第14話 嬉しい報告
<side月坂蓮>
「すぐにお薬をお届けします」
そう言ってイシュメルさんは寝室を出て行った。
寝室の扉がパタンと閉まった途端、ルーファスさんの大きな身体に抱き込まれた。
「レンっ! ここに残ると言ってくれてありがとう! 私は本当に嬉しかった」
「僕も……ルーファスさんの気持ちを知れて嬉しかったです」
「レンを絶対に不幸にはしないと約束する。一生レンだけを愛し続けると誓うよ」
「あの……ひとつだけ聞いてもいいですか?」
「ああ、なんでも言ってくれ!」
「ルーファスさんにも、もしかしたら……その……側室さんとか、いらっしゃるんですか? いるんだったら、僕……」
「な――っ、いるわけないだろうっ!!! 私は成人前にこの指輪を父上から与えられてからずっと、将来の伴侶に誠実でありたいと思って生きてきたんだ。私は口付けも全てレンが初めてだし、これから先レン以外のものと過ごすつもりもない。信じてくれるか?」
ルーファスさんは本当に僕が欲しい言葉を本心で言ってくれる。
本当に僕だけを愛してくれるんだ……。
心の中が嬉しい気持ちで満たされていく。
「よかったです……僕、ルーファスさんを誰かと共有なんてしたくないから」
「ああっ! レンっ! 大丈夫、私はレンだけのものだ! 死んでもレンから離れたりしないよ」
「ふふっ。じゃあ、寂しくないですね」
僕が笑顔を見せると、ルーファスさんは嬉しそうに僕を抱きしめた。
その優しい抱きしめ方が心地良くて、すごく安心する。
ああ、やっぱり僕たち離れてちゃダメなんだな……。
「レン……体調が良さそうなら、レナルドとクリフに正式にレンが私の婚約者となったことを伝えたいのだが……」
そうだ。
レナルドさんも、クリフさんもずっと僕の気持ちを汲んで待っていてくれてたんだっけ。
「はい。ゆっくり休んだので大丈夫です。お二人に会わせてください」
「では、あちらに連れて行こう」
僕をそっと抱き上げると、寝室を出てリビングのソファーへと座らせてくれた。
そして、机の上に置かれていたベルをチリリンと鳴らすと、すぐにトントントンと扉がノックされた。
えっ?
こんな小さな音が聞こえるってどんなシステム??
この音だけが聞こえるの?
それともここで話したことは全て筒抜けとか?
いやいや、王さまの部屋なのにそれはちょっとセキュリティ上の問題があるよね?
大体そんなに声が聞こえるなら、その……えっちするとか恥ずかしくてできないんだけど……。
流石にこんな豪華な部屋なのに壁が薄いとかないよね?
じゃあ、やっぱりこのベルの音だけが聞こえるとか?
うーん、でも普通のベルっぽかったけどな……。
ここで悩んでいても仕方がない。
後でルーファスさんに聞いてみようかな……。
最悪、防音対策してもらうとか頼んでみよう。
僕が考えを巡らせている間に、ルーファスさんがクリフさんとレナルドさんを部屋の中へと呼んでいた。
「ルーファス、ああ、レンくんも一緒か。それでイシュメルの見立てはどうだった?」
「ああ、食事量は気にせず、食べたいときに食べたいだけ食べさせるようにということと、睡眠をよくとるようにと言っていた。クリフ、あとでイシュメルから薬が届くから、届いたらすぐに持ってきてくれ」
「承知いたしました」
「それから、二人に大事な話がある」
ルーファスさんの真剣な表情に、部屋の中に緊張が走った。
レナルドさんもクリフさんもただ何も言わずに黙ってルーファスさんを見つめている。
ルーファスさんはふぅと深呼吸してゆっくりと口を開いた。
「レンが……ここに残って、私の伴侶になってくれると誓ってくれたのだ」
「――っ!!!」
「 本当かっ?!」
「ああ、私たちは晴れて正式な婚約者となった」
「ああ――っ!! なんと嬉しい知らせでしょう!!! レンさま!! ご決断いただき本当にありがとうございます!!!」
目にいっぱい涙を溜めて、僕に頭を下げるクリフさんを見ていると、なんだか僕も目が潤んできてしまう。
「クリフさん……決断するまでに時間がかかってしまって……心配をおかけしてしまいましたよね。お待たせしてしまってすみません」
「何を仰るのです!! レンさまがお悩みになって当然でございます。ですが、本当に……ルーファスさまのおそばに残ってくださってこれ以上嬉しいことはございませんっ!! ああっ、本当になんと嬉しい日なのでしょう……」
「クリフ……嬉しいのはわかるが、いい加減落ち着け。レンが驚いている」
「私としたことが……申し訳ございません。あの、それでは正式にルーファスさまがご伴侶さまをお迎えになるとお知らせしてもよろしゅうございますか?」
「結婚式はひと月後にするように。それ以外はクリフ、お前に全て任せる」
「承知いたしました。それでは私は失礼いたします」
クリフさんは僕たちに頭を下げ、嵐のように去っていった。
「ははっ。クリフの喜びようを見たか?」
「ああ、あれもずっと待っていたからな。やっとその日が来たと思って嬉しいんだろう」
「それにしてもレンくん、よく決断したね。もう少し時間がかかると思ったけど……」
「ルーファスさんが……僕のことを心から愛してくれているってわかったので。離れたくないなって思ったんです」
「――っ! レンっ!!」
「わぁっ!!」
嬉しそうな笑顔を浮かべたルーファスさんにぎゅっと抱きしめられて、僕は驚いてしまったけれど、でも……こんなに喜んでくれるなら、本当に決断できてよかったと思う。
「あーっ、ゴホッ、ゴホッ。ルーファス、嬉しいのはわかるが、せめて俺が帰った後にしてくれ」
