第52話 本部から来た聖職者たち

 俺、ソフィー、シスターメアリー、シスターエレナで、和やかにお茶会をしていると応接室がノックされた。


「どうぞ」


 シスターメアリーが答えると、ドアが開き三人の神官が入って来た。

 入って来たのは男性一人と女性が二人。


「まあ! フィリップ! どうしたの!?」


「メアリー! いやあ、久しぶりだね! 人が足らないので、私が派遣されたんだよ」


「ええっ!? あなたは本部の幹部じゃない! こんな田舎に来て良い人じゃないわ!」


「ははは! 顔見知りの方が気楽だろう! よろしく頼むよ!」


 男性の神官フィリップさんは、シスターメアリーと親しげだ。

 二人の女性神官は、シスターエレナに話しかけた。


「エレナさん。お久しぶり」


「久しぶり」


「マリンさん!? アシュリーさん!?」


 シスターエレナは、手を口元にあてて驚いている。

 顔見知りのようだが、どうしたのだろう?


 俺とソフィーは、シスターメアリーに三人の神官を紹介された。

 フィリップさん、マリンさん、アシュリーさん。


 フィリップさんは、シスターメアリーと同世代、俺よりも年上に見える。五十歳くらいかな。

 口元と顎にひげを生やしたイケオジだ。若い頃は、さぞやモテただろう。


 マリンさんは、青い髪をした清楚な雰囲気の美人だ。

 アシュリーさんは、整った顔立ちだがぼさっとした髪をしている。

 女性二人は、シスターエレナと同世代の二十歳くらいかな。



 精霊の宿に客が来る時間帯なので、俺、ソフィー、シスターエレナは、精霊の宿へ向かった。

 教会から精霊の宿へ歩く間、俺はシスターエレナに三人の神官について聞いてみた。


「シスターエレナ。あの三人は、本部から派遣された方たちでしょうか?」


「ええ、そうです。しかし、驚きました……」


 シスターエレナは、胸に手をあてて自分を落ち着かせようとしている。


 俺たち三人は、精霊の宿の受付に入った。

 まだ、客がいないので、シスターエレナの話を聞いた。

 あの三人は本部のエリートらしい。


「そういえば、三人は随分立派な服をお召しでしたね」


「ええ。あの服は精霊教本部の者が着る服なのです」


 ソフィーが、むむむっとうなっている。


「なんかキラキラしてたね」


「ああ、そうだな。きれいな服だった」


 三人の服装は、白い衣装に金糸銀糸がふんだんに使われていて、袖口や襟に刺繍が施されていた。

 フィリップさんは、白いズボンに、ゆったりとしたコートのような上着を羽織り、マフラーのような帯を首元に垂らしていた。


「あれはストールです。階級が高い者が身につけます。フィリップ様が身につけていたのは、司教のストールですね」


「司教……? シスターメアリーは司祭ですよね? 司教と司祭では、どちらが偉いんですか?」


「司教です」


「では、教会の責任者が交代?」


「いえ! フィリップ様は、手伝いに来たとおっしゃっていたので、教会長はシスターメアリーのままだと思います。けれど、異例のことです!」


 シスターエレナによれば、フィリップさんは有名な聖職者で、若い頃は魔物討伐で名を馳せた風魔法の使い手らしい。


 なるほど。

 シスターメアリーと親しげなわけだ。

 二人は一緒に魔物討伐で戦ったのだろう。


「司教は教区の責任者なので、教会に手伝いに来ることなどないのです。それにあの二人も……」


 マリンさんとアシュリーさんも、きれいな服を着ていた。

 アシュリーさんは、フィリップさんと同じズボン姿。

 マリンさんは、巻きスカートをはいていた。


「お知り合いですか?」


「学校の同期です。マリンさんが主席で、アシュリーさんが次席です。マリンさんは水魔法、アシュリーさんは土魔法を使います」


 卒業生の一位と二位か!

 そりゃ優秀だな!


「こんな辺境の教会に赴任する方々ではないのです」


 シスターエレナは、困惑しきりだ。

 ははあ……田舎の支店に、本社のバリバリキャリア組が転勤してきたようなものか。

 それは面食らうな。

 俺はあまり深く考えず、歓迎会をしなくちゃならないな、メニューは何にしようと考えていた。


「ソフィーは歓迎会を開いたら何が食べたい?」


「シュークリーム!」


 うーん、俺は歓迎会だから居酒屋メニューをイメージしていたのだが、ソフィーにかかるとスイーツメニューに早変わりだ。


「シュークリームは売り切れました!」


「がびょん!」


 甘い物の食べすぎは、体に悪いからな!

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