12話:権力と欲望の交差点

良い酒と良い女が集まっている場所には、悪い男と悪いカネが集まっているのことと同義語だ。


特にルピーやゴールドのような、そのモノ自体に価値がないものに執着しているヤツは、酒と女、そして車と時計が趣味に相場が決まっている。




「おやじ、ありがとな。」


運転手に少し多めのチップを渡し、店の前で車を降りた。道すがらジャケットとハット帽も手に入れておいたから店には問題なく入れるだろう。




「・・・!! はは、そういうことだよな!」


目を疑いもしなかった。そりゃそうだ。下手な恋愛ドラマよりシンプルなストーリーラインだ。


店の前で、ちょうどリムジンから降りてきたのは、アメンとサラであった。

レディファーストなんてものはマネーファーストの前では無力だ。サラにドアを開けさせ、アメンは颯爽と車から降り、やたら化粧の濃い美女2人に迎えられて店の中に消えていった。サラは微笑みながらそれに続く。




「初めてなんだが、入れるかな?」

少し時間を空けて、俺は入口の屈強な黒づくめに声をかけた。


「失礼ですが、どなたかのご紹介で?」


「ああ、紹介状を持っているよ」

そういって、俺は胸ポケットから100ルピーばかりを差し出す。


「どうぞ、こちらへ」


相場が合っていてホッとした。この手のものは多すぎても少なすぎても目立つ。


店の中は小さめのダンスホールとスタンドテーブルが10ばかり、そして奥には個室につながるようなカーテンがある。アメンが見えないのでもうすでに奥に行ったのだろう。サラはスタンドテーブルにおり、ちょうど一杯目の飲み物を受け取っていた。


「今日は軽めにまずビールにするよ」


そうして、俺も店員に酒を頼んだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る