「ああ、わかった。わかった」
「それでなんで結婚式がひと月後なんだ? お前なら、今すぐにでも結婚式をあげたいと言い出すと思ったのに」
「ああ、イシュメルから言われたんだ。ひと月は解さないと身体を繋げるのは無理だとな……。結婚式を挙げたはいいが初夜に身体を繋げないわけにはいかないからな、レンの身体が整うまで結婚式自体を待とうと思ったんだ」
「あー、なるほど。確かに……レンくんの身体、小さいからな」
そう言いながら、レナルドさんが僕の身体を上から下まで眺めるように見つめるので、僕は恥ずかしくなって、抱きしめてくれているルーファスさんの身体にもっとピッタリとくっついて身体を隠そうとすると
「レナルド、レンをそんな目で見るな。レンが恥ずかしがってるだろう」
ルーファスさんがさっと上着を広げて僕を隠してくれてホッとした。
「ははっ。悪い、悪い。じゃあ、これからひと月かけて拡げるのか?」
「ああ、イシュメルからそのための薬ももらえるからな」
「お前、大丈夫なのか?」
「何が?」
「何がってわかるだろ? 暴走したりしないのかってことだよ」
「く――っ!」
レナルドさんの言葉にルーファスさんは一瞬言葉に詰まった。
「暴走って?」
「いや、レンは心配しなくていい。私は必ず自分を制御して見せるからな」
「??? よくわからないですけど……頑張ってくださいね」
意味はわからなかったけど、ルーファスさんの言葉になんだか熱い誓いのようなものが見えて、僕は応援してしまっていた。
「ははっ。レンくんに応援されたら頑張らないわけにはいかないな。ルーファス、頑張れよ」
「ああ、わかってる。お前はひと月後の結婚式が滞りなく迎えられるようにしっかりとクリフと打ち合わせをしておけ」
「ああ、任せておけ! レンくん……リスティアに留まることを決断してくれて本当にありがとう。ルーファスは次代の王だと厳しく育てられて、誰にも甘えることもなかったんだ。だけど、きっとレンくんには本当の自分を出すと思う。今のルーファスともしかしたら印象が変わるかもしれないが、呆れずに優しくしてあげてくれ」
「おい、レナルド! 余計なことを言うなっ!」
ずっとルーファスさんをそばで見ていたからこそ、わかるんだろうな。
やっぱりこういう関係って素敵。
「レナルドさん、僕に任せてください。ルーファスさんをいっぱい甘えさせて見せますから」
「そうか。頼もしいな。じゃあな、あとは二人でごゆっくり」
レナルドさんは満面の笑顔を見せながら、部屋を出ていった。
「レンっ! ありがとう」
「ルーファスさん……」
「さっきの言葉、嬉しかったよ。レン……これからいっぱい甘えさせてくれるか?」
「はい。もちろんです」
僕がにっこりと笑うと、ルーファスさんは嬉しそうに僕を抱きしめた。
しばらく経って、扉が叩かれた。
「イシュメルが薬を届けてくれたぞ。今日からこれを毎晩寝る前に飲むようにと言っていた」
「シロップですか? 錠剤じゃないんですね」
「ああ、こちらの錠剤は少し大きいからレンには飲みにくいだろうと言っていた。このシロップは甘いから飲みやすいと思うぞ」
「ありがとうございます」
お礼を言いながら、僕は子どもの時に飲んでいた風邪用のシロップを思い出していた。
やっぱりこの世界だと僕は子どもに見られているんだろうな……。
まぁ、身体が小さいからそう見られても仕方ないんだろうけど……。
一応、21歳なんだけどなぁ……。
「それから、これがレンの後孔を拡げる薬だ。これで毎日マッサージして柔らかく解していくからな」
あっ、そうだ……これがあったんだ。
これで、ルーファスさんにあそこを拡げられるのか……。
ルーファスさんしか見てないから大丈夫だと言っていたけど……そのルーファスさんに見られることが恥ずかしいんだよね。
かといって、他の人はもっと嫌だし……。
自分では無理だって言われちゃったし……。
やっぱりルーファスさんに頼むしかないんだろうな……。
「レン? どうした?」
「いえ、やっぱりルーファスさんにやってもらうのは恥ずかしいなぁって」
「レンは何が恥ずかしい? その恥ずかしさを取り除く方法を考えてみようか」
「えっ……恥ずかしさを、取り除く……?」
「そうだ。マッサージをするときは心を落ち着けておくことも大事だからな。恥ずかしがっていたら、身体に余計な力が入ってうまく解れないだろう?」
「そう、ですね……。何が恥ずかしいって……」
自分の見えない場所をルーファスさんに見られて、触られることが恥ずかしい。
それに、そこを解すってことは……僕だけ下半身を丸出しってことだよね?
せめて、上からタオルで隠して、こっそり手だけ入れてやってもらうとか?
いやいや、そんなことより何より、まだ……僕たち……ちゃんと恋人になってないよね……。
ああっ! そうだよ! そこだ!
だから、躊躇ってしまうんだ!
「レン、何かいい考えを思いついたのか?」
「えっ……ど、どうしてですか?」
「いや、なんだか嬉しそうな表情で私をみていたような気がしたんだが……」
「――っ、それは……」
「いい考えがあるなら教えてくれないか?」
いいのかな?
話してみても……。
「あの、じゃあ……その、ルーファスさん…………」
「んっ? どうした?」
「だから、その……ルーファスさんと、き、キスしたいなって……」
「――っ??」
僕がそう口にした途端、ルーファスさんの表情が一気に固まった。
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