21話:クリスタル
「このあたりだ・・・!さぁ、掘るぞ・・・!」
1時間ほど進んだ時、エボがそう言った。
手で砂を深めにすくってみる。ガラスのような触り心地だが、陶器のような滑らかさもあり、何か磁力のようなものを感じる物体に触れた。
これは間違いなくクリスタルだ。
「ははっ、野球ボールみたいな大きさのクリスタルが出たぞ。」
「ああ、まだまだあるぜ。」
掘る。クリスタル。掘る。ピンクルビー。掘る。クリスタル。
約30分ほど掘っただけで、2人の布袋の1つは一杯になった。これだけで親戚中が何世代に渡って遊んで暮らせるだけの価値になるだろう。
2人は無中になっていた。それがクリスタルの魔力とも言ってよい磁力なのかもしれない。
・・・そして、2人は同時にハッとした。
「セン!そろそろ行くぞ。夜が明けちまう!」
気づくといつの間にか視界が明るくなり始めていた。もう数分から10分ほどで朝日が昇りだしそうだ。警備員の影も見え始めている。
それを見た瞬間、俺の身体から力が抜けていった。
「エボ・・・、すまん、俺はもう動けそうもない。先に逃げてくれ。ここまで来れて良かったよ。」
本心だった。昨日の朝起きてから、旅の準備をし、ボートを漕ぎ、荒波に飲まれ、砂漠地帯を匍匐前進し、クリスタルを掘った。もう24時間以上動いている。身体も心もエネルギー切れだ。
だが、エボの返答は意外なものだった。
「何言ってるんだ、セン、機はこれからだよ。」
俺の方こそエボは何を言ってるんだ、と思った。が、すぐにその理由が分かった。
「これは・・・霧だ・・・」
1メートル隣にいるはずのエボが色のついた空気で見えなくなる。
霧によるホワイトアウトだ。
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