17話:静かな海の対峙

「ちょっと仕事が入ってね。3週間ほど仕事でヤポンに戻るよ。アメンさんにもよろしく。」


「はい、センさんお気をつけて」


サラにはこう言っておけば、俺と連絡がつかなくても何も思わないだろう。これから父親の別邸に強盗に入るんだ。余計な手間は避けておきたい。



それにしてもまずは戦略を考える必要がある。最初に「侵入ルート」、そして「警備員と赤外線センサー」「ブラッドドッグ」、そして「地雷」、最後に「帰還ルート」だ。


侵入ルートは海側からがむしろいいだろう。赤外線センサーを止められたとしても、帰りのことも考えると、警備員、ブラッドドッグのすべての目をかいくぐるのは難しい。問題は地雷だ。




エボが仲間になってから1週間。期は整った。



「さぁ、行こうか!」


エボが明るく言った。2人でボートに乗り、深夜の海を漕ぎ出す。だいたいクリスタルデザート(アメンの砂漠の庭をそう呼ぶことにした)までは2時間の予定だ。月明かりの中、手漕ぎボートでいくつかの小島を迂回して向かう。電動ボードは音が大きいため、この静かな地域では避ける必要があった。



そして30分ほど漕いだところだった。


「おい、静かに聞け。ワニゲータだ……!」


エボが静かに叫ぶ。


「どうする?・・・騒がなければ大丈夫か?」



そんな期待と裏腹に、スーッとワニゲータが近づいてくると、ボートに顔を乗せた。間違いなく我々をアパタイザーのようにあっさりと喰おうとしている。


「おい!エボ!銃だ!!」


「銃はダメだ!音が響いちまう!ナイフを取れ!」


ナイフを取ってエボに手渡した。


素早い動きでエボはナイフをワニゲータの目に突き刺した。ワニゲータは叫び声をあげて、川へ消えていった。するとピラニア型のモンスターがワニゲータを囲み、水面が荒れだしている。


ワニゲータとピラニアが小競り合いしているうちに、急いでその場から離れる必要がある。汗だくになりながらボートを漕ぎ、なんとか逃げることに成功した。




「いつか、ホテルのバーでいい女をひっかけるためにこの話をしてやりてぇな!」


エボは笑いながらそう言い、俺も久しぶりに笑った。

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