一冊目

第2話



 ある日、小さなスケッチブックが、家に届いた。そこには、数々の絵が描かれていた。でも、一つおかしな点がある。どの絵にも、「色」がないのだ。

 そのスケッチブックは隣に引っ越してきた子がくれたらしい。とても、子供が描いたようなものではなくて、もっと本格的な設備と確かな才能を必要とするような絵だった。

 だからこそ、僕は、しばらくその絵に見惚れていた。どうやって描いたのだろう。どんな技術が使われているのだろう。そう言って、見ていた。すると、小さな紙が挟まっていることに気づいた。

「これらは、あなたの色で染めてください」

 そう、書かれていた。



[|||||||||\]



 知らない街に引っ越してきた。

 それ自体は、たくさんある。まあ、親の都合ってそう言うものだから。

 でも、この街は今までとは違った。暖かく迎えられた初日。隣の家に年齢の近い子がいると聞いたから、いつものようにちょっと絵の綺麗な塗り絵帳を渡した。すると、綺麗に塗られて帰ってきた。

 こんなこと初めてだ。まさか、帰ってくるとは思わなかった。だから、ものすごくびっくりしながら、ゆっくりとページを巡り、どんな色で染めたのか見ていった。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る