9:ミシュナ、拳が理解できず

魔剣を展示した港町を襲った騒動は、半日で鎮静化した。

霧が晴れ、魔傘に包まれた剣を抱えたミシュナは、別行動を取っていたキリウスを救出し帰還。ユイたちと合流した。

しかし、どうやって魔剣の呪いを鎮静化させたかは、合流した他メンバーが問いただしても頑なに喋らなかった。

ただ、一言。

「語彙力ないんだぁ……」

そう気の抜けた言葉のみこぼした。途中に合流したアヌベスに問うても、有力な証言は得られなかった。

それはそうだ。

キリウスは魔剣に当たるか当たらないかの位置へ、ひたすら見事なまでの美しい正拳突きを繰り出し。

アヌベスはポカンと口を開け続けていた。

ミシュナにはそうとしか認識できなかった。


当人曰く、魂を込めた一撃。これを繰り出す度にいやな気配は徐々に消えていき、魂を込めた突きを繰り出す度に、魔剣から何か剥がれ落ちるような音――否、感がミシュナにはしたらしい。

「……根性でどうにかしたよあいつ…、何なんだろう魔法って…………本当に」


帰路につく頃には、あれほど豪快な笑顔で古き異形を殴り飛ばしたキリウスはいつもの仏頂面に戻り、ミシュナが何を聞いてものらりくらりと話を躱され、肝心なことはわからずじまいだった。


                                  ~完?~

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