20話:勇気

ブラッドドッグだ・・・!!


「エボ!!!」




「……!!!」


だが、俺たちの心は恐怖より戦闘心に満ち溢れていた。現代の人間であろうが動物だ。理性なんて糞くらえだ!



ブラッドドッグはエボの腕に鋭い牙で噛みつき、唸っている。


「うおおお!!」


エボは自分の袋からゴールドの塊を出して、ブラッドドッグの頭に振り下ろした。赤い目が少しくすんで「ギャイン!」と言い、ヨロヨロと弱った顔をした。エボはそれを追い、さらに鬼の形相でもう3発、一切の妥協無く、ゴールドを叩き下ろす。ブラッドドッグは舌をベロりとたらし、その場に崩れ落ちた。



「エボ!大丈夫か!?」


「あぁ、一匹で助かったよ。だが、時間に余裕はない。さぁ、行こう!」



「・・・行こうって。だから地雷があるんだろ?」


遠くには見張り台が見える。人の姿はまだ見えないが、警備員もあちこちにいるだろう。2人の身体は、運が良いのか泥と草とぼろぼろの服のため、遠くから見たら迷彩服を着ているのと効果は同じだ。だが、立ち上がって進めばすぐにばれてしまうだろう。



「ただ、こうやるだけさ。」


そう言って、エボは匍匐前進を始めた。腕を順番に出し、ズズズと身体をミミズのように進める。



「エボ・・・?一体どういうことだ?」


「地雷はな、人の重さに反応して爆発するのさ。風で動いちまう砂の重りや、ブラッドドッグに反応しないようにな。こう進めば重さは分散されるってわけさ。肘や足に体重をかけすぎないようにだけ気をつけろよ」




一歩づつ、というよりは一手ずつ2人は進み始めた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る