第4話 サイドクリークの町
「おお! 町だ! サイドクリークだ!」
ゴブリンと遭遇した地点から一時間ほど移動販売車を走らせると、お目当ての町――サイドクリークに到着した。
このカーナビは、どうなってるんだろう?
どこから情報を取得しているのか?
不思議ではあるが、便利だからヨシとする。
サイドクリークの町はヨーロッパの城塞都市に似ている。
高い城壁、城門、門番の兵士。
なにせゴブリンのような人を襲う魔物が徘徊しているのだ。
城塞都市なら住むのに、安心出来るのだろう。
「さて、行くか!」
俺はゆっくり移動販売車を進めた。
果たして言葉が通じるだろうか?
不安はあるが、人里にたどり着いた安心感や嬉しさから、俺は笑顔になった。
城門に近づく。
門番の兵士は長い槍を持っている。
武装。魔物がいるのだから当然ではあるが、鋭利な刃物がちょっと怖い。
門番の兵士は二人で、中年男と若い男だ。
飾り気のない茶色のズボンとシャツ。剣道の胴のような金属製の防具を身につけている。
頭には金属製のヘルメットをかぶり、ゆったりと城門に寄りかかり、二人でおしゃべりしていた。
あまり緊張感がない。
のんびりした雰囲気だ。
サイドクリークは、治安の良い町なのかもしれない。
中年の兵士が、俺の運転する移動販売車に気が付いてギョッとして目をむいた。
片手をあげて、俺に止まれとジェスチャーで指示した。
中年の兵士は、のんびりした田舎のおじさんという雰囲気で微笑ましい。
俺は城門の手前で移動販売車を止めて、窓を開け笑顔で挨拶した。
「どうも! こんにちは!」
俺は日本語で話しかけたが、不思議なことに言葉が通じたようだ。
中年の兵士は、普通に返事をした。
「ああ、こんちは。見ない顔だね? 旅人かい?」
オーケー!
ちゃんと言葉が通じている!
不思議ではあるが結果オーライだ。
俺はここに来るまで考えていたストーリーを口にする。
「私は旅の商人です。米櫃亮二と申します」
「へえ、そうなのかい。これは、馬車? じゃないよな? なんなんだい?」
兵士二人は移動販売車を不思議がっている。
槍を持っていること、自動車がわからないことから、この世界は大分文明レベルが低いようだ。
中世ヨーロッパ風味マシマシの異世界だな。
「この乗り物は馬車の一種です。わたしの故郷では、よく使われている乗り物です」
「へー! 凄いな! 町には商売で来たのかい? 身分証をみせてくれ」
「はい。商売で来ました! 身分証はこれです!」
俺は運転免許証を兵士に差し出す。
兵士は免許証を受け取ると、再び驚いた。
「こりゃたまげた! この絵はアンタにそっくりだね!」
「私の国の身分証は、顔の絵が入るんですよ」
「そりゃ良いな。間違いがなくて良い。でも、字が読めないな。こりゃお国の字かい? 珍しいね」
若い兵士も免許証をのぞきこんで驚いている。
ビックリさせて、ちょっと良い気分だ。
「まあ、問題なさそうだな。そしたら入場料は、銀貨一枚だ」
「この硬貨は使えますか? 私の国の硬貨なんですが」
俺は百円硬貨を中年の兵士に渡した。
日本のお金ではダメだとは思うが、無一文というよりは印象が良いだろう。
中年の兵士は百円硬貨をつまんでみたり、若い兵士に渡したりしてから、俺に返した。
「すまんが、この金は見たことがない。アンタは旅の商人だろ? 商売をして金が手に入ったら入場料を払ってくれ」
「ありがとうございます!」
何ともノンビリした話だが助かった!
銀貨一枚……忘れずに届けに来よう。
「兵士さん。商売はどこですれば良いでしょう?」
「町の中央広場が自由市だ。だれでも自由に商売できるよ。この道をまっすぐ行けば中央広場だ」
「ありがとうございます! 本当に助かりました!」
俺は二人の兵士に丁寧に礼を述べて、中央広場へ向かった。
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