5話:ゴールではなく、スタートライン

「おい、行くぞ!!」


俺たちはタイムリーパーになったのかと錯覚するほど、昨日と同じ起こされ方をし、再びラクダは走り始めた。


そこからさらに6時間・・・午前中には着くだろう、と言われたが大嘘だ。それに、旅の始めライダーが言っていた“道がそのうち落ち着く”の“そのうち”とは一体いつなんだ。


ボロ雑巾のような身体で、ボロ雑巾のような荷車のカーテンをめくると、そこは既に断崖絶壁の連続だった。


「これがデザートキャニオンか…」


ルカを見ると、頭をガンガン天井と壁に打ち付けながら寝ている。


あとどのくらいかかるのか、と俺も意識朦朧の中で絶望していると、急にラクダが止まった。


「着いたぞ!!ここがデザートキャニオンの“象の岩”だ!また2週間後に迎えに来るよ。じゃあな!」


そう言いながら、我々の荷物を降ろし、ラクダに水を飲ませると、あっという間に土煙を上げながらラクダライダーは去っていった。


「あいつの体力はどうなっているんだよ・・・象の岩ってなんだよ・・・」


上を見ると、確かに象に見えなくもない形の巨大な岩がある。ここが帰りの集合場所のようだ。


周りを見渡すと、遠くの方でぽつぽつと採掘をしている人が見える。また水や果物、スコップを売っているらしきカートと、ラクダを並べている店がそれぞれ1つある。その周りにはテントもいくつかあるようだ。ただ、集落とはまったく呼べない規模ではある。


身体がぼろぼろの俺とルカは、何とかテントを張って、寝床を作り、まずは休むことにした。雑炊のようなものを作って、身体を温めると、2人とも泥のように寝てしまった。


どのくらい寝たのが分からないが、夜中に目が覚めた。


「ルカ。起きているか?」


「うん。」


「こんなことになってごめんな。まぁクリスタルの1つや2つを持ち帰って、ヨハンの仕事とやらもさっさと片付けて、金持ちになって帰ろうぜ。」


「うん。」


「明日から採掘はやれそうか?」


「うん」


相変わらず何も言わないやつだが、たぶん前向きだ。たぶんな。

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