7話:転ぶ先に
その夜、もう諦めて帰ろうかとルカに話しかける。
「リュウくん、もう少しだけやってみたい。」
「お、おう。そうか。もう少しやってみるか。」
ルカが主張することはめったにない。今回の旅も、ヤポンではうまくいっていなかったルカの人生において何か思うところがあったのかもしれない。それを俺も応援したい。
とはいえ、よく考えてみると、口数が少ないルカの言うとおりに来たら、今こうなっているような気もする。まぁ、深く気にしないことにしよう。
次の日は早朝から作業を行うことにした。あのラクダ屋の言うことを鵜呑みにしているわけでないが、確かに暗い方がクリスタルやピンクルピーが光ることもあるかもしれない。信じるものが他にないだけともいえるが、また日が昇らないうちに俺とルカは出発した。
デザートキャニオンは険しい。何かを警告しているかのように岩は鋭く尖っている。
そして掘り始めようとルカと崖近くを覗き込んだときだった。
ガガガ…ガガ…ドーン!!!
「おい!なんだよこれ!!!」
・・・俺たちが立っていた崖が丸ごと落ちた。あまりにも激しい衝撃で何が起こったのかまったく分からず、土煙によって俺たちの眼前はしばらく真っ暗になった。
「うう・・・、ルカ・・・大丈夫か?」
「う・・・」
ルカはうめき声をあげるだけだ。俺もしこたま身体を打ち付け、しばらくここから動けそうもない。ただ、2人とも生き埋めにならなかっただけマシだった。なんとか這って、寄りかかれる場所を探す。このまま寝ていたら、干物になっちまう。
再び後悔の念にさいなまれながら、俺は怒りもあって地面の土を強く叩いた。
「いったい俺たちが何をしたって言うんだよ!!」
カァンッ
「いてぇな・・・、今度は固い岩かよ・・・ん?」
固い岩の表面を手で払うと、何かが不自然に輝いている。砂金体験とやらで見たことがある感じだ。ただ、あんな1mmくらいのいくらにもならないものではなく、野球のボールくらいのサイズ感だ。
「なんだ・・・これ・・・?」
急に活力が戻ってきた。なんとか起き上がって、あたりを手で闇雲に掘ってみる。すると同じように輝く岩が3つ出てきた。
「ルカ!やったぞ!クリスタルだ!!!崖の中から出てきやがった!」
「う、うん・・・」
ルカは何とかほほ笑んだ。俺はクリスタルを1つポケットに入れ、荷物を取ってくることにした。さっさと掘って撤収する作戦だ。ちょうど出勤してきたラクダ屋に1つクリスタルを渡し、2頭いたラクダとその荷車、新しいスコップと砂袋をいくつか買った。
そのままルカのところにもどり、スコップであたりを掘ってみる。
掘る、クリスタル。掘る、ピンクルピー。掘る、クリスタル。掘る、ピンクルピー。
子供用ゲームのおまけステージのようにお宝がざくざくと出てくる。夢オチなら自殺レベルの出来事だ。1日かけて休みなく掘り続けると、2頭のラクダでぎりぎり運べる重さになった。まだ少しありそうな気もするが、ルカの具合も悪そうだ。いったんロックフォールに戻ろう。
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