第9話 アジトの名前を考えるか

 アジトに戻ると、樹木を伐採する道具。

 農地を耕作する器具。

 あゆみ考案した弓と矢の量産。

 

 柵もだいぶ頑丈にできている。

 

「お頭、お帰りなさい」

 クルルは迎えた。

「門もできて、町らしく見えるぞ」

 クルルは嬉しそうだ。

「そこの連中が、新たな手下ですか」

「ああ、元ロルナの手下らだ」

 クルルの元手下に、寝床を案内させる。



 あゆみは手先の器用な者を呼び、

 織物を織った経験者に、機械の形状を説明させ、

 紙すきの経験ある者にも、紙すきの器具を説明させた。

 できるのが楽しみだ。  

 女らは、布の原材料と紙の原材料を探しに出た。


 まだ、町とは呼べない砦から少し離れた場所に、陶芸釜もどきを作らせる。


 ロルナから持ってきたイモを、農家の方と、こちらでも耕作を試みる。


「頭、この場所に名前があると、これから便利だと思うのですが」

 珍しくクルルは、よいことを言った。

「そう、頭、是非、必要です」

 ヨシアも賛同する。

 ゼルシア領内に、新たな地名の出現か。

 いずれ争いごとを覚悟しなくては。


 元頭3人と元商人娘1人と交えて、広場で話をした。

「まだ、産毛程度の規模だぞ、名前は必要か」

「この街道は、山賊の縄張りだったので、住民が暮らせる場所があると安心します」

 レクレンも賛同する。

「ううん、名前ね・・・・・・」

 あゆみは全く浮かばない。

「ザエン様、ルッカという名は如何でしょうか」

「レクレン、意味はあるのか?」

「ハルローゼンでは、希望という意味です」

 ルッカ・・・・ルッカ

「悪くない、ルッカで決まりだ」


 昼飯は獣を3匹狩らせた肉料理。

 ロルナ元手下達は歓喜をあげた。


 全員が集まった所で、この地の名前を伝える。

「ルッカか、いいですね」

 好評のようだ。

「最初、100人規模を目指そうと考えている」

 次に、あゆみは、

 元3頭に、それぞれ10人隊を編成させ、その隊長に任命。

 レクレンを財政担当に、

 織物を織る職人の育成。

 紙すきの職人の育成。

 陶器の職人の育成。

 鍛冶屋職人の育成。

 非常食となるイモの栽培。

 麦の耕作面積の拡大。

と希望を述べた。

 だれも反対意見はない。


「隊長達には、元手下ではなく、兵士として訓練させる方向だ。人選は元手下から選べ」

「鍛冶職人に、新たな武器の作成で、より自衛力の向上を目指す」

 周辺の開拓をヨシア農家連中に任せる。

 狩猟は、主にクルルの元手下連中に。

 ロルナ元手下連中には、家の建設や周辺の道路の整備をさせる。

 ロルナ元手下の女3人にも、家事手伝い、雑用を、先輩達の指示に従わせる。


 徐々にでは、ルッカという地名に相応しく、拡大できればと思考する。


 磁器の釜が成功すれば、飲料水や下水道に筒を連結させて、衛生状態が向上する。

 泥道も整備できれば、荷馬車も通行しやすい。


 あゆみは、こんな感情を持ったこともない。

 前世は希望のない日々だった。

 いまは、手下達に、希望を伝え、

 山賊のアジトから、町の展望を考える。

  

 


 




 

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