や警備もしています。

 奴隷狩りに、関わっていません」

 1人の兵士が言う。


「私は、ただの行政の仕事をしていたものです。

 奴隷に関わっていません」


「いいワケだな」


「それでは」


「お前達の従属契約は解除する」

 あゆみは、前に出た者達の契約を解除した。




 何人かが、あゆみ目掛けて、斬り込んできた。

 あゆみはその者達を斬り殺した。


 その合図で、2千人程の者達と殺し合いになった。


 すべて殺した。





 この日、ルッカ軍の備蓄も含め、すべて食糧を出した。



 2食抜きのルッカ兵は明るく助かる。


 

 


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