22話:一歩

「セン、今だ!走るぞ!」


「走るってどこへだ!?ボートはもう乗れないし、海の方へ戻ると地雷だらけだぞ!」



エボはそれに応えずに走り始めた。


俺もやけくそとなりエボの影を追って、走っていく。




するとやがて目の前に警備の見張り台が見えてきた。


「おい!エボ!こっちは正面口の方だ!逆だ!」



エボは俺を無視して柵まで走っていった。とうとう諦めて、気が触れてしまったというわけだ。俺も仕方なく着いていく。


「ふぅ~・・・エボ・・・ そろそろ霧も晴れてきた・・・これまでありがとな・・・」


俺は何故か落ち着いていた。ここまで良くやったと本当に思っていた。




「何を言っているんだ、セン。外に出るぞ。」



「そんなん無理だろ、、どういうことだよ・・・」




霧がいよいよ晴れてきた。警備員の影ははっきりと見えてきており、ブラッドドッグの姿も見える。


「ウゥウゥウゥ!!!」


ブラッドドッグが唸りだし、それにつれて警備員が俺たちの方をライトで照らす。


「おいっ!!お前ら!!ここで何をしている?!止まれ!!」


「ガゥガゥガゥ!!!」



「あぁ、良かった・・・実はこの霧で道に迷ってしまいましてぇ、、」


「どうやって入った!?お前は誰だ!?」


「私の名前はエボですぅ。こちらは仲間のセンですぅ。実はここで仕事があると聞きましてぇ、どうかどうか働かせていただけないでしょうかぁ。」



2人は頭からつま先まで泥だらけの上に、ずたぼろの布袋を背負っている。


「このとおり身ひとつで来ていますぅ。どうか・・・」


エボが警備員に近寄ると、警備員は持っていた警棒でエボを「ガンッ」と殴った。


「ううっ・・・」



「すぐ出ろ!アホども!」




一体どこから入ったんだと、警備員はぶつくさ言いながら、正面口の扉を開けようとする。なんてことだ。





・・・ガチャ


俺たちの未来への扉が開けられた。

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