15話:仮面の愛情
「おはようございます」
約束の日時、俺はやや早めに市場に着いたが、サラの笑顔で丁寧な挨拶に出迎えられた。美しいサラは一瞬で周りの男を魅了する、そんな力を持っていた。が、俺にとっては何の意味もない。
「ああ、おはよう、いい天気だね」
天気の話はくだらないとも言われがちだが、俺は結構好きだ。人間は宇宙の一部であり、何をしたってお天道さまにはかなわない。この暑くて乾いた気候も、それによってできたであろうクリスタルやルピーのような鉱物も、そして、それに影響されて人殺しをする人間も、元をたどればすべてお天道さまだ。
「じゃあ、行こうか。この町が気に入ってね。部下に連絡して、2か月ほどこの国に滞在することにしたよ」
「それだけあればこの町ならどこでも詳しくなれますよ!」
嬉しそうにサラはフフフと笑った。その後は小学生だって簡単にできる詰め将棋だ。服や生活用具を買い込む。時に最も高価なものを瞬時に買うこともあれば、その一つ下のグレードのものをユニークな会話も混ぜて、値下げ交渉をしたりもする。気に入った店主には、値下げした金額以上をチップで渡す。買った荷物はサラに少しだけ持たせる責務を渡し、度が過ぎるほどの感謝を伝える。
少し遅めに始まる昼食では、サラと軽くワインを嗜んだ。
「サラ、本当にありがとう。良い店を紹介してくれて助かったよ」
「いえ、この町のみなさんもセンさんと相性が良かったようで何よりです。」
「この後なんだが、さすがに少し買いすぎてね。部屋まで運ぶのを手伝ってくれるかい?」
ワインで少し顔を赤らめたサラは少し悩みながらも承諾し、俺の部屋に向かった。この町にはあまり見られない茶の色調で清潔感がある部屋を俺は借りていた。
再度お礼を言い、サラをソファに座らせ、コーヒーを出した。
「サラ・・・」
顔を近づける。サラは少し目を伏せながらも、あごを持ち上げられ、おとなしく従ってキスをした。
「センさま、私、こんな・・・」
「サラ、愛しているよ。一目見た時からね」
「うれしい・・・」
その後、2~3日に一度はサラに会った。ビジネススーツの姿を見せたりもした。東洋の故郷ヤポンで培った多様かつ伝統的な知識はサラを刺激し、彼女は俺の虜になった。
ある日、ベッドで俺はサラに話しかけた。
「私たちの関係はアメンさんには伝えているのかい?」
「い、いえ。まだです。」
「そうか。私の口から早く伝えたいんだが、アメンさんとはビジネスの話もあって、私たちの関係とは切り離して考えたくてね。必ず近いうちに正式に伝えるから、それまで待ってくれるかい?」
聞きようによってはプロポーズだ。まださきほどの営みから醒めやらないサラの顔はさらに紅直し、この世で一番幸せそうな顔でうなずいた。
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