6話:掘る掘る掘る

次の日の朝、早速俺たちはクリスタルを掘り始めることにした。


周りを見てみると、遠くの方で何人かがスコップで地面を掘っては這いつくばり、スコップで掘っては這いつくばって、を繰り返している。


「なるほど、これは明快だ」


俺とルカも同様にスコップで掘っては、何かないかを地面を手で探ってみる。


1時間ほどやってみたが、何も出てこない。一度だけ輝く小さい塊が出て興奮したが、ただの水の瓶の欠片であった。



このままでは埒が明かない気もしたので、休憩がてらラクダ屋に話しかけてみる。


「やぁ、兄ちゃんたち。クリスタルは出たかい?」


「いや、まったくだよ。このあたりで本当に出るのか?」


「あぁ、確かにこのあたりにクリスタルはあるさ。ただ、クリスタルは探し物じゃない。選ばれたやつにしか姿を見せないってわけさ。」


「はは、それはどういう意味だよ?」


「クリスタルはただの宝石じゃない。正しい心と真の目的を持つ者だけが感じられる古代の力が宿っているってわけさ。ふふ」


俺たちを連れてきたラクダライダーもそうだが、ずいぶんと宗教っぽい話になってきた。ヤポンにもそういった民話は多くあるが、この手の話はどこの国でもある。


「なるほどな。ところで、帰りはここにあるラクダを借りることもできるのかい?」


「あぁ、もちろんさ。ここではラクダの販売とレンタルをやってるよ。あと俺はこのあたりの警備もやってるってわけでな。一応、それなりに人が来るし、ここは国営の場所ってことで、ロックフォールの町から依頼されてるんだよ」


「それを聞いて少し安心したよ」



そして再び俺とルカはスコップを握ることにした。

掘る、出ない。掘る、出ない。掘る、出ない。




「そういえば、昔さ」


なぜかノスタルジックな気持ちになっていた俺はルカに語り掛ける。


「昔、うちの裏手は畑でさ、中に小さな祠があって、秘密基地を作ったよな」


「うん、覚えているよ」


「枝やら葉っぱやらを集めて、なんとか形になりかけた時、ルカがこけてな。はは」


「うん、ふふ」


「だけどその後、それを直しつつ、何とかできたんだよな」


「違うよ、リュウくん。その後、今度はリュウくんが転んで基地の上に座っちゃったんだよ。それで全部崩れたよ?」


「そうだっけ?」


2人は久しぶりに顔を見合わせて笑った。そのくだりはぼんやりとは覚えていたが、兄としては隠しておきたかったのかもしれない。


「そうだよ、それで結局次の日に、落ちてた大きな布を枝にかけて、完成だ、って言ってたよ?」


「そうだったな。それにしてもあれは最高の秘密基地だったよ。はは」


本当にそう思った。今回だって2人でやれば何とかできるはずだ。まぁ何も出なくてもそれはそれで良い思い出になるだろう。


2人でクスクスしていると、露店の親父がもう店じまいなのか、ウロウロしつつ話しかけてきた。


「よぉ兄弟、がんばってるな!調子はどうだ?」


なんでここらの男は毎回兄弟、と言って話しかけてくるんだ。慣れ慣れしさが度を越しており、もはや羨ましいほどだ。俺がルカと兄弟だからという理由ではないだろう。


「ああ、だが、もう3~4時間は掘ってるけど、何も出ないぞ?」


「ははは、そりゃそうさ!先月くらいまではまぁまぁ人がいたけどな。」


「どういうことだ?」


「なんだ?知らないのか?ここらのお宝はもう掘りつくされたと見て、採掘者たちは既に次の場所に移動しているよ。俺ももう1~2日で店をたたもうと思ってな。何か必要なものがあれば安くしておくぜ。」


まじかよ、とだけ思った。


「ははは、とはいえもう少しやってみてもいいかもな。暗くなったらクリスタルが輝いて場所を教えてくれるかもしれないぞ」


くそ、馬鹿にしやがって。

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