第88話 ソルラン国
ソルラン国王主催の国際会議の通知を各国に出して、久しい。
各国からの宮殿への返答が届いていない。
毎日毎日、国王は色よい返事が来るのを期待していた。
カムール国
クロエール国
アゲルゾ国
シュレカ国
とソルラン国を囲む、ユンド国を除いた国々に開催出席の有無を出した。
最初に欠席通知が届いたのはカムール国だった。
次にシュレカ国から欠席通知が届いた。
国王は憤慨した。
その都度、通知を踏み潰した。
国王の王妃の実家クロエール国からも言い訳文面で欠席が届いた。
さすがに、通知文を踏みつけるわけにいかぬ自制があったようだ。
最後に、アゲルゾ国からの欠席文書が届き。
さすがに国王はしょぼくれた。
威厳から自尊心が茫とになった。
そんな状況の中に、次から次へと、蛮族ルッカと称する集団がユンド国を浸食し続けたという、遅れた情報が流れてくる。
ミシア領から、その情報が商人達によって、噂レベルで入ってきた。
しかし、ユンド国の3分2をルッカ軍が奪ったとは流れてきていない。
国王の落胆より王都に暗さが増す。
ミシア領方面からの食糧量の取引が減ったのだ。
各領からも搬入はあるが、
ミシア領方面の麦にしても、味が違うとか、
野菜の質もよいとかで、大評判だったのが、減ったのだ。
燃料に使用していた炭の出荷も減って、燃料不足に陥った。
王都に限らず、外の領地にも影響が大きかった。
どうしたら同様な商品が炭はできるのかという発想がない。
模倣品ができないのだ。
ルッカ領地域も木を伐採した地域に、苗を植えて、管理された木の育成中だ。
ミシア領方面からの食材が、外の領からの食材と比較すると。
その代わりに、代替え品があるが、一度味わった味に劣るので、ルッカ領産の産物だけが高騰しだした。
一向に王都からミシア領側への輸出はほぼゼロに近い。
商人も王都の商品をミシア領方面には売れないことは承知の事実になっている。
物々交換の主流だった流通もルッカ産の硬貨が基準になりつつあって、誰しもルッカ産硬貨を手にしだした。
砂金の価値が下がり、金硬貨の同量でも、硬貨の方が高根だった。
商人達は砂金の取引を拒み始めた。
旧ミシア領の商人の町ユエルの繁栄は凄まじく。
賑わいは王都より上と言われるほど、活気ある町になった。
売春宿も店が増えて盛況を賑わし、宿泊室も増えた。
ルッカ町方面から、出店が出来て、衣服屋、紙屋、炭屋。鍛冶屋、食糧屋と競うように並んだ。
砂金とルッカ産金貨と交換する両替モドキを旧ミシア領館内(ミシア行政庁)にできた。
交換時、少量の砂金から差し引かれたが、好評のようだ。その砂金がルッカ町へ運ばれる。
最近、正方形の形の布に、周囲を刺繍したハンカチという布が人気になった。
ハンカチも色取り取りの花柄もあって、商人達の売れ筋にもなっている。
ミシア領後方のルッカ町に向かうルッカ街道には、宿屋も建ち並び、その周辺に居酒屋風の店もできつつつある。
そう、ソルラン国王都への商いをしなくても、特にカルーム国との取引に活路を見出しているようだ。
王都で噂が流れ、いまカルーム国とシュレカ国とを結ぶ横断道路が建設中とか、信じられない話が広まる。
その街道には王都を通らないという。
王都の存在価値がないということか。
どこが、道路建設するだけの財力があるんだ。
ソルラン国はどうなるんだ。
また別の噂も広がった。
ハルローゼン国からユンド国経由でルッカ領の本拠地ルッカ町と街道計画があるという。
王都に通らず、大動脈を目指しているという。
基幹道路が貫通すれば、王都は遠方で、存在価値がなくなる。
そういう噂をばら撒かさせて、ホルダ領への人口流入を流したりした。
すでに脅威だったユンド国領域は、ずっと後方の位置で、奴隷狩りに合うことはないという噂も広まった。
ノエノ領からホンダ領から逃れた領民が戻りつつある現象が起きてきた。
ルッカ領の支配領域で農産物の質も量も向上しつつ。
周辺領の作付けと大きな開きができた。
相変わらず、ルッカ領へ周辺領の領民がナダレ続け、衰退領主になりつつあった。
それだけ領辺周囲には脅威でしかない。
ルッカ領を境とする耕作地が荒れ、耕作放棄地が増大した。
ルッカ兵も領内を巡回しているので、耕作放棄地をルッカ領に組み入れる立て看板などで、表示などをしている。
領主にとっては溜まったモノではないが、現に耕作する領民がいないのだ。
ルッカ領に3方向から挟み込まれたクレミン領は3分の1をルッカ領に奪われた。
カムール国とルッカ町との交易は順調に拡大し、商人が行き交うようになった。
まだルッカには商人という職業が生まれていない。
レクレンの采配にかかっている。
どうにか商人を育てたい願望は強いが、その人材にまだ見当たらない。
レクレイン街道から隣国ガルミ領への街道整備は、ガルミ領側の人員不足で、遅れ気味。
一方、ハルローゼン国からユンド国経由のレクレン街道への直結道路は進んでいる。
ルッカ領ユンド自治区になったソルレマ都市からの金装飾品の見本が届くようになり、絵柄を描いて、宝石と共に送り返すこともある。
レクレンも広大なユンドの地域を管轄する人材が見つからないでいる。
兵器に研究熱心な若者がいるが、経理・運営・商人には。
ルッカ領ミシア地区のミシア行政所内両替とルッカ町の2カ所で、砂金と金貨の取引があるので、砂金がルッカ町に集まる。
レクレンが一番の楽しみは、ハルローゼン国へ行けることだ。
あゆみがその道を切り開いてくれた。
途中に宿屋も建設中とか。
本当に楽しみ。
あゆみもレクレンの里帰りには50人ほどつけて行かせるようだ。
奪った立派な貴馬車があるので、利用させたいらしい。
ドンドン兵站が延びて、ユンド国中枢にまで延びている。
この広大なユンドを、どう管理していくか。
ユンド人とソルラン人との融合は考えられない。
ザエン様はどうするつもりかと。
レクレンは心配する。
まさか、
あゆみが攻略中のアルドア都市で、殺人遊戯三昧をしているとは夢にも思っていない。
絶対に。
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