第93話 オークジェネラルなら倒せますが? 何か?

 俺たちはオークの集落を発見した。

 聖サラマンダー騎士団のフレイル団長が近づいて偵察した後、オークの集落から安全と思われる距離を後退し打ち合わせる。


 フレイルさんが眉根を寄せて、偵察結果を報告する。


「オークの集落には、オークジェネラルがいた。オークの数は二百だ」


 フレイルさんの報告に、ハインリッヒさんが渋い声を上げた。


「むう……。危険ですな……」


 続いてフレイルさんは、俺の方を向く。


「我ら聖サラマンダー騎士団としては、オークの集落を潰しておきたいが……。リョージ殿たちはどうする? オーク二百の集落は、リョージ殿たちには荷が重いだろう。リョージ殿たちだけ撤退してもらっても構わないが?」


「いえ。ご一緒しますよ」


 俺は即答する。

 二百のオークにジェネラル。

 この一隊がスタンピードで暴れ回る前に殲滅出来れば、ちょっとは楽になるだろう。

 望むところである。


 だが、フレイルさんは眉根を寄せ腰に手をあて俺に歩み寄ってきた。


「あー、リョージ殿……。強がらなくて良い。あのオークの集落は危険度が高い。貴殿らには撤退してもらって――」


「大丈夫ですよ」


 俺が軽く請け負うと、フレイルさんは真剣に話し出した。


「いや、待て! 私の話を聞いていたのか? オークの数は、二十ではないぞ?」


「はい。オーク二百にジェネラルですよね?」


「そうだ!」


「倒しましょう」


「イヤイヤイヤ! おかしいだろう? リョージ殿たちは新人冒険者だと聞いているぞ! 二百のオークとジェネラルは――」


「倒せますが? 何か?」


「えっ!?」


「え?」


 フレイルさんが驚き、続いて困惑する。

 なぜ困惑するのか?

 困惑する理由がわからない。


「あの……オークジェネラルは倒したことがありますし、オーク二百は数が多いですが、何とかなると思いますよ?」


「むーん……」


 フレイルさんが天を仰ぐ。

 なぜだ!?

 俺も困惑してしまう。


 二人で腕を組み首をひねっていると、シスター・エレナがクスクス笑いながら進み出た。


「フレイル団長。リョージさんとソフィーちゃんは、本当にお強いですよ」


「エレナ殿。本当か?」


「ええ。私は一緒に行動していますが、お二人は新人冒険者の域を、とっくに越えていますわ。お疑いでしたら、マリンさんとアシュリーさんに聞いてみては?」


 フレイルさんは、シスター・エレナのアドバイスに従い、本部から派遣されたマリンさんとアシュリーさんに発言を促した。


「マリン。君はどう思う?」


「問題ございません。ソフィーちゃんの魔法は強力ですし、リョージさんの力は中堅冒険者を凌駕しています」


「ふむ。アシュリーは?」


「大丈夫です。撃ち漏らしを、私とマリンで片付ければ、すぐに終ります」


「わかった……」


 フレイルさんは完全に納得していないが、一応シスター・エレナたちの言葉を受け入れたようだ。

 フレイルさんが、俺に向き合う。


「リョージ殿、本当に良いのか?」


 俺はニコリと笑って、ソフィーを手のひらで示す。


「この通りソフィーもやる気になってますので」


 俺の隣でソフィーは飛び上がって喜んでいた。


「お肉! お肉! オークのお肉! ひゃっほう!」


「あー、そうだな、オークの肉は美味しいよな。わかった! では、リョージ殿たちのお手並み拝見と行こう!」

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