第68話 一番 サード 岩鬼君
次の獲物を探して、ダンジョン二階層を探索する。
俺はスマートフォンを出して画面を確認してみた。
すると二階層の地図が表示され、現在地が赤丸で点滅している。
(これなら迷うことはないな!)
ガイウスは三階層へ続く転移陣――つまり、この階層のゴールへ向かっているようだ。
地図は地形と歩いてきたルートを表示してくれるが、魔物の位置は表示されないようだ。
魔物の位置が表示されれば最高だが、それでも破格の性能だろう。
「おとーさん! おとーさん!」
後ろを歩くソフィーが、楽しそうな声で俺を呼ぶ。
何か楽しいことを思いついたのかなと、俺は笑顔で振り向く。
「うん? なんだい?」
――カシャ!
ソフィーは、自分のスマホで記念写真を撮っていた。
緊張感ゼロである。
ガイウスが怖い顔をする。
「おい……リョージ……」
「スマン! ちゃんとやる!」
だが、ソフィーの楽しそうな声が……。
「ガイウスのおじちゃんも一緒!」
「「イエーイ!」」
――カシャ!
俺とガイウスは、仲良く肩を組んで写真に収まる。
ガイウスよ!
緊張感はどうした!
「ソフィーちゃん。探索中だから写真は後にしましょうね」
「はーい!」
シスターエレナが、穏やかに注意をしてくれて探索再開である。
「リョージ。こうなったら早いとこ次の階層へ行こう」
「えっ? 三階層へ?」
「ああ。ここはソフィーちゃんお気に入りのホーンラビットが出るだろう? 訓練にならん。三階層はゴブリンが二匹出るからな。三階層で訓練しよう」
「わかった。じゃあ、俺がホーンラビットを倒す方針でやろう」
「うむ。棍棒を横に振れよ。リョージの力なら、棍棒が当たれば間違いなく倒せる!」
「よし!」
俺とガイウスは歩きながら打ち合わせ、とっとと三階層へ進む方針に変更した。
「あっ! うさぎさん!」
再びホーンラビットと遭遇!
ソフィーが嬉しそうな声を上げるが……。
すまんな、ガイウスから早く倒せと指示が出ているのだ。
「よし! リョージ! 行け!」
ガイウスの気合いの入った声に押されて、俺は棍棒を握り直し、大きく素振りする。
「一番、サード、岩鬼君」
「なに?」
「気にするな。おまじないだ」
これを言うと気分が出るのだ。
自分がホームランバッターになった気がする。
いや、岩鬼なら悪球打ちか?
俺が前に出ると、ホーンラビットと目が合った。
つぶらな瞳をクリクリさせ、鼻をヒクヒクさせている。
うっ……罪悪感……。
これはダメだ。
さっさと倒して次の階層へ向かおう。
俺は気合いを入れ直す。
ホーンラビットがダッシュ!
額の角を俺に向けて突っ込んで来る。
俺は棍棒を構え、グッと腰を落とす。
ホーンラビットが額の角で俺を串刺しにしようとジャンプした!
絶好球!
「グワラゴラガッキン!」
俺は謎の擬音を口にしながら、棍棒を横に振り抜く。
ジャストミートだ!
「きゅーぅぅぅぅ……」
真っ白なホーンラビットが遠くへ飛んでいった。
見事なホームラン! 場外弾だ!
「あー! おとーさん!」
あれ? ソフィーは、俺を非難する声色だ……。
かわいいホーンラビットを倒すのは、やはり不味かったか?
俺は恐る恐る振り返る。
「ソフィー、なに?」
「ホーンラビットは、毛皮、お肉、角が売れるんだよ。見えなくなっちゃったから回収出来ないよ!」
「あー! ごめん! 気をつけるよ!」
娘に叱られてしまった。
次からはダウンスイングでゴロを打とう!
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