第一部:1話:美女サラとの出会い

「じゃあまた来週な。」


アメンと名乗ったその黒人の男は微笑んで言った。歳は50歳くらいだろうか。

人種が違うと年齢がまったく分からない。


その晩にヨハンに連絡したところ、気を付けるようにだけ言われた。まぁ観光の一種だと思われているのだろう。


集合日の朝、待ち合わせ場所につくと、アメンと一緒に若い女がいた。背は小さいが、色白で大きな目をしている。とにかく美人ってことだ。というか、人間であれば、100人いればほぼ100人が魅入ってしまうだろう。


「よお、兄ちゃんたち、悪い悪い、ちょっと急用ができちまってな。代わりに娘のサラに案内させるよ。こいつは俺よりちゃんとしているから、任せちまいな!」


「って、おい!・・・特に説明もないまま行きやがった・・・」


美女を目の前にルカはおどおどして、「あっ、おっ」とつぶやいている。これもいつもどおりだ。


「リュウさんとルカさんですよね?よろしくお願いします。」


満面の笑顔で女はそう言った。こんな状況に慣れているのか、物怖じする様子もない。


「では、早速行きましょう。まずは地図と採掘道具が必要ですね。その後に食料や水を準備して、最後にラクダを見に行きましょう。予算はどのくらいありますか?」


これ以上無いほど手際よく説明がなされる。


「そうだな、1000ルピーくらいでそろえられるかな?」


今回のアフリカ行きに際して、ヨハンからは前金+生活費として5000ルピーを既に受け取っている。さらに今回の待ちぼうけに際して、金に困ったらまたくれるらしい。スポンサーさまさまだ。ちなみに1ルピーでパン一斤が買えるくらいのものだ。ただ、これはブルールピーであって、今回クリスタルと合わせて発掘されたのはピンクルピーだ。その価値はブルールピーの1000倍はくだらない。


「1000ルピーだとちょうどくらいですね。ラクダの品質はそこまで良いものじゃないかもしれませんが、2~3週間なら大丈夫だと思います。」


必要な物資も予算感も頭に入り込んでおり、確かに頼りになりそうだ。とはいえ信用はできない。俺の国、ヤポンでの特殊詐欺事例の教育をなめるなよ、と心の中でつぶやいた。

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