第9話 ソフィーとクリームパン

 俺とソフィーは、商業ギルドから広場の隅に止めてある移動販売車に戻ってきた。

 俺はソフィーを移動販売車の荷台――店内に案内しニカッと笑う。


「さあ、ソフィー! お楽しみのクリームパンだよ!」


「わあ! やったー!」


 俺がクリームパンを差し出すと、ソフィーは飛び上がらんばかりに喜んだ。


「飲み物はコーヒー牛乳で良いかな?」


「それ美味しいの?」


「甘くて美味しいよ~」


「じゃあ、それが良い!」


 ソフィーは喜んでコーヒー牛乳を受け取る。

 ニッコニコだ!


 ソフィーの喜びが俺にも伝わってきて、何だかとても幸せな気持ちだ。

 子供って不思議だな……。

 こっちまで幸せにしてくれる。


 そういえば、今日はお昼ご飯を食べてない。

 夕食まで、まだやることがあるので、俺も軽く食べよう。


 俺は缶コーヒーとカツサンドをチョイスした。

 消費期限の早いサンドイッチから片付けていかないと、廃棄することになってしまう。

 ドンドン食べてしまおう。


「さあ、ここじゃ何だから運転席で食べよう!」


 俺はソフィーを助手席に案内する。

 移動販売車はトラックだから車高が高い。

 当然、助手席の位置も高いので、ソフィーは助手席によじ登るようにする。


「うんしょ! うんしょ!」


 トラックのステップを踏んで、一生懸命よじ登るソフィー。

 俺は後ろからソフィーが落ちないように手を貸す。


 ソフィーは無事助手席に座り、やりきった感満載のドヤ顔で俺を見る。

 俺はソフィーにクリームパンとコーヒー牛乳を渡しながら褒めてあげる。


「おっ! 凄いな! ちゃんと乗れたね!」


「でしょ! エヘン!」


 続いて俺が運転席に座りシートベルトをつける。

 ソフィーにも忘れずシートベルトをつけ出発である。


 俺はゆっくり移動販売車を走らせた。

 するとソフィーが大興奮だ。


「うわー! すごい! 動いてる!」


 移動販売車は徐行でサイドクリークの町中を走っているだけだが、ソフィーは遊園地の乗り物に乗ったようにはしゃいでいる。

 心なしか移動販売車のエンジン音も機嫌良く聞こえる。


「ソフィー。門番さんに入場料を払うから移動しながら食べよう」


「うん!」


 俺はサイドクリークの門に向かいながら、カツサンドに手を伸ばす。

 うん! 旨い!

 カツサンドのしょっぱさと缶コーヒーの甘さが最高だ!


 もう、食べられないかもしれないので、俺はカツサンドと缶コーヒーをジックリ味わった。


 一方、ソフィーはクリームパンに震えている。


「ふああ! すごい! パンがふかふかだよ~! 甘くて美味しいよ~!」


「だろ! 美味しいよな! クリームパン!」


「うん! すごくおいしい! リョージありがとう!」


「コーヒー牛乳も飲んでごらん。その刺さっているストローで吸うんだ」


 ソフィーがストローをくわえて、チューッとコーヒー牛乳を吸う。

 再びパアッと笑顔になった


「これもおいしい! 何だっけ? こー? こー?」


「コーヒー牛乳」


「コーヒー牛乳美味しい!」


「良かったな!」


 ソフィーはクリームパンをパクリ! コーヒー牛乳をチュウ!

 パクリ! チュウ!

 パクリ! チュウ!



 ソフィーの目の中にお星様が見える。

 子供って本当に、心の底から喜ぶんだな。


 俺はソフィーのあまりにも幸せそうな食事風景に喜ぶ。


(ハハハ! 夢中で食べてるよ! ご馳走して良かった!)


 異世界初日のちょっとしたドライブが、とても楽しい思い出になった。

